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旧王都への道のり

 王都から出発して最初のお昼になった。さっそくみんなでお昼の準備だ。


「テーブルでいい~?」

「ああ、かまわないよ」

「今日はわたしがご飯出すね~」

「ああ、頼むね」


 ぷうが東屋とテーブルと椅子を土魔法で作り出し、収納魔法からご飯を取り出す。ぴぴはゆっくりご飯を食べるためにその辺にいたモンスターを一掃しにちょっとお出かけする。うめの従者の2人は馬のお世話だ。そしてハピとうめはのんびり待機だ。


「ほう、すごいとは思っていたが、実際にこうやって魔法を使うところを見るとすごいね」

「ぷうのこと?」

「ああ、ぴぴはうすき達のトレーニング中に少し見させてもらったが、直接攻撃系の技ばかりだったからね、純粋な魔法を見るのははじめてかな」

「そうなんだ? ちなみにどうすごいの?」

「まずはやはり魔力の漏れだね」

「漏れ?」

「ああ、普通魔法を使うときは、周辺に多少魔力が漏れるんだよ。どんな魔法でもだ。隠密の使う隠蔽魔法ですら、あたしは感知できる。そんなあたしが、目の前で魔法を使われて、魔力の漏れを感知できなかったのは、あんたらで2人目だね」

「ふ~ん、1人はいたんだ」

「ああ、さくらがそうさ。あいつの魔力制御力もばかげてたからね。でも、それはあくまでも戦闘中だけだ。こんなのんびりだらだら魔法が使える状況下で、ここまで完璧な魔力制御は、初めてだね」

「ふ~ん、我輩にはよくわかんないや」

「そうかい、まあ、あんたの相方がすごいってことさ」

「うん」


 ぷうはデザインが気に食わなかったのか、何度か作り直していたが、ようやく気に入ったものが出来たようだ。


「みんなご飯だよ~!」


 ぷうが大声で呼ぶと、あっさりと全員集まる。


「今日は以前わたしが取ってきたボス牛のお肉を使ったサンドイッチと、ハピが取ってきた巨木の森の果物だよ。それから、食堂からもらってきたジュースだね」

「ほう、おいしそうじゃないか」

「うん、美味しいね」

「うん、サンドイッチはたまごとかハムレタスとか、いろいろあるから好きなのをどうぞ~」


 もぐもぐとお昼をお腹いっぱい食べると、食休みだ。


「そうだ、そういえばみんなに相談したいことがあるんだった」

「なに~?」

「なになに~?」

「未知の惑星でね。グラジオラス達に魔法を見せたんだけど、自分の魔法なのにぜんぜん説明できなかったんだよね。我輩の魔法って、いったいなんなの?」

「ほう、どんな魔法か見せてもらってもいいかい?」

「うん、いいよ。グラジオラス達に見せたのはこれだよ」


 そう言ってハピは、猫グッズ魔法でグラジオラス達に見せたのと同じ猫じゃらしを作る。


「ほほう、なかなか不思議な魔法だねえ。もう10回くらいいいかい?」

「うん」


 ハピはうめに言われるがままに10本の猫じゃらしを追加で作る。


「どお~?」

「ふむ、この力。本当にお主自身の力かい?」

「あう?」

「すごいねうめ。ハピの猫魔法がわかるなんて」

「うん、わたしでもなかなかわかんなかったのに」

「いや、わかったわけじゃないのさ、ハピ自身の力じゃないことだけはわかったが」

「それだけわかれば十分だよね」

「うん」

「で、結局我輩の魔法って何なの?」

「猫に都合のいい魔法だよ」

「あう?」

「はい?」

「ハピもうめも普通の魔法は知ってるでしょ?」

「それは、自然の魔力を取り込んで、それをリソースとして魔法として使うってことかい?」

「そうそう。でも、ハピの魔法はハピの体からリソースが出てないの」

「ああ、それはあたしもわかった」

「でも、物理的にありえないよね。そんなの」

「そのとうりだね」

「だから、リソース自体がハピの体にないってことは、ハピの本体はここにはいないってことなの」

「あうあうあう!? ちょっとまって、我輩ここに居るよ!」

「まあ、落ち着いて聞いてね。ハピの魔法って、猫の国で編み出した魔法だよね」

「うん」

「でね、猫の国って、猫にとって都合がいい次元が全部あるから、場合によっては魔法が使える宇宙でも、通常ありえないおかしな次元の魔法が使えることがあるの」

「ふむ」

「そしてハピの猫魔法は、猫の国でしか本来使えない魔法なんだよ。だって、この宇宙にハピの魔法のリソースがないんだもん。だからうめもハピの力とは思わなかったってわけね」

