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大風車の修理とピクニック

 一行は無事にエレフとファントの家に到着した。


「エレフ~、着いたよ。起きて~」

「んん~? む? っと、悪い、寝ちまってたみたいだ」

「いいよ、気にしないで。それじゃあご飯も用意するね」

「おう、悪いな」

「ねえねえ、兄ちゃん、大量の草と果物があるよ!」


 ファントが見ていたのは、ファントの大きさくらいありそうな巨大な2つのバスケットの中だ。


「お、こいつは今日の俺達の昼飯だな。群れの連中が持ってきてくれたんだろう」

「わ~い、これだけあればお腹いっぱい食べれるね!」

「ああ、そうだな。そうだ、ファントはこのバスケット1個持ってきな。ぴぴとぷうに魔法教えてもらいながら、腹が減ったら食べるといい」

「うん、お弁当ってやつだね!」

「そうだな、そんな感じだな」

「じゃあ、俺は寝てくるぜ」

「うん、ゆっくり寝てね」

「じゃあエレフ。魔力豊富な果物も置いてくね」

「おう、悪いな」

「それから、ハピを置いてくね」

「寝てるじゃん」

「大丈夫、ハピは寝ててもなにかあったらすぐ起きるから」

「そうか、なら借りてくぜ」


 そう言ってエレフは寝ているハピを鼻で掴んで持っていく。ぷうも家の中のテーブルの上にエレフの分のバスケットを置いて、さらに魔力豊富な果物を出しておく。ちなみにハピが寝ている理由だが、ハピもファントが心配でなんだかんだ昨日はあんまり寝れていなかったようだ。


「さ、ファント。行こうか」

「うん!」


 ぴぴ達は夕焼の背中に乗り、ファントは鼻でお弁当を持って象さんの壊れた大風車に向かって進んでいく。大風車まではそんなに距離があるわけではなかったので、すぐに到着した。するとそこには、昨日見かけた象さんの長と、長老象さん達がすでにいた。昨日の会議では、大風車への集合時間は今日のお昼過ぎのはずなのに、みんな早起きだ。


「こんにちは、みんな!」

「「「「「・・・・・・」」」」」

「もしやお主、ファントか?」

「うん、そうだよ。ちょっと大きくなっちゃったけど」


 どうやら一目見ただけではファントと気づかなかったようだ。うん、昨日まで小象だったのが、翌日いきなり群れの誰よりも大きくなってたら驚くのも無理は無いか。でも、会議に出てた長と長老に関しては、大人の象サイズくらいまで大きくなるところは見てた気もするけど、まあ、流石に他の象さんと比べても大きすぎるから、しょうがないのかな。


 そして夕焼も象さん達に挨拶していた。ぴぴとぷうはそんなこと気にもせずに早速崩れた大風車のチェックをする。


「へ~、これが象さんの大風車なんだね」

「普通の石造りの風車に見えるね」

「そうだね。この石も魔法で出した石じゃなくて、もともと自然に存在する石を加工してるものだね」

「うん。でも、割れちゃってるのが多いから、再利用は難しそうだよね」

「だね~。魔法でくっつけてもいいけど、魔力供給がないとそういうのはもろいからね。王都みたいに魔力パイプが街中に張り巡らされてるならいいんだけど、見たところそういう設備はなさそうだよね」

「うん、たぶん、この周辺の弱いモンスターからだと、いくら倒しても必要な量が集まらないんじゃないかな。だから、そういうのに頼らない街づくりを目指したのかもね。というよりも、旧王都っていうくらいだから、最初はこういう生活だったのかもね」

