竜王と惑星メイクンとゴブリン
メイクンに向けて飛んでいると、途中で例の竜王がこちらを発見したのか、気軽に声をかけてきた。以前女王様と一緒におはなししたことがあるから知り合いではあるものの、わざわざ会いに来てくれるとは、なかなか気さくな王様である。ただ、実力は本物である。ぴぴもぷうも単独では絶対勝てないほど強い。流石は竜王である。今も宇宙の果てからメイクンまで20年で到着できる超スピードの宇宙船の横を、平然と併走している。
こんなに強そうで存在感があるのに、ぴぴ達がすぐ思い出せなかったのも、この竜、姿形がよくわからない。竜なのかどうかすらわからなかったためだ。恒星やブラックホールを食べてるだけあって。竜王本体が超高エネルギー体であった。そのため、全身ぴかぴかと光り輝き、実体がぜんぜん見えないのだ。しかもヘタな恒星より大きい、今もぴぴぷちゃ号から見えるのは、その超巨大な目だけだった。
「よう、ひさしぶりだな、猫ども」
「うん、久しぶり~」
猫以外と会話するときは、ぴぴ達3匹の中で一番社交的なぷうが対応する。ぴぴは対猫相手には仲が良いのだが、基本は人見知りだ。ぷうは誰とでも仲良くできるスキルの持ち主のため、こういうときに活躍する。ただ、不意打ちのかみつきをなんの脈絡もなく繰り出すことがあるため、猫同士の会話は相手が非常に警戒することがある。ハピはぴぴやぷうが会話している姿を見て、かわいい~っと脳内メモリーに刻み込む作業に忙しいため、あんまり会話に参加してこない。
「今回は何しに来た?」
「女王様からの依頼で、メイクンで害獣退治だよ~」
「メイクン? ああ、あのいろいろ移住者が住んでる惑星か。もしや、子竜のことも聞いておるのか?」
「うん、子竜が遊びに来ちゃったら保護してねって言われてるよ」
「そうか、子竜達のこと頼むぞ。メイクンは我らにとってもよい暇つぶしの場になる。子竜が暴れて破壊されるのは避けたいのでな。では、その害獣退治とやらが終わったら、また遊ぼうではないか」
「うん、害獣退治が終わったらよらせてもらうね」
「うむ、楽しみにしておるぞ。では、またな」
「うん、それじゃ、またね~」
強すぎるがゆえに暇な時間の多い竜王と、遊ぶ約束をすることになった。ぴぴ達も害獣駆除後の予定はなかったため、楽しみが増えて喜ぶぴぴとぷうなのであった。そして、20年の船旅を終えて、無事に惑星メイクン上空に到着した。
「ここが惑星メイクンか~、ちょっと愉快な柄の惑星だね」
「ほんとだね~」
惑星メイクンにも当然大陸や島があるのだが、その形が、全部猫の肉球柄だったのだ。つまり、掌球にあたる大きな陸地と、指球にあたる小さな陸地4つが1セットでまさに肉球大陸とも呼べる状態になっており、まるで猫が足跡をつけたかのように、いくつかの肉球大陸が惑星中に広がっていた。
「ぴぴとぷうも、目的の妖精の国のある大陸を探してね」
「「は~い」」
メイクンの静止軌道をぐるぐる飛び回って、妖精の国のある大陸を探す。同じような肉球大陸ばかりで、なかなか探すのが大変だ。惑星メイクンには数多くの知的生命体が住んでいるが、そのすべてが1つの肉球大陸に住んでいた。他の肉球大陸へは、外海の苛酷な環境ゆえ、たどりつけていないらしい。もっとも、現在住んでいる肉球大陸ですら、半分以上はまだモンスターの領域らしく、他の大陸へ行くことより、現在住んでいる肉球大陸における害獣駆除を優先しているとのことだ。幸い、惑星メイクンそのものがすさまじく大きく、肉球大陸の指球部分ですらかなり大きいため、住む場所に困っているわけではないらしい。
「「みつけた」」
ぴぴとぷうが目的の大陸を見つけてくれた。目的の肉球は丁度北向きの形をしており、どうやらその一番東の指球が妖精の国のある大陸のようだ。
「よし、それじゃあ、大気圏突入だね」
「ハピだめ~」
「あう?」