「そういうことかい。あたしとしては、変な属性持ち込まないでほしかったんだけどね。でも、やばい属性ってわけじゃないんだろ?」

「うん、猫が生きてる世界なら表面的には存在しなくても、どこかに猫の国への通路はあるはずだから、そこにハピの本体が居るだけだからね。たぶんぴぴぷちゃ号の本体と一緒に」

「な~んだ、ぴぴぷちゃ号の本体といるのね。じゃあ、別にそこまでまずいことはないよね」

「ちょっとだけまずいことはあるかな。私達の毛皮って、どう考えてもメイクンのほかの人たちと比べるとおかしい存在でしょ? それは猫の国から持ち込んだものだから、誕生時のリソースが違うからって思えば説明つくの。でもね、私やぷうは普通にしてる分には、エネルギー補給がメイクンの食べ物で出来てるから問題ないの。だってふつうの火魔法や土魔法を基本的に使ってるからね。でも、ハピだけはちょっとまずいことがあるの。猫魔法のリソースの補給ができてないっぽいんだよね。たぶん、表立って猫魔法が使える次元がないからだね。だから、ハピは猫の国からもちだした魔力が尽きたら、猫魔法使えなくなるどころか、消滅するよ。その毛皮」

「あうあうあうあうあう? それって我輩ピンチじゃない?」

「大丈夫だよ。ご飯皿とか猫じゃらしくらいなら消費少ないし、ぴぴぷちゃ号で下手に暴れない限りそんなに消費しないでしょ。それに、猫魔法が使えなくなると同時に、本体からのリンクが切れるだけだから、猫の国への通路で、ぴぴぷちゃ号とのんびりできるよ」

「ふむ、それなら大丈夫かな」

「うん、ぴぴぷちゃ号の魔力に比べたら、ミニぴぴぷちゃ号ですらたいした魔力じゃないから、ぴぴぷちゃ号にだけ気を付ければ大丈夫だよ」

「わかった~。でも、これで安心したよ。我輩が猫魔法のことをメイクンで説明できなくても、何の問題もなかったってわけね」

「なんでそうなるんだい?」

「だって、我輩が説明できようが出来まいが、グラジオラス達が猫魔法を使える可能性は0だったってわけでしょ? これが我輩が説明できないばっかりに覚えられないってなると、ちょっとあれだけど、説明できても無理なら、なんの問題もないでしょ?」

「ふむ、そういう考え方もありなのかね?」

「まあ、ハピがいいならいいかな?」

「うん、ハピがいいなら、いいんじゃないのかな?」

「それじゃあ、そろそろ出発するかい?」

「うん、我輩悩みも解決してすっきりしちゃった。あ~ふ、なんか眠いかも」

「うん、わたしも眠い~」

「なら、この後は馬車で昼寝すればいいよ。あたしの馬車は昼寝具合も抜群だからね!」

「うん、そうさせてもらうね~」

「わたしも~、おやすみ~」


 ぷうとハピは速攻で馬車に乗って居眠りだ。


「ふう、じゃあこの東屋とテーブルと椅子を壊しとく?」

「そうじゃの。そうするかね」

「はい、お任せ下さい」

「まかせるっす! ご飯のお礼くらいするっすよ」

「じゃあ、お願いするよ」

「うん、お願い~。そうだうめ、一応報告しとくね。お昼の前にこの周囲10キロメートルくらいのモンスターをとりあえず狩ったんだけど、いたのは☆でいうと1か2のモンスターばっかりだったよ」

「そうかい、ありがとうね。王都から旧王都間には、基本的には強いモンスターはいないからね、ぴぴものんびりしておくれ」

「うん、そうするね。おやすみ~」


 こうしてお昼を終えて、一行は再び旧王都へと出発していく。


「あの~、うめ様?」

「なんだい?」

「東屋が頑丈すぎて壊れないっす!」

「まったく、なにやってるんだい」

「うめ様も手を貸してくださいっす。ほんとうにこわれないんっすから」

「んったく、しょうがないねえ」


 ドコ~ン! バカ~ン! ゴッオ~ン!


「・・・・・・」

「ほら、やっぱ硬いっすよね」

「正直、なんでたかが東屋がここまで硬いのか、理解できません」

「うん、そうだね。起こすのも悪いし、別にモンスターに使われるわけでもないし、ぷうの魔力が切れたら勝手に壊れるだろうから、ほうっておこうか」

「はいっす」

「わかりました」


 改めて、一行は再び旧王都へと出発していくのだった。


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