ぷう対象さん達
「さて、旧王都の良い子のみんな。うめ様に代わって、司会進行はみんなにはおなじみ、旧王都防衛軍軍団長こと私、ザクロがお届けするよ。本日は解説に美味しい果物を持ってきてくれた猫ちゃんトリオの1人、ハピさんも来てくれているよ! さ、ハピさん、一言どうぞ」
「ぴぴ~、ぷう~、がんばれ~!」
「はい、ありがとうございます。では、念のためルールの確認だよ。バトル会場は旧王都の外に広がる広場、というかただの外だね! 勝敗はまあ、負けと思えば負けってことね。それと、今日の午後にはうめ様達は帰っちゃうから、午前中に倒せなかったら旧王都の良い子の負けになっちゃうから気をつけてね。その代わり、旧王都の住人ならいつでも参戦可能だから、腕自慢のみんなはどんどん広場に来てね。そしてそして~、旧王都チームが勝った場合の賞品は、追加の美味しい果物と、美味しい果物が取れる場所を教えてくれるというものだよ~! 教えるのはぴぴさんとぷうさんを倒した特定の誰か、というわけじゃなく、みんなに教えることになっているから、チームワークを駆使してがんばってね!」
「「「「「うおお~!」」」」」
「そうそう、それと大事なことだけど、うめ様達は旧王都チームの所属だからね! 旧王都チームの対戦相手はあくまでもぴぴさんとぷうさんの2人の猫さんだけだよ! さて、こうやって時間をかけてると旧王都チームの制限時間がどんどん減ってっちゃうからね。早速はじめるよ~! 旧王都ミニバトル大会。開始だよ~!」
「「「「「うおお~!」」」」」
随分と緩いルールではあるものの、バトルが開始された。今は朝の9時くらいなので、制限時間は9時から12時までの3時間だ。
早速先制攻撃を仕掛けにいったのは象さんチームだ。それに、牛さんチームも様子を伺っているようだ。象さんチームには長象さんにエレフにファント、他にも岩山捜索のときのメンバーが集結していた。
「行くぞお前ら! 一斉攻撃だ!」
「「「「「おお~!」」」」」
象さん達はすさまじい勢いで突進してくる。それと同時に別方向から牛さんチームも突っ込んできた。どうやらこの2チームは連携して動いているようだ。他のチームは様子見のようだ。象さんと牛さんという、巨大草食動物達と連携無しに動くのはいろいろと危険だろうからしょうがない。
「象さんチームが来るね」
「うん、ぷうは今回どうしたいの?」
「う~ん、猫型ゴーレムいっぱい作って、全面対決をしたいかな」
「じゃあ、私はうめと遊んでこようかな」
「わかった~。わたしはとりあえず、エレフとファントに挨拶してくるね」
「うん」
象さんと牛さんが爆走して接近してきている中、ぷうは得意の土魔法でその場にお城を作り上げる。そんな豪華なものでも大きいものでもない。だいたい動物園にある象さんの厩舎くらいの大きさで、大きな扉と、壁の上にはツィンネと呼ばれる凹凸があるくらいの、ただの四角い箱だ。変わったところといえば、このお城そのものではなく、屋上に仁王立ちしている王冠をかぶった3m級のゴブリンゴーレムだろう。
「長、なにかでかいものが出てきました」
「わかっている。形状的に要塞だろう。屋上にいるのは本物のゴブリンではないな。あんな頭でっかちのゴブリンなんて知らないから、恐らくゴブリンを模したゴーレムといったところだろう。ぷうの岩山での土魔法の力量を見る限り、間違いなくぷうの土魔法だろう。だが、動じることはない、予定通りある程度接近したら攻撃魔法を撃つ! 建物ごと叩き潰すぞ!」
「「「「「はっ!」」」」」
そして、要塞の大きな扉が開かれると、そこから様々な大きさのゴブリンゴーレムが大量に飛び出してきた。
「なんだあれは? まさか、モンスターを召喚したとでもいうのか?」
「惑わされるな! あの要塞がどんな機能なのかはわからんが、出てきてるのは屋上にいるのと同じ、ゴブリン型のゴーレムだ!」
