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大食い象さん兄弟

 さっそくこの大食い象さん達のために動くことにしたぴぴ達3人は、情報収集をすることにした。


「まず、情報収集する場所としては、新月と夕焼のところだよね」

「うん、あの2人なら何か知ってそうだよね」

「じゃあ、夕焼達に話を聞いて来るね。ついでに妖精の国のことだから、うめ達にも知らせとくね」

「うん、わたしとハピはファントの様子が気になるから、ここに残ってるね」

「うん、お願い」


 なんだかんだ象さん達と一緒にいたから、もうじきお昼という時間だ。流石にうめ達も二日酔いから治っているだろう。ぴぴは猛スピードで大風車まで戻ってきた。


「うめ~、夕焼~、いる~?」

「散歩はもういいのかい?」

「はい、何でしょうぴぴ様」

「昨日の象さんのことなんだけど、ちょっといい?」

「昨日の象さんといいますと、エレフのことですか?」

「うん、そう」

「もしや、何かご迷惑をおかけしましたか?」

「ううん、朝の散歩中にたまたま出会ってね。それで話を聞いてたら、なんでもハピの取ってきた果物が、自分のところまで満足な量が回ってこないからって、病弱な弟のために果物取りに来たみたいなんだよね」

「それは本当ですか? だとしたら、由々しき事態ですね」

「まあ、ちょっとあの兄弟、大食いっぽい気もするんだけどね」

「それに関してはこちらにも事情があるのですが、あの2人は訳ありなのですよ。そうですね、話し合いの場を設けて、我々で対策させて頂きます。もしよろしければ梅様も立ち会っていただけるとありがたいのですが」

「そうだね、今回はあたし達が持ち込んだものが原因でもあるし、付き合ってやるよ」

「ありがとうございます。では、今日の夕方に会議を開かせていただきます」

「ああ、そうしておくれ」

「それでは、少しここを離れます」

「ああ」


 そう言って夕焼はどっすどっすと走って行った。今はお昼前だから、夕方にみんなを集めるとなると、時間的に余裕はなさそうだ。


「それじゃ、私もぷうとハピを呼んでくるよ」

「そういや、2人はどこにいるんだい?」

「象さんの家」

「そうかい、もしかして、果物いっぱいあげたのかい?」

「うん、その病弱な子も、魔力豊富な果物をいっぱい食べれば、治るかもしれなかったからね」

「悪いねえ、ぴぴ達の分だっただろうに。昨日も旧王都のために大量に提供してもらったばかりだってのに」

「気にしないで。ハピと妖精トリオが結構大量に取ってきてたからね。昨日旧王都に渡した分だって、全体量の3分の1なんだよ」

「そうなのかい? 数10トンはありそうだったけど」

「それで、残りの3分の1は私達、残りの3分の1を王城に渡してきたよ」

「そりゃまたすごいね。よくそんな量が入る倉庫が城にあったね」

「無かったからぷうが即席でつくってたよ」

「そうかい。申し訳なかったね」

「ううん、気にしないで。ハピの話だと、4分の3は妖精トリオが収穫したっていうからね。じゃ、呼んでくるね」


 そして、お夕飯の前、会議が行われる時間になった。会場はもちろんここ、大風車だ。参加者は当事者のエレフ、象さん達から長老の年老いた象に、まだ若めの象達の長、そして昨日の果実騒動の関係もあるので、責任者である牛さん達から新月と夜、果物を持ってきたうめとマルバ、それにぴぴとぷうだ。エレフの弟ファントとハピは会場の隅っこで見学だ。ハピが付き添いなのはご飯皿パワーでファントの胃袋を満たすためだ。そして、夕焼の司会で会議が始まった。


「では、会議を始めます。まず、最初の会議は、なぜエレフ及びファントのところに、十分な果物の配布がなかったのかということです。ではまずエレフ、今回の果物の配布量がどの程度だったのか、教えていただいてもいいですか?」

「ああ、俺のところへの配布量は2人分をあわせても、半人分くらいしか配布が無かった。今回はたまたまそこにいるぴぴ達と出会えたから、ファントが腹いっぱい食べれる量をもらったが、ファントの病弱なのを治すためにも栄養価の高いものを優先的にまわしてくれるという契約からは、ほど遠い量しか配布されなかった」