「女王様からもらった冊子にね、ぴぴぷちゃ号は子竜の保護用だから、宇宙に浮かべておいたほうがいいんじゃないかって書いてあるよ。地上から、見つからないように地上から見える側だけステルスモードを起動して、あとは子竜が来たときにすぐ発見できるように、捜索モードにして、静止軌道に置いておいてね。だって」
冊子を見たりするのは猫の手でじゃない。猫なら誰でも使える技である念動力だ。己の生命力で擬似的な手を作り出し物を持ったりできる。なかなかの万能技だ。ただ、そこまでパワーがないため、戦闘向きじゃない。
「そっか、じゃあ降下はミニぴぴぷちゃ号?」
「うん」
「了解。じゃあ、準備しようか、ミニぴぴぷちゃ号に、女王様からもらった探検用グッズをすぐ移しちゃうから、ミニぴぴぷちゃ号で降下しようか」
「「うん」」
ミニぴぴぷちゃ号。その名のとおり大きさがミニなぴぴぷちゃ号ではない。性能がミニなぴぴぷちゃ号なのである。他の猫達から、ぴぴ達みたいにちゃんとしたお家がほしいと依頼を受けたときに、ぴぴぷちゃ号は高性能ゆえに作るのに非常に手間がかかったのだ。でも、多くの猫は寝床としてのぴぴぷちゃ号だけがほしかったため、最低限の移動性能と、寝床としての機能だけをそなえたこのミニぴぴぷちゃ号が生まれたのだった。
こうして、毛玉を吐くようなかんじでぺっとぴぴぷちゃ号から飛び立ったミニぴぴぷちゃ号は、大気圏へ突入し、無事に地上へと降り立つのであった。
ゴゴゴゴゴゴゴッ、ヒューン、ふよふよ、ドスンッ。
「とうちゃーく、それじゃ、女王様からもらったアイテムをバンダナに入れておいたから、装備して外にでよう~」
「「うん」」
バンダナの色はぴぴがピンク、ぷうが赤、ハピが水色だ。このバンダナには空間拡張された小さなポケットがついており、その中にわんこ達からもらった様々な道具が入っている。中身はよくわからないものもあるが、地図に、メイクンモンスター辞典に、メイクン植物辞典など、実用性のあるものが入っていた。あくまで小物入れなので、某2足歩行の猫のポケットのように、何でも入るわけじゃない。
余所行きのバンダナを装備して、おしゃれ度が大幅にアップだ。
そして、入り口が開く。
プシュー。
外に出るとそこは見渡す限りの森であった。どの木を見ても地球の木とは比べ物にならないほど太いし高い。そんな巨木の森の中でも、ひときわ大きな木がたっていた場所に着陸していた。
「おお~、すごいね。一面森だし、こんな大きな木は、はじめてみたかも」
「うん」
「ほえ~」
猫の国にも大きな木はあったようなのだが、ぴぴ達の行動範囲内にはこんな大きな木はなかった。もちろん地球にあるような大きさの木ではなかった。流石はCPある宇宙、植物もCPを活用して巨大になっているのであろう。ちなみに猫の国ではキャットパワー、略してCPと呼んでいるため、猫にしか利用できない力に聞こえるが、実際は世間一般には魔力とよんでいる力であり、猫以外でも使用している力である。
そして、ぴぴ達が降り立った場所にたつ巨大な木にある洞は、CP、もとい魔力のたまり場で、宇宙への移動手段その2、現地のCP(魔力)の滞留地帯でモンスターのように誕生する方法を使った際に、猫達が出現する場所なのであった。なぜわざわざそんな場所に着陸したかというと、地球では猫宇宙人説などがあるため、いきなり街に宇宙船で降下しても驚かれないかもしれないが、メイクンではパニックを起こすかもしれないからと、女王様からの指示にて、妖精の国に一番近い猫転生スポットである、ここに着陸したのだ。いや、地球でも猫がいきなり宇宙船から降りてきたらパニック間違いなしだよ。という指摘は誰もしなかった。
「女王様からもらった地図だと、ここから西に妖精の国があるみたいだよ~」
「この地図、大雑把すぎて距離はわかんないよね?」
「うん、距離はこの地図だとわかんないね~。ただ、そこそこ遠そうだよね~」
「この転生ポイントの大きな木は見つからないように隠してあるみたいだからね。認識阻害や侵入防止の結界も張ってあるけど、念のために距離も離してるんじゃないのかな」