そして、ゴブリンゴーレム達はお城に向かって突撃してくる象さん達へ、一斉に飛び掛る。雑魚ゴブリン相当の1mのゴブリンゴーレムから、10人隊長、100人隊長、1000人隊長と、実際のゴブリンの編成に合わせたラインナップのゴブリンゴーレム軍団だ。
象さん達の群れのパワーはすさまじいものの、ぷうのゴブリンゴーレムのほうが圧倒的に数が多い。流石に多勢に無勢だ。いくら弱いとはいえ、最低でも1mの土ゴーレムの群れだ。踏み潰し、蹴飛ばして進むにしても、1mの土の塊がどんどん攻めて来ては、流石の象さん達の突進も、足を止められてしまう。
「くそ、怪我や死の恐怖を感じないゴーレムが、こうも厄介だとは!」
「長、どんどん来ています。このままでは飲み込まれます」
「ちい、止むをえん。少し遠いが、ここから攻撃魔法を撃つぞ。ターゲットはゴーレムを生み出しているあの要塞だ!」
「「「「「はっ!」」」」」
象さん達が一斉に攻撃モーションに入る。その中にはもちろんエレフとファントもいた。そして、その2人に話しかける猫が1人いた。
「むう~、長象さんったらひどくない? あれは要塞じゃなくてお城なのに」
「え、そうなの? お城にしては華やかさがないと思うんだけど、兄ちゃんはどう思う?」
「ああ、俺もそう思うぜ。ただ、要塞としてもちんちくりんな建物だけどな!」
「むうううう!」
「って、ぷうさん? なんでここに?」
「なっ!」
2人は驚いているようだったが、ぷうは、ぷうのゴブリンキャッスルをバカにしたエレフに制裁を加えることにした。制裁をくわえるだけに、エレフの尻尾を咥えて、思いっきり投げ飛ばす。お城を要塞と勘違いした長象さん目掛けて。
「いってえええ~!」
「みな、攻撃魔法用意! 属性は水でとういっ、がはっ」
エレフは長象さんやその周囲の象さんを巻き込み盛大に転がっていく。
「エレフ? なにやってんだ!」
「ぷうだ。ぷうがいた!」
「ぷう? あの2人の片割れが? なぜここに?」
「兄ちゃ~ん! 鼻が~!」
「ファント~!」
エレフに続いてファントも飛んできた。どうやらファントは鼻に咥え投げをされたようだ。くっきりと鼻の先端にぷうの噛み後が残っている。エレフは素早く起き上がり、ファントを受け止める。
「ぐううう! 無事か?」
「ありがとう、兄ちゃん。うん、鼻を噛まれたけど大丈夫」
「ふう、よかったぜ。そうだ、ぷうだ! ぷうはどこだ!?」
「ねえ、長象さん、あれはわたしが作ったゴブリンキャッスル。つまりお城なの。そしてゴブリンキャッスルの上にいるのはゴブリンキャッスルの城主、ゴブリンキングなんだよ。ちゃんと見て、王冠が付いてるでしょ?」
「ん? そんなのどうでもいいだろうが! 早くぷうを探せ! って」
「むううううう!」
ぷうの芸術センスは、まあなんと言うか。ゴブリンゴーレムも基本3頭身だし、どうにもコミカルさが目立った造形になってしまう。もっとも、ハピの作ったぴぴぷちゃ号なんて1頭身、しかもただの球体であることを考えたらだいぶましなのかもしれないが。ここは最後の砦、ぴぴの芸術センスに期待したいところだ。
ぷうは長象さんの尻尾を咥えると、ぶんぶん振り回し始めた。そして、象さんの群れに突進する。
「いってええええ! ちょっ、まっ、尻尾がああああ!」
「くそ、長がやられたぞ!」
「逃げろ~! 長回しに巻き込まれるぞ~!」
長回し、そのまんまのネーミングではあるが、この危機的状況でそんなセリフが出てくるあたり、象さん達の中にもユーモアというものを理解しているものがいるようだ。象さん達は慌てて逃げようとするが、長象さんがいたのは象さんの群れの先頭だ。その位置からぷうが長回しをして象さんの群れに突撃してきたため、逃げようにも後方の象さんが邪魔でなかなか逃げれない。ぷうは象さん達どころか、ゴブリンゴーレム達をも平然と巻き込んで次々と長回しで象さんたちを倒していった。




