踊るゴブリンキング
戦いはなおも続く。戦闘開始から1時間、初期の被害こそ甚大だったものの、ザクロの指揮下に入ってからは役割を分けることにも成功し、回復チームも出来たことによりそこそこ戦えていた。そして、中継によりこの戦いが旧王都上空に映されていたこともあって、旧王都から続々と援軍が到着していた。そのおかげもあって、いまはなんとか戦線の維持が出来ていた。
「隊長、象さんチームがそろそろ魔力切れです」
「わかったわ。一旦下げて回復、後詰のかばさんチームに代わって貰って、撤退支援に妖精チームも3班出してね」
「はっ!」
「隊長。右翼に変な昆虫に乗ったゴブリンライダー部隊が出現。このままでは側面に回りこまれます」
「う~ん、あれは大きなカブトムシ? 普通のゴブリンは昆虫に乗ったりしないのに、なんか、微妙にずれてるのよね、このゴブリンゴーレムとかいうの。遊撃部隊のウサギさんチームを投入、苦戦するようなら馬さんチームにも出てもらって排除して」
「はっ!」
「ふう、旧王都からの援軍もあって、だいぶ戦線が落ち着いてきたわね」
「そうですね。戦闘要員もですが、旧王都から物資と回復チームの支援があったのは大きいですね。このまま向こうをすり潰して勝てればいいんですが」
「それは無理だと思うわ。副隊長」
「なぜですか?」
「よ~っく見てみて。ゴブリンの中に、ちょっとかわった帽子をかぶってるゴブリンがいるでしょ? どうやらそのゴブリンが、やられたゴブリンを直してるみたいなのよね」
「本当ですね・・・・・・」
「それに、あのゴブリンキャッスルの上にいるのは、ゴブリン王という話だったわよね?」
「ええ、長象さんがぼろぼろにされた時に、ぷうさんがそう言ってたそうなので」
「だとしたら、ゴブリン将軍が1体も現れないのはおかしいわ。見た感じ、当初から集まってたメンバーの平均的な強さは☆3、追加で来たメンバーが☆2と☆3くらいだから、☆5のゴブリン将軍が出てきたら相当きついわよ」
「遊んでる、と考えるのが自然でしょうか?」
「そうね、王都守備隊も私は☆6だけど、副隊長は☆5だったわよね?」
「ええ、いまここに残ってくれている一般兵は☆4が平均ですね」
「はあ、こんなことなら精鋭部隊を撮影係にするんじゃなくて、ここに残しておけばよかったわ」
「ですが、撮影班はノリノリで飛んでいきましたし、代わってほしいとお願いしても無理じゃないかと」
「ええ、わかってるわ」
「あの~、隊長、副隊長。あれはなんでしょうか? いやな気がするのですが」
部下妖精の1人がゴブリンキャッスル屋上のゴブリンキングゴーレムを指さす。そこには、変な踊りを踊っているゴブリンキングゴーレムがいた。手足をばたばたさせたり、ゴブリンキャッスルの屋根をどすどすと踏みつけたり、剣を振り回したり、ぐぎゃぐぎゃ言ったりしていた。
「ぐぎゃあああああ!」
「「「「「ぐぎゃあああ!」」」」」
そして、最後に大きな声で叫ぶと、大量のゴブリンゴーレム達も一斉に叫びだす。
「隊長、これってもしかして」
「ええ、間違いないわ。戦いの踊り、ウォークライね」
「隊長! ゴブリン達の戦闘力が、さっきの雄たけびの後上がっています。全軍苦戦!」
「遊撃部隊を敵の側面から攻撃させて。後詰部隊も全軍出撃用意! ウォークライの効果が切れるまで、なんとしてもしのぐよ!」
「はっ!」
現状がぎりぎりのザクロ達にとって、ゴブリンキングのウォークライはまさに悪夢だったが、死地に生ありとでも言うのだろうか、ザクロたちの希望が現れた。左翼前方の更に前、ゴブリン軍団の右翼後方から現れた巨大な炎の竜が、ゴブリン達を蹴散らした。
「隊長、今の炎は」
「ええ、うめ様のドラゴンフレイムね! みな、あきらめるのはまだ早い! うめ様たちがやってきたわ!」
「「「「「おお~!」」」」」
