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ゴブリンの村の戦い

「「ただいま~」」

「おかえり」


 ゴブリンの斥候11匹を倒したぴぴとぷうは、ミニぴぴぷちゃ号に戻って来た。


「ゴブリンどうだった?」


 ハピはおやつを出しながらゴブリンの強さを聞く。メイクンに着陸したのはお昼ご飯を食べてちょっとしてからだったため、いまは丁度おやつの時間くらいだ。


「弱すぎて歯ごたえなかった」

「うん」

「流石ぴぴとぷうだね」

「「えへへ」」


 がぶがぶ、もぐもぐ


「それじゃ、ゴブリンの村を探しに行ってくるよ」

「日暮れにまでにはここにもどってくればいいかな~?」

「それじゃ、我輩も後で追いかけて合流するよ」

「大丈夫?」

「大丈夫だよ、ぴぴとぷうの居場所くらいさくっと見つけるよ!」

「わかった、それじゃ、行ってくるね」


 おやつを終え、ぴぴとぷうはゴブリンの村探しに出発した。ハピはあとで合流だ。


「じゃあ、獣道たどってゴブリンの村を探そうか」

「ぴぴはどっち行く~?」

「ん~、あっち」

「じゃあ、わたしは反対側だね。もし一緒の場所に出ずに他の場所に出たらどうする~?」

「ゴブリンの村なら全部やっつけちゃえばいんじゃない? 日が落ちるまで倒して、ハピのところに集合しよう」

「らじゃ~」


 ぴぴは爆走する。ぷうと競争するつもりはないものの、こういう狩りというのは気持ちが高ぶるものなのである。ぴぴとぷうは一緒の獲物で遊ぶということはあまりしない、ぴぴの獲物はぴぴのものだし、ぷうの獲物はぷうのものなのである。よって、今回もハンティングは別行動だ。


 ぴぴは爆走する。ぴぴの選んだ道は西に向いているようだ。先ほどと同じようなゴブリンの11匹の部隊がいたが、特に観察もせずにスパッと倒す。森の中だから十八番の火の爪が使いにくいといったことは一切気にしない。火や熱が周囲に飛び散るような甘いコントロールではないのだ。可燃性ガスが充満していても、狙ったものだけを焼き切る。それがぴぴクオリティなのだ。


 ぴぴは爆走する。前方左側にゴブリンの村が見えてきた。ジャンプ一回で周囲の森の木々の上空に飛び出す。一応ゴブリンの村の確認だ。ゴブリンの村は南に大きめの石造り小屋が建っており、その小屋から北に向けてリアカーすれ違えるくらいのメインストリートが通り、そのメインストリートの東西にいくつもの木製の小屋が建てられていた。外周は木製の柵で囲われており、大きく開いているのは北側のみとなっていたが、ところどころにゴブリンなら簡単に抜けられるような柵の隙間の広い場所があった。また、柵の内側にはところどころ物見台が建っており、その上には弓をもったゴブリンが待機していた。さらに、見通しをよくするためか、ゴブリンの集落の周辺10m程度は木々が無くなっていた。


 ぴぴは爆走する。大ジャンプから着地突破すると、すばやく北門から侵入する。大ジャンプで物見の弓ゴブリンに見つかったんじゃないのかと思うが、そこはゴブリンクオリティ、見つからなかったようだ。もっとも、戦時警戒中でもないときに猫のような小さい生き物1匹、もし見つけたとしても脅威とは思わないだろう。

 

 ぴぴは爆走する。北門から南の石造りの小屋までのメインストリートともいえる道で、ぐぎゃぐぎゃとたむろしているゴブリンを次々と切り裂いていく。それだけじゃない、メインストリートの左右の小屋の中にいるゴブリンも、火の爪を伸ばして小屋の外からどんどん切り裂いていく。なぜ小屋の中のゴブリンを外からから正確に攻撃できるのかは誰も知らない。ぴぴですら理由はわかんないけどいる場所がわかるという、探知系の技もびっくりの探知能力なのだ。猫は隠れるのが得意な生き物である。猫の国の猫達もみんな隠蔽系の技は得意であったが、ありとあらゆる隠蔽技をたやすく見破ることが出来る、理不尽すぎるぴぴの特技であった。


 ぴぴは爆走する。北門から出てさらに西に向かって走り出す。ゴブリン達はすでに全滅だ。石造りの小屋にいたこの村のボスゴブリンも、物見台にいた弓ゴブリンもだ。自らが死んだことも、隣のゴブリンが死んだことも気づいていないだろう。猫の国でも最高峰のスピードをもつぴぴを、把握できたゴブリンはいなかった。ぴぴが北門を出て、さらに西に向かって走り出すと、ぴぴに切り裂かれた小屋が倒壊する音が聞こえてくるのであった。


 ぴぴは爆走する。偶然なのか必然なのか、ぴぴの探知能力すらくぐりぬけたゴブリンが1匹いたことに気づかずに。そしてこのゴブリンが、後にぴぴ達の最大の障害となるのであった。ということはない、正真正銘全滅した。