もらった地図はどうみても縮尺がちゃんとした地図ではなく、行基図のような方角も距離もだいたいこのくらいかな、という感じのものだった。おまけに、現在地までこの辺といった感じだ。もっとも、この場所を隠したい以上、正確にここの場所が書いてある地図も、それはそれでまずい気がするため、あきらめるしかない。
「うん」
「じゃあ、ミニぴぴぷちゃ号で飛んでいこうか」
「ダメみたいだよ~」
「え、なんで?」
「ハピ、ちゃんと女王様からの注意事項読んだ? ここに、ぴぴぷちゃ号は宇宙までしか使っちゃダメ、ミニぴぴぷちゃ号も、住居としては使っていいけど、空を飛んだり、乗り物としては使っちゃダメって書いてあるよ」
「うう、メイクンに来るところまでのことしか読んでなかった」
「まあまあ、元々宇宙移動のメインがハピで、こっちついてからのメインは私とぷうだったしね」
「そうそう、気にしないで~。ちなみに使っちゃいけない理由なんだけど。ぴぴぷちゃ号も、ミニぴぴぷちゃ号も、猫の国で作ったアイテムだからだって。今回は例の子竜対策で特別に許可がでたっていうだけだから、本来の害獣駆除の任務で使うのは、反則っていう理由みたいだよ~」
「じゃあもしかして、ぴぴぷちゃ号からのサポートもダメなの? 衛星からの画像とか、位置情報とか」
「ダメだと思うよ~。だって、お城で将軍の部下が言ってたでしょ。成績上位の猫岳に追加報酬が出るって。私達女王様直轄の猫岳メンバーが、ずるするわけにはいかないよ~」
「あうあうあうあうあうあう」
犬達の依頼を早期に解決するのなら、ぴぴぷちゃ号だろうが遠慮なく使ったほうがいいのは間違いない。しかし、犬達の依頼よりも、猫の国の遊びを優先するのが、女王様クオリティであった。
「まあまあハピ、猫の国で作ったものだからダメなわけだからさ、こっちで作る分には問題ないでしょ」
「それがいいね~、ハピ、ぴぴがいうように作ってみたら~?」
「え、手伝ってくれるの?」
猫にとって都合のいい猫の国ですら作るのに非常に時間がかかったのがぴぴぷちゃ号だ。ミニのほうもかなり大変だったということを思い出したぴぴとぷうは、ごまかすことにした。
「まあ、あれだよ、あれ。ミニぴぴぷちゃ号を住居としては使っていいみたいだから、のんびり行こう~」
「まあ、くよくよしててもしょうがないね。幸いミニぴぴぷちゃ号をお家として使うのはいいんだし、のんびり行こっか~」
「「うん」」
幸いミニぴぴぷちゃ号という家もあるし、のんびりできる物資も持ち込んでいる。よくよく考えれば、のんびりごろごろするのに、なんの不満も無いのだ。ハピは元気になった。
こうして一行は森の中を走るのであった。そして、ハピは自身の身体能力にびっくりしていた。流石は最高品質の毛皮。身体強化技を使っているとはいえ、森の中をかなりの速度で走ってもぜんぜん疲れない。ぴぴぷちゃ号の中でもメイクンにつくまでの20年の間、ぴぴ達とバトルをして遊んでいたが、逆に言えばバトルの最中の全力疾走しかしていなかった。そのため、風を切って走るのが想定外に楽で楽しかった。おまけに岩があってもひとっとび、ちょっとした木なんかは体当たりでへし折りながら進んでいける。思わぬ誤算についつい気分が高揚するハピであった。ちなみに、ミニぴぴぷちゃ号は完全ステルスモードで、後方上空をついてきている。
「わっがっはい~は猫である♪ ふふん♪ とっても速い~猫である♪」
ハピはのんきに歌いながら走っていた。芋虫とか蛾とか蜘蛛とかミミズとか、地球のそれと比較すると、はるかに大きい虫のモンスターがひっきりなしに現れる。芋虫なんて直径1m以上あるそうだ。ぴぴとぷうが我先にと倒してくれるので、ハピはまったく気づかず、ご機嫌であった。素材はもしかしたら高価なものもあるのかもしれないが、ぴぴ達にとっての素材の選定基準はおいしそうか否かなので、虫の素材は無視であった。そうして、子一時間走っていると、ぴぴとぷうがなにかを見つけようだ。耳がぴくぴくっと反応する。