うめはドラゴンフレイムでゴブリン軍団の右翼を突き破ると、そのまま旧王都軍の左翼上空を飛び越えて、ザクロのいる要塞まで飛んでくる。そして、うめチームの老人達は、左翼軍と戦っていたゴブリン軍右翼を蹴散らし始めた。
「ぱお~ん!」
老人軍団の象さんが先陣を切ってゴブリン達を蹴散らす。長い鼻が右に左にぶんぶん動くたびに、ゴブリン達が面白いように飛んでいく。そして、大きく息を吸い込むと、鼻から強烈な放水だ。まるでウォーターカッターかビームのような水魔法がゴブリン達をなぎ払う。
老人軍団のキリンさんも負けてはいない。ぴぴにやろうとしたように思いっきり足で踏みつけ攻撃をする。すると、不思議なことに踏んだ場所だけでなく、その周囲数mがゴブリンごと地面が沈んだ。更に後ろ蹴りでも同じような現象を起こし、どんどん倒していく。
羊さんやヤギさん、馬さん達も負けじとがんばって、どんどんゴブリン軍団を倒していく。
「なんだいザクロ、実況そっちのけで司令官かい?」
「すみませんうめ様、成り行きでこうなってしまいました。うめ様たちがみな無事ということは、1人は倒したのですか?」
「ダメだね。ぴぴやぷうが強いとかいう以前の話だった。あたし達の動きが、そもそも想像以上に悪かった」
「そうなのですか? 見た感じみなさんお元気のように思いますが」
「まったく相手にされなかったからね、みんな1合できっちりやられたよ。だからこそ、魔力の消費が少なくて、いまこうして元気ともいえるんだけどね」
「そうなのですか? てっきり激戦になっていたから、時間がかかったのかと思いました」
「あ~それに関しては悪かったね。バトル自体はすぐ終わったし、ぴぴにお情けで回復魔法までかけてもらったんだけど、意識を失ってたメンバーが起きるのに少し時間がかかってね」
「そうだったんですね」
その後もうめとザクロは今後どう戦うかを相談する。するとザクロの部下の1人が、おずおずと話しかけてきた。
「あの、隊長、うめ様」
「どうしたの?」
「どうしたんだい?」
「うめ様とチームを組んでいた方々が、やられまくっているのですが・・・・・・」
「あちゃ~、やっぱみんな年だね。どんなに気合入れても、短時間の攻撃ならまだしも、ちょっと戦闘時間が延びると、スタミナがまったくついていかないね」
「本当ですね。イブキとマルバ、それに牛の女王様以外、全滅っぽくないですか?」
「だね~。はあ、もしかしてぴぴのやつは、これを見越して短期決戦で倒したのかもしれないね」
「そう、ですね。すぐにスタミナ切れする相手と楽しく戦うには、スタミナ切れの前に叩くしかないですもんね」
「まあいい、時間はまだまだかるからね。じっくりと戦うよ。そういえば、ザクロ、解説のハピはどこいったんだい?」
「今は救護チームの羊さんチームのフォローをしてもらっています」
「そうかい、すぐに呼んでくれ」
「どうするのですか? すでに私達が旧王都チームとして参戦している以上、いまさら解説という雰囲気でもないですよ? それに、解説として使おうにも、ぴぴとぷうがかわいいとしか言いませんよ?」
「あ~、ちがうちがう。旧王都チーム最高戦力の可能性が高いからね。これを使わないのはもったいないだろ?」
「では、ハピさんに前線を任せるというのですか?」
「勝ち負けはともかく、ぴぴとぷう本体とやりあうことすら可能らしいからね。ぷうの作ったゴーレム相手になら、遅れは取らないんじゃないかね」
「なるほど、誰か、ハピさんを呼んで来て」
「はっ!」
ザクロの部下は大急ぎで飛んでいったかと思ったら、すぐに戻ってきた。
「隊長! うめ様! 大変です! ハピを呼びに羊さんチームのところに行ったのですが、先ほどから姿が見えないようです。何度ももういや~と叫んでいたことから、逃げ出した可能性が高いです!」
「ええい、逃がすんじゃないよ! すぐに捜索しな。最悪でも向こうに取られるのは防ぐよ!」
「「はっ!」」
はたしてハピは、うめとザクロの追撃を振り切り、無事にぴぴとぷうの元へと逃げられるのだろうか?