「では、これに関して象の長老と長から意見はありますか?」

「我々としては十分な量を配布しています。本日も果物と草で2人前きっちり渡しました」


 象さん達のうち、長と言われた若い象が答える。


「具体的な量は?」

「2人分で600キログラムです」

「待て、長よ。それは本当か?」

「ああ、そりゃあ多少の誤差はあるかも知れねえが、1キロもずれてないはずだ」

「すまんかったな、エレフよ。どうやら引き継ぎでミスがあったようだ」

「どういうことだ? 説明しろ」


 夜がすかさず説明を促す。


「すまんの、牛達もすっかり巻き込んでしまったようじゃ。長よ、エレフとファントの食事量は、通常の10倍じゃ」

「なに? 10倍だと? 3000キログラムってことか?」

「そうじゃ、引継ぎ資料にもそう書いてあったろ?」

「馬鹿な、3000キログラムなんていったら、エレフの体重の半分、ファントにいたっては体重より重いだろ、それ」

「そのくらい食べるんじゃよ、この兄弟は」

「な、そうなのか?」

「ああ、俺もファントもそのくらい普通に食べる」

「それは悪かった。なんで今まで言ってくれなかったんだよ」

「何度も言ったさ、飯を運んでくれるやつにな。だが、改善されなかった。俺達はその条件で飯を出すことを条件に、住処すら明け渡したのに」

「住処まで? お前達は立派な家に住んでるじゃねえか」

「わしが説明しよう。いまわしらが拠点にしている風車じゃが、あれはもともとエレフ達の住処じゃったんじゃよ」

「なに?」

「本当のことじゃ。わしらがもともと群れの本拠地として構えていた風車は、いま壊れてる巨大な風車跡があるじゃろ? あそこじゃったんじゃよ」

「壊れた巨大風車のことは聞いたことがあるが、今の風車がエレフ達のものだったって話は、聞いたことないぞ」

「当時雷が落ちて、巨大風車が崩れた時、当然嵐じゃった。わしらとしても身重の女どもを嵐の中野外ですごさせるわけにはいかないと、当時小象じゃったエレフと、今は無きエレフの両親に掛け合って、場所を貸してもらったんじゃ。それで嵐が過ぎ去るのを何とかしのいだが、結局住処を失ったことに変わりなかったわしらは、壊れた風車の修理の間、女衆だけでも住ませてほしいと頼み込み、住処を貸してもらったのじゃ。じゃが、もう1人の子作りを考えておったエレフの両親は、気を使うのはいやだと、わしらの風車が直るまでのその間、住処を全面的に貸してくれた上で、自分達は仮の住処として、いまエレフの住んで居る住処を造ったのじゃ」

「そんなことがあったのか、初めて知ったぜ」

「お前がまだ小さい頃の話じゃ。エルフは覚えておるか?」

「ああ、俺はかろうじて覚えてるぜ」


 どうやらエレフとエレフの父象はなかなかにお人よしだったようだ。会議とは別に、隅っこで聞いていたハピとファントものんびり果物を食べながら小声でお話していた。


『ファントはこの話知ってる?』

『うん、兄ちゃんから聞いたよ』

『そういえば、ご両親いないんだね』

『そんなに気にしなくていいよ。二人とも普通に寿命で死んだみたいだからね、僕は体弱くて小さいから子供っぽく思われるんだけど、結構大人なんだよ』

『そうなの? 見えないや』

『ハピってば、結構ひどい』

『あはは、ごめんね』

『ううん、気にしないで。ぴぴ達の話が本当なら、これで僕の体が治るでしょ。だから、栄養いっぱいとって、兄ちゃんより大きくなる予定だからね』

『そうだね、元気になったら、いっぱい食べないとだね』


 話はなおも続いていく。


「ただ、大風車の復旧は現状を見てもわかる通り、上手くいかなかった。理由はあの大風車を建てた職人がほとんどじじいになっててな、直せなかったんじゃよ。そもそも、当時住処が必要じゃった女衆は、エレフ達から借りた風車で十分じゃったから、わしらオスが野外で生活すれば問題は無かった。そのうちだらだらと今の生活が続いてしまったんじゃ。これは前長であるわしの責任じゃ。すまんかったな」

「そうだったのか、野外で暮らしてるオスが多い中、なんでエレフ達だけ住処をもってるのかと思ったが、そういうことだったのか。てっきりファントのために建てたのかと思ったぜ」

「当然風車を明け渡したエレフ達では、料理なんかは出来ん。じゃから、その時の貸し出しの条件として、腹いっぱい食える食料をわしらから提供することになったんじゃよ。そして月日は流れ、大風車の再建を完全にあきらめた頃、新しく生まれてきたファント君が病弱だとわかってな、ファント君を治すために、栄養価の高い食事を優先的にまわすという契約で、正式にわしらはいまの風車を譲ってもらったのじゃ」

「そうだったのか、エレフ、本当にすまんかったな」

「いや、いいさ」

「さて、それで今後の話じゃが」


 どうやら、エレフとファント兄弟のご飯少ない問題は、引継ぎミスだったようだ。話はその後も進んでいき、エレフがぴぴ達の歓迎会に乱入してきたことなんかにも言及されたが、そちらはまあ、事情があったということで、大きな問題にはしないことにしたそうだ。


 だが、そんな中、ハピと一緒にごろごろ果物を食べていたファントに、異変が訪れた。



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