「だね。となると、どっかから岩を確保してこないとだね」

「うん、岩のありそうな場所ってわかる?」

「まかせて、地面にアクティブタイプの鉱石探知かけちゃうね」


 ぷうは地面に魔力をいっぱい流す、そして、旧王都の周囲一帯に魔力を広げると、鉱石や岩の分布をさくっと調べる。


「あったよ。北のほうに山が見えるでしょ? あの辺りに結構たくさん岩があるみたい」

「ありがとう。じゃあ、さっそく取りに行こうか」

「うん。じゃあ、夕焼とファントにも言いにいこっか」


 ぴぴとぷうは、夕焼とファントを誘って出かけることにした。


「夕焼、ファント、お出かけしよう」

「どちらに行かれるのですかな?」

「あの北に見える山までピクニック」

「ピクニック! 行く行く~」

「ピクニック、ですか?」

「ファントに魔法を教えるのに、穀倉地帯の旧王都の中より都合がいいでしょ? それに、岩山があるから、この風車を直す材料の確保もかな」

「なるほど、そういうことでしたか、では少しお待ち下さい」


 夕焼は象さん達に事情を話しに行く。すると、象さん達もこちらにやってきた。


「すまないが俺達も連れて行ってくれないか?」

「うん、いいけど、わたし達はピクニックも兼ねてだから割とのんびりだよ?」

「かまわない。自分達の風車の材料だ。手伝わないわけにはいかない」

「じゃあ、一緒にいこうか」

「ほっほっほ、旧王都の外に出るのは久しぶりじゃな。鼻がなるわい」

「長老? 長老まで行かれるのですか?」

「当たり前じゃ、この大風車の問題はわしが長の時の問題じゃ。おぬし等だけにわし等の不始末をさせるわけにはいかん」


 でも、どうみてもよぼよぼな象さんだ。しかも、これから行く先は普段象さんが立ち入らない岩山だ。戦力というよりも足手まといだ。


「長老象さんにはエレフとか、他のみんなが来た時の連絡役でここに残ってほしいかな」

「そうだな。長である俺が現地に行かないわけにはいかないし、そうなると、長老がここに居て説明してくれた方が後から来た者たちへの説明がスムーズだろう」

「うん。エレフ、昨日ファントが心配で寝てなかったみたいで、今改めて寝てるんだ。大風車にいる予定って伝えちゃったから、エレフが起きてここにきたら、いろいろ伝えてほしいの」

「むむう、そういうことなら仕方ないか、わかった、まかせるがよい」

「ああ、それじゃあ。行くぜ、野郎ども!」

「「「「「ぱお~ん!」」」」」


 お弁当を持ってるのはぴぴ達だけだけど、片道1時間もあれば着く場所なので、行って岩を切って持って帰ってきても、お昼までに1往復は出来るだろう。というわけで、なんの準備もせずに出発だ!


「じゃあファント、魔法のお勉強をしながらいくよ。このバスケットは預かるね」

「うん! ぷうさんお願い」


 ぷうは収納魔法でバスケットを預かると、さっそく出発する。


「ぷうさん、速過ぎるよ~」

「身体強化魔法を使えばこのくらいの速度普通に出せるよ」

「身体強化魔法ってなに~?」


 そうだった、今朝エレフに体当たりして盛大に吹き飛ばしてた時に、しっかり使っていたけど、無意識だった。うう~ん、無意識で結構な強度の身体強化をかけてのタックルか、これはちゃんとしないとエレフがもたない。ぷうは心を鬼にして教えることにした。


「今朝エレフに体当たりしたときみたいに、全力で走ってみて」

「うん、でも、全力疾走しても、僕はあんまり速くないよ?」

「れっつごー!」

「はい、いきます! ぱあ~お~ん!」


 するとファントはものすごい速さで走り出す。


「ぷうさん! 止めて~! 止まれない~! わあ~!」


 ファントは最終的にはちょっと大きめなくぼみに足を取られて盛大にこけてしまった。


「ううう、痛、くない?」

「うん、制御はいまいちだけど、強度の高い身体強化魔法だからね。こけたくらいじゃ怪我しないよ。どうかな? 身体強化魔法の感覚、なんとなくつかめたかな?」

「うん、なんとなくだけどわかったかも、僕の知らない不思議な力が体から溢れてきた感じだったよ」

「その不思議な力が身体強化魔法で間違いないよ。あとは何度も使って何度も失敗して、その力を自在に使えるように練習だね」

「はい、ぷうさん。とりあえず、またダッシュしてもいいですか?」

「うん、もし気分が悪くなったら教えてね。魔力切れの症状だから、おやつ休憩にしよう」

「はい! じゃあ、全力で走ってきます!」

「うん、いってらっしゃい!」


 こうしてファントは走り続けた。ダッシュしてこけてを繰り返していたが、どんどん上達していく。これで少なくとも無意識で使うことはないはずだ。たぶん、きっと。


 そして、長をはじめとした象さん達は、全員お出かけ経験があるようだ。ファントを中心に円を画くようにフォーメーションを組んで、周辺警戒をしっかりしている。しかも、ファントの不規則なペースにもしっかりと合わせてくれている。


「ねえぴぴ、これはもしかすると」

「うん、私もそれ思った」

「ん? なにを思ったんだ?」

「イブキ、この象さん達、けっこう場慣れしてる気がしない?」

「そういやそうだな。ファントが不規則な動きをしてることを考えたら、護衛対象を中心に、けっこう高度なフォーメーション取ってるよな」

「オスの象というのは、大抵群れから離れて暮らしますからね。夜様のように王都まで出かけることまではしませんが、旧王都の外に軽く遠征に行くくらいは、日常的にしているとききます」

「そうなんだね。これならわたし達が教えるより、長象さんにお願いした方がよさそうかな?」

「うん、身体強化魔法も岩山につくころには上達してるだろうから、後でお願いしてみよっか」

「なんでぴぴとぷうじゃだめなんだ?」

「わたしとぴぴは猫だからね。本質的に魔法の使い方が、猫の狩りに役立つ使い方になっちゃうんだよね」

「なるほど、それもそうだな。同じ猫科ならまだしも、草食の象とじゃあまるで違うか」

「うん。それじゃあ、岩山に着いたら長象さんに相談だね」

「うん」


 こうして一行は岩山目指して進んでいく。



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