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ゴブリンとの逃走戦

 今、妖精の国の女王であるうめの乗る馬車は、旅の途中にゴブリンからの攻撃を受け、安全地帯である妖精の国の旧王都目指して逃走中である。


「くっそ、次から次へと現れやがって、ハピ、そっち回り込まれるぞ。さっさと撃て!」

「わかった!」


 ダダダダダダダッ!


 うめの乗る馬車は高速で走る。速度は時速60キロメートルは出ているだろうか、悪路ということもあり、前後の車輪が激しく上下する。だが、かなりの速度にもかかわらず、追っ手を振り切れない。なぜなら、追って来るゴブリンは狼タイプのモンスターの背にのり、馬車より速い速度で追ってきているからだ。


 うめの護衛である妖精のイブキとケット・シーのハピは、馬車の後部、客室の後ろの従者用の台に陣取り、機関銃を手に追っ手のゴブリン達を迎撃する。


「ちいい、次から次へと、しつこいやつらだな」

「イブキ、今度はそっち側のゴブリンの数が多いよ。対処して」

「わ~ったよ!」


 ダダダダダダダッ!


 逃走を開始して、もう何分経過しただろうか、ゴブリン達の追撃は止まることを知らない。すると。


 ガゴ~ン!


「今のは何? 馬車の結界に何か当たったよ」

「イブキ、ハピ、上だ。鳥に乗ったゴブリンがいる」


 御者台に座り、馬車を操っていたもう1人の妖精族、マルバが攻撃の出所を教えてくれる。馬車の上空には5匹の鳥に乗ったゴブリンがいるようだ。


「上だと? ちいい、ハピ、あいつら迎撃するぞ」

「わかった」


 ダダダダダダダッ!


 2人して空に向けて機関銃を撃ちこむがなかなか当たらない。


「イブキ、あたんない!」

「くそ、やつらが空にいる以上かなり不利だが、やるしかねえだろ」


 ガゴ~ン!


 その時、馬車が大きく左右に揺れる。


「うお!」

「あう!」

「2人とも、横だ横。魔法使いタイプゴブリンがファイアーボールを撃ってきてる。上空からの攻撃は俺が出来るだけ回避するから、お前らは地上目標優先で対処しろ」

「「わかった!」」


 馬車は右へ左へと蛇行しながら、走り続ける。空中からのファイアーボールによる攻撃は、結構いい感じに避けれているようだ。イブキとハピは地上のゴブリンを仕留めていく。


「ある程度仕留めたか?」

「うん、でも、次の追っ手がすぐ近くまで来てるよ」

「ちいい、上空のやつらを仕留めたいのに、手が出せんな」


 そんなことを2人で話していると、この機関銃の製造者であるぷうが、馬車の中から声をかけてきた。


「このロケットランチャーを使って、モード切替で対空モード、対地重装甲目標モード、対地軽装甲目標モードがあるから」

「そいつはありがたい!」

「ありがとう!」

「5発まで連続して撃てるけど、チャージに時間が掛かるから、撃ちすぎると必要な時に撃てなくなるから気をつけてね」

「「わかった!」」


 イブキとハピは早速地上のゴブリンの残りを倒し対空戦闘に入る。


「俺が北側の3匹やる。ハピは南側の2匹頼む」

「わかった」


 空飛ぶ鳥に照準を合わせ、ロックオン、そして発射だ。


 ポッヒュ~ン、ドッカ~ン!


 2人の放った対空ミサイルは無事に別々のターゲットを破壊した。


「よっしゃあ、やったぜ!」

「うん、これならいけるね!」


 その後もイブキが2発、ハピが1発撃って順調に撃ち落す。


「うし、これで最後だ~!」


 そして、無事に空飛ぶ追っ手を無事に完全に撃破した。


「イブキ、早く対地攻撃に戻って、次の追っ手の群れが来た」

「わかった。ってちょっと待て、なんだあのでかいのは」

「ほんとだ、デカイね」


 今度出てきたのは狼に乗ったゴブリンの群れ以外に、装甲車のような馬車に乗ったゴブリンの群れだ。引いてる狼も結構大きい、しかも4頭引きだ。


「馬車は頑丈そうだな。とりあえず狼を攻撃だ!」

「わかった」


 ばかすか機関銃を発射するが、結界のようなものに弾かれて狼まで届かない。


「ちい、魔力の流れを見ると、御者席に乗ってるやつの防御魔法だな」

「どうするの?」

「撃ちまくるしかないだろ、他に手があるのかよ」

「さっきぷうがこのロケットランチャーには対地重装甲モードがあるって言ってたから、それは?」

「そうだ、それだ。よし、撃ちまくれ!」

「うん!」


 ロケットランチャーを対地重装甲用にモード選択をして、重装甲馬車に発射する。


 ポヒュ~ン! ドカン!


「どうだ? よし、防御魔法が切れたな、かけなおされる前にもう1発づつ撃つぞ」

「わかった!」


 ポヒュ~ン! ドカン! ポヒュ~ン! ドカン!