「「ストップ」」
「どうしたの?」
「この先にゴブリンがいるね」
「うん」
「そうなの? ぜんぜんわかんないや。どこにいるの?」
「あっちの方向だよ、木が邪魔で見えないけど、ゴブリンの歩く音がするからね」
「数とかはわかる?」
「11匹かな」
「うん、わたしも11匹だと思う」
「たしか、ゴブリンは害獣指定のモンスターだよね。やっつけようか」
「「お~!」」
害獣は宇宙によっていろいろと種類がちがった。このメイクンのある宇宙は、猫や犬をはじめとした肉食系の動物は、知的生命体と同レベル以上の知性と魔力を持つことが出来た。高い知性のおかげで知的だし、魔力のおかげでテレパス等コミュニケーション手段もあるため、意思疎通にも困らない。なので、猫系の動物である虎とか獅子とかも仲間だし、犬系の動物である狼も当然仲間である。もちろん熊も仲間だし、草食よりだけどパンダも仲間だ。また、タカやワシといった猛禽類も仲間である。
そのため、地球では家畜を襲うとして、害獣扱いされている狼や狐は、メイクンではコミュニケーションのとれる仲間であり、害獣扱いされない。
逆にぱっと見では猫や犬、熊に見えても、動物じゃなく魔物は全部コミュニケーションも取れないため仲間じゃない。もっとも、地球での人間と犬の関係のように、モンスターの中には人間達と一緒に生活することを好むモンスターも結構多い。その辺の線引きがなんとも難しいのである。ぴぴ達が妖精の国に向かっている理由のひとつには、ハンターギルドの討伐対象モンスターを見れば、倒していいモンスターとそうでないモンスターがわかるという点もある。
そして今回発見したゴブリンは、メイクンでは害獣指定モンスターなのであった。なにせ女王様からもらったメイクンモンスター辞典にも、はっきりと倒していいモンスターリストに入っている。ちなみに先ほどまで倒していた虫モンスターは、畑とかにいれば害虫になるので特別報酬の査定対象だが、森にいる分には害虫でもなんでもないため、特別報酬の査定外だ。
そして、辞典によると、ゴブリンの特徴は簡単にいうと、100cm程度の身長の小柄な人型モンスターで、姿は醜悪、顔は大きく、長く尖った耳と、大きなかぎ鼻が特徴。肌の色は生息地により変化し、森林地帯なら緑、荒野や山岳地帯などでは茶色になる。また、魔法を使うゴブリンは、扱う魔法の属性により肌の色が変化することもある。上位種に10人隊長ゴブリン、100人隊長ゴブリンなどがいて、上位種は体も大きくなる。ハピの目には、大きい頭に小さい体と、比較的かわいい系に映っていた。
ぴぴ達はゴブリン達が視認できる場所まで移動した。もちろん見つからないように注意しながらだ。ハピの動きはかなり怪しかったが、ゴブリンがぐぎゃぐぎゃと話ながら移動しているため、見つかることはなかった。ハピは大きいから仕方ないとも思えるが、猫科の大型動物の中にはもっと大きい動物がいっぱいいる。いちおうハピにも言い分はある。単純なかくれんぼならハピもそこそこ自身があったのだが、隠れながら、爪が届く距離まで接近するなど、やったことがないのだ。そもそもそんなに接近する隠蔽能力がないからこそ、人間というのは弓や銃、罠を使うのである。だから、隠れるのがへたなのはハピ個人の問題ではなく、元人間の猫共通の問題のはずだ。と力説するのであった。が、実際にはそんなことはない。なにせそれが出来ないと、ご飯が食べれないのだ。そのため、猫の国からほとんど出ず、出てもお皿パワーでご飯に困らないハピ個人の問題だった。
「思ったよりしっかりした服を着ているね~」
「うん、女王様からもらったメイクンモンスター辞典によると、しっかりと服を着ているゴブリンは、大きな集落を作っているゴブリンの特徴みたいだね」
「ゴブリン達の歩いてるところも、獣道みたいになっているみたいだし、ちょっと大きめなゴブリンを先頭に、綺麗に2列になって歩いている辺り、統率も取れてそうだね~」