 ぴぴは爆走する。おやつを食べてから日没まで、15:30~18:00の2時間半の間にゴブリンの町2個と村5個が廃墟と化していた。 




 ぴぴが爆走している間、ぷうもゴブリンの村の捜索をしていた。ぷうとて競争したいわけではないのだが、それでもやはりハンティングというものは本能を刺激され燃えるのである。ぴぴの選んだ道は西方向に向いていたが、ぷうの選んだ道は北方向に向かって進めるようになっていた。ぷうはてっくてっくとその道を進んでいくと、予定通りゴブリンの村を発見した。


 近くの大きな木に登り、まずは観察である。とはいえ、ぴぴが見つけた村と大差ない。ボスがいるであろう石造りの大きな小屋がひとつと、木造の小屋が多数、外周部分には木の柵と物見やぐらがある。そして、ぷうが行った最初の行動は索敵だ。外にいるゴブリンは見えるものの、建物の中にいるゴブリンが見えない。建物ごと潰すのも手ではあるのだが、見逃しが怖いしなによりCPがもったいない。そこで、木の上から地上に降りて土製の猫型ゴーレムを20匹作り出す。そして、再び木に登ったぷうは、猫型ゴーレム達を、木の上から見えない位置を確認するためにこっそり移動させる。小屋の中が見える窓や木の上から見えない建物の死角などだ。


(結構いっぱいいるね~。だいたい200匹くらいか~。石造りの小屋には地図もあるのね、問答無用で破壊しなくてよかったかな)


 ぷうはゴブリンの数と同じ207個の石の弾丸を作り出すと、一斉に発射する。音もなく発射された石の弾丸は一瞬にしてゴブリン達の頭に命中した。12.7mmの銃機関銃用の弾に酷似したしたそれは、建物の中にいたゴブリンも、陰にいたゴブリンも、有無をいわさず貫通して一撃でしとめたのだった。音がしないのは、火薬の爆発により発射されたわけではないためだ。土のCPの力の作り出した物質は、同じ土の力で動かすのがもっとも効率がいいのだ。


 そして、無人になったゴブリンの村を、ぷうはゆっくりと歩いていく、とりあえず石の小屋で地図をゲットしてから、今後の予定を立てるためだ


(う~ん、こんなにいっぱいいるのに、メイクンモンスター辞典によると、まずいって書いてあるんだよね~、なんか勿体無いな~)


 カプッ


「みぎゃああああああっ!!」


(ううう、ひどい目に会った。ごぶりんゆるすまじ、ごぶりんゆるすまじ!!)


 ぷうの瞳にはゴブリンへの殺意の炎がめらめらと灯るのであった。そして、地図を元にぴぴが行きそうにない場所にあるゴブリンの町1個と村4個を、遠慮も容赦もなく潰していった。



 ぴぴとぷうに遅れること30分、ようやくハピも動き出した。さっきはぴぴとぷうに、2匹の居場所ならすぐわかるとか豪語したものの、ぴぴぷちゃ号の探知能力があればこそわかるのであり、禁止されるとわかんないという重大な事実を思い出したハピは、けっこうピンチであった。しかも、11匹のゴブリン達のいた道は当然2方向へ向かっている。2匹がどっちに行ったかなんてわからない。しかしここは知恵を働かせる。女王様からもらった地図によれば、現在位置は大陸のほぼ南端、大森林の中である。西に森を進めば妖精の国があり、北と東は森と山しかない、そして南は当然海である。みんなこの地図は持っているし、目的地は妖精の国なので、西に行けば間違いない。ということでぴぴの通った西ルートにハピは向かうのであった。


「わっがっはい~は猫である♪ ふふん♪ とっても速い~猫である♪」


 さきほどと同じ歌を歌いながらハピは走る。さきほどまでと違い道なき道ではなく、獣道とはいえ道があるだけ走りやすいと思いながらハピはどんどん走っていく。


(あ、なんか村がある。ちょっと寄って行こうかな)


 左手に見える木の柵で囲まれた村を見つけると、早速入ろうとして入り口で止まった。


(うう、グロい、ゴブリンの村だけど、全部切られてるじゃん。ぴぴの仕業っぽいな)


 どうやら最初にぴぴが見つけ、殲滅した村のようである。走っている方向があっていることを確認したハピはその後もるんるん気分で走り出す。

 そして2つ目の村を発見する。ここも同じようにぴぴによって殲滅された村のようである。しかし、さきほどの村とは違い動くものが見えた。


(なんか動いてる。取りこぼしかな?)