 ゴブリンの重装甲馬車はみごとに木っ端微塵だ。


「よっし! 撃破だぜ!」

「あとは狼ゴブリンだけだね」

「おう、一気に決めるぜ!」


 こうして残りの狼に乗ったゴブリン達を機関銃で倒す。どうやらこれで最後のようだ。馬車から1発の魔法が空中に放たれると、爆発して花火のように文字が空に現れる。


 ミッションコンプリート!


「うおっしゃあ! 俺達の勝利だ!」

「うん!」

「いや~、なかなか楽しかったぜ。ぷうもハピもありがとな」

「いえいえ、我輩もなんだかんだ楽しんじゃったからね」


 そう、昨晩ぴぴ達3人の考えた、イブキの退屈しのぎの遊びは、馬車を守るシューティングゲームにしようという話になったのだ。


 襲ってきたゴブリンは全部ぷうのゴブリンゴーレムだし、使った機関銃やロケットランチャーもぷうの魔法で作ったものなので、発射してたのは土の球だったりする。発射音なんかは雰囲気作りで火魔法を使って再現するという熱の入れようだ。ハピまで一緒に戦ってたのは、ハピがやりたかったっていうのもあるが、こういうのは1人でやるよりも相棒がいたほうが楽しめるのだ。


「イブキ、もう満足したか?」

「はいっす。もう超満足っすよ。マルバ先輩!」

「じゃあ、次の休憩で元の役割にもどるぞ」

「了解っす!」


 イブキのすっす口調も戻ったことで、ハピは客室の後ろにある従者席にイブキを残して、客室に帰っていく。すると、ぷうとうめが迎えてくれた。ぴぴは優雅に昼寝中だ。ぴぴが不参加だったのには理由がある。ぴぴは目の前をちょこまかと動くものをみると直接襲いたくなるのだ。でも、ぴぴに手を出されたらぷうのゴーレムもすぐ全滅してしまう。そのため、ぴぴが昼寝中に決行した。


「ただいま~」

「おかえり~」

「おかえり。悪かったねえ、イブキに付き合ってもらっちゃって」

「気にしないで、なかなか楽しかったしね」

「ねえぷう、またイブキが旅に飽きたときのために、バリエーション増やしとく?」

「そうだね。そうしよっか!」

「今度はぷうのだした機関銃じゃなくて、遠距離魔法で戦えるようにするっていうのもいいかもだよね」

「そうだね、それならもっといろいろなゴーレムを出して、より思いっきりイブキが暴れられるもんね。イブキの実力に合わせて出すゴーレムを調整すれば、もっと苦戦する雰囲気を演出できるよね」

「うん、今回出してもらった銃だと、どうしても威力が固定になっちゃうし、お遊び感が強いよね」

「じゃあ、今度どういうモンスターゴーレムを出すのがいいか、図鑑で選ぼっか。ハピとうめも手伝ってね」

「うん」

「ああ、もちろんいいさね。しっかしぷうのゴーレムの制御技術はすごいね。今の遊びも見てたけど、ゴーレムの強度とか、本物そっくりじゃないかい?」

「うん、猫の国からこっちに来るまでの間。ぴぴぷちゃ号の中で図鑑を元にモンスターを再現したゴーレムと戦って遊んでたからね。それに、こっちにきてけっこうな数のモンスターと、実際に戦ったから、よりリアルなモンスターをゴーレムで作り出せるようになったんだ~」

「ほう、それはすごいじゃないか。それじゃあもしかして、ビッグヘッドランドドラゴンなんかも再現できるのかい?」

「うん、できるよ。わんこ達にもらった図鑑にはあんまり情報なかったけど、実際にあって、ぴぴが仕留めてたからね。ハピの倒してきた巨大ドラゴンもできるよ」

「ほうほう、それはいいことを聞いたねえ。のうぷうや、バトル大会のエキシビジョンで、出してもらえんかね?」

「うん、いいけど、きちんと再現しちゃった場合、妖精の国の軍隊が勝てるかはわかんないよ?」

「それはもちろんかまわない、負けたら負けたでいいんだよ。こんな時代だからね。国民にも軍にもハンターにも、妖精の国で確認されている、この大陸最高峰の肉食系モンスターの強さが、どれほどのものか知っておいてほしいんだよ。そして、いまの私達の戦力がどこまで通用するのか、それをしっかりと把握しておいてほしいのさ。前回巨木の森のモンスターが出てきたときやられたやつらは、あまりに強大なモンスターに、何もできなかったらしいんじゃよ。それこそ逃げることすらだよ。だからこそ、この大陸にはどんな恐ろしいモンスターがいるかを知ってほしいんだ」

「そういうことならいいよ~」

「ありがとうね。まあでも、現状の戦力では厳しそうだけどねえ」

「でも、ハピの取ってきた巨大ドラゴンのお肉もあるし、まだ1月弱あるからね。この1月でわたし達の想定外の進化をしているかもだよ」

「それもそうだね。さてと、休憩時間にはあたしも特訓しようかねえ。その時はゴーレムを頼んでいいかい?」

「うん、まかせて~」



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