「11匹も斥候として巡回させてるあたり、集落には少なくとも100匹はいるだろうね」
「そうだね、ここはやっちゃおっか。後をつけて集落の位置を探るっていうのも手だけど、ゴブリンの使ってる獣道をたどればすぐつきそうだし~」
「うん、私も賛成」
「じゃあハピ、行ってくるね~」
「うん、いってらっしゃい」
そう言ってハピは、後ろから健気についてきていたミニぴぴぷちゃ号を呼んで。ぴぴとぷうのおやつの準備をする。ハピはバトルには基本的に参加しない。ぴぴとぷうがバトル担当、ハピがご飯などの補給担当と役割分担がはっきりしている。
ハピは本来過保護である。ぴぴやぷうが怪我をするところはみたくないし、怪我をする可能性は徹底的に排除したい。地球にいたころも、車が怖いから基本家から出さなかったし。脱走対策もいろいろしていた。どうしてもぷうが外に出たがったときは、庭からは出られないような長さのリードをつけて、散歩させていた。しかし、それではダメなのだ。もう飼い主と飼い猫の関係ではない、ぴぴもぷうも立派な成猫である。今回のメイクンの旅で、子離れしなければと心に誓うハピなのであった。
一方ぴぴとぷうは割とのんきなものだった。ゴブリンは獲物、もしくはおもちゃであり、敵という認識はないようである。まあ、猫は意外と残酷な遊びをする生き物である。今回も遊んで終わりなのだろう。
「そうだ、ゴブリンゴーレムを出して、実験してもいいかな~?」
「実験?」
「うん、本当は最初にやれればよかったんだけど、つい忘れちゃっててね。わたしのゴーレムと実際のモンスターの強さが同じか確かめたいの」
ぴぴとぷうはメイクンに到着するまでの20年の間にいろいろと遊んでいた。その中のひとつに、メイクンモンスター辞典のモンスターをぷうの土技でゴーレムとして再現して、狩りを行うというものがあったのだ。
「なるほど、あのときのモンスターもどきゴーレムが、本物と比べてどの程度の実力だったのかを確かめるってことね。流石ぷう、ナイスアイデアだね」
「えへへ、ありがとう~」
こうして、ぷうはゴブリンゴーレムを11体、武器も服も大きさもそっくり再現した。そして、ゴブリン達が通っている獣道に配置して、わざと鉢合わせるかのように歩かせた。
「ぐぎゃぐぎゃぐぎゃ」
ゴブリンゴーレムと鉢合わせたゴブリン達は驚いているようであった。だが、ゴブリンの肌は緑なのに対して、ゴブリンゴーレムは茶色だ。おまけに剣を抜いてあからさまに挑発をするゴブリンゴーレムに、ゴブリン達もこいつらは敵だと気づいたようだ。
そして、両者ともにボス格のちょっと大きいゴブリンが狭い獣道で対峙し、雑魚ゴブリンは森の中に入り、完全な横一文字の陣形で向かい合った。
ぶつかり合う剣と剣、槍と槍、こんぼうとこんぼう、流石ぷうがモンスター辞典をもとに再現したゴブリンゴーレムである。ゴブリン達と互角の戦闘を繰り広げる。とはいえ、最下級のモンスターのゴブリンと、それを再現したゴブリンゴーレムの戦いだ。特に見所もなくしばらく低レベルな戦いが繰り広げられていた。
結果はゴブリンゴーレムの勝利であった。ゴーレムは魔力がこもったコアが破壊されるか、ダメージを受けすぎてコアが魔力切れになると倒れるのだが、ゴブリン達にはゴブリンゴーレムであることは見抜けなかったようである。ボス同士の対決は、お互いのお腹に剣が突き刺さるというダブルノックアウト状態だったのだが、ゴブリンゴーレムはお腹に剣がささっても、まだ倒れない。その後、お腹に剣が刺さったまま、平然とぐぎゃぐぎゃ言いながら他のゴブリンに襲い掛かっていった。雑魚ゴブリン達も、切っても突いても平然としているゴブリンゴーレムに恐怖し、後半は完全に押されていた。
「実験終了だね~」
「うん、どうやらぷうの再現したゴーレムモンスターは、けっこう正確な強さだったみたいだね。ダメージに対する反応がない分、ゴーレムの方がちょっと強いかもしれないけど」
こうして、はじめての害獣駆除は、無事終わったのだった。