 そう思い恐る恐る動く物体に近づくハピが目にしたのは、ゴブリンの血の臭いに釣られたのか、周囲の森から現れた虫型モンスター達であった。ハピは走った。一目散に逃げ出した。


(ううう、虫の捕食シーンとかグロすぎる。よくあんままずそうなもの食べれるな)


 蓼食う虫も好き好き、とはよく言ったものであるが、ハピは食に関しては冒険しない堅実な猫であった。女王様からもらったメイクンモンスター辞典でまずいと書かれているものを、わざわざ食べようとはしないのである。

 気を取り直してハピは走る。3つ目の村を発見し、もうグロはこりごりと完全スルーをして走り続けた。しかし未だにぴぴ達と合流できず、しかももう日が傾き始めていた。これはちょっとピンチだ。幸い猫なので、日が暮れたら見えなくて動けないというわけではないのだが、あとから合流すると言った手前、ハピの沽券にかかわるのである。


(まずいまずいまずい、ここはもうぴぴぷちゃ号の猫捜索機能を使って、ぴぴとぷうの居場所を特定しようかな。いや、それはだめだ。どういうわけか絶対ばれそうな気がするんだよね。ううう、ぴぴぷちゃ号こそ我輩の最高のスキルなのに)


 そう思い、ボーっとなにも無いところ見て考えていると。がさごそがさごそと森の中から音がした。


「「ハピ~」」


 森の中から、仲間のぴぴとぷうが現れた。


「ぴぴ、ぷう、よくここがわかったね」

「まあね~、それよりハピはなにボーっとしてたの?」

「互換を研ぎ澄ませてぴぴとぷうを探そうとしていただけだよ」

「ふふふ、どうやら私達のほうが先に見つけちゃったみたいだね」

「そうなんだ~」


 ぴぴは感覚派の猫なので自身が同じことをしているのだろう、上手くごまかせたようである。ぷうには迷子がばれた可能性もあるが、流石ぷう、深く突っ込んでこないやさしさになんともいえないハピなのであった。


「じゃあ、今日はここまでにしよっか。ミニぴぴぷちゃ号を呼ぶね」


 そういうとハピの後方でステルスモードになっていたミニぴぴぷちゃ号が現れる。


 ミニぴぴぷちゃ号内部にて。


「今日はどのくらい進んだのかな?」

「3分の1くらいは進んだんじゃないかな」

「あと2日か~、妖精の国楽しみだな」

「そうだ、ぴぴ、ハピ、これ見て~」


 そういうとぷうはゴブリンの集落で入手した地図を広げた。


「このゴブリンの地図と、女王様からもらった地図を組み合わせると、こんな感じだね~」

「ふむふむ、着陸地点の大きな木と妖精の国の間に、ちょっとしたゴブリンの国が出来てるような雰囲気だね」


 ゴブリンの地図によると、ゴブリンの国は大きな王都を中心に同心円状に街が広がっており、さらにその周囲に町や村があるようだ。着陸地点から妖精の国へ向かうには、ゴブリンの国の南部を横切らなければならないようであった。


「うん、特に気になるのは、この中心の王都と、西と北にある砦みたいなマークかな」

「西の砦は妖精の国に対する軍事拠点だよね。となれば、北の砦は、他のゴブリンの国対策か、あるいは他のモンスター対策かっていうところだよね」

「ただ、ゴブリンも森の支配者っていうわけじゃなさそうだよね~。こことかこことか、虫モンスターの縄張りを避けるように村とか町が出来てるみたいだよ~」

「なるほど、確かにゴブリンの使ってた道を走っている時は、虫モンスターとは出会わなかったね」

「それで、わたしはこことこことこことここの村を潰して、あとこの町もつぶしたよ~」

「私はこれとこれとこれとこれとこれ、あとこれとこれかな」

「流石ぴぴ、負けた~」

「ふっふっふ、まだまだぷうには負けないよ。まあ、こういうのは足の速い私のほうが有利だしね。相性だよ、相性」


 ぴぴとぷうの活躍によって、ゴブリンの国の南東部分は壊滅的被害を受けたようである。


「おほん、では今日の行動報告も終わったということで、改めて、今後の作戦会議を行いたいと思います」

「「らじゃ~」」


 どうやらぴぴは軍隊ごっこでもはじめたいらしい


「では明日以降の予定を決めましょう。意見のある猫」

「はい」

「はい、ぷう君」

「わたしはゴブリンの国の中心にあるでっかい街、王都の攻略をするべきだと思います」

「ほうほう、なかなか好戦的ですばらしい意見ですね。理由は?」

「今日わたしが潰した村や町は、一番大きいところでも10000匹程度しかいなかったんだよね。ぴぴの方も同じくらいの規模だとしたら、倒したのはどんどん増殖する下位のゴブリンばかりで、中位のゴブリンがちょこっとって感じだと思うんだ。せっかくだから、すぐに代えのきかない上位のゴブリンを倒したいのです。以上~」

「なるほど、悪くない意見ですね。他には?」

「はい」

「はい、ハピ君」

「妖精の国へは急がなくていいのかな? こんなに大きなゴブリンの国が出来ているということは、妖精の国もけっこうピンチなんじゃないかと思うんだけど」

「はい」

「はい、ぷう君」

「その心配はちょっとあるけど、大丈夫だと思うよ~。そもそも、ここに来るまでにもう20年経ってるし、切羽詰ってるなら、ぴぴぴちゃ号の使用禁止とかしないと思うからね~」

「なるほど、たしかに」

「では、明日以降の作戦は、ここにある大きな街を攻略して、その後この真ん中の王都の攻略ということでいいかな?」

「「らじゃ~」」




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