妖精女王うめとさくら
近衛師団団長であるナノハナへの報告を終えたハピ、グラジオラス、シクラメン、ローズの4人は、今度はチーズの兼でさくらのところに行こうとしていた。
「じゃあナノハナ、報告これでいいなら、俺達は行くぜ」
「行くぜってどこに向かわれるのですか?」
「私達が巨木の森で草や果物を集めたのは、旧王都でチーズを作ってもらうためですわ。ハピさんはさくら様からその話しを聞いたそうですので、これからさくら様のところに行って、旧王都へ行く相談を致しますの」
「まさかとは思いますが、今回も付いていくわけではありませんよね?」
「もちろん一緒に行くよ~。あたしも美味しいチーズ食べたいし」
「ダメです」
「「「ええ~」」」
「なんでだよ。いいだろ別に、仕事うんぬんでいったら、ハピの倒した2匹のドラゴンには負けるかも知れねえが、俺達が集めてきた果物だって十分すぎる成果だろうがよ」
「そうだそうだ。横暴だ!」
「そうですわ。それに、ハピさん1人では不安ですわ。旧王都の草食動物たちは、肉食獣であるハピさん達を怖がるでしょうから、交渉役としても妖精族の仲介者は必須のはずですわ」
「そうだそうだ!」
「それに関しては話が付いています」
「へ?」
「どういうことですの?」
「どういうことも何も、あなた方が出かけてから何ヶ月たっていると思うのですか。その間に手配済みに決まっているでしょう?」
「くっ、そういえばなんだかんだハピ達はVIP扱いだったな。俺達と扱いが違いすぎる」
「今回の件でVIP度合いはさらに凄いことになっておりますよ。そういうわけですで、ハピさん達について一緒に旧王都へ行くのは、うめ様ということが決定済みです」
「「「うめさま~!?」」」
「あ、なんだか俺、バトル大会に向けて練習したくなったかも」
「あたしも料理長のご飯やデザート食べつくしてないから、今回は止めとこうかな~」
「そういえば、私もまだ採取してきた果物の整理整頓がおわってませんでしたわ」
「はあ、あなたたち・・・・・・」
「あう?」
「ハピ様、お気になさらず。うめ様は妖精族の中では最年長格で厳しい面をお持ちのお方ですが、本来はお優しい方なのです。近衛師団の中でも、第1部隊のメンバーからは慕われております。ただ、この3人のように、自由気ままに好き勝手に動くことを愛するメンバーからは、避けられがちなのです」
「そうなんだ。でも、我輩達も自由気ままな猫なんだけど」
「それは心配には及びません、うめ様は猫が自由気ままな生き物だと知っておりますので」
「なら安心かな」
「ええ、大丈夫ですわ。そこで、うめ様とさくら様に会ってもらいたいのですが、この時間ですともうお昼ご飯になってしまいますね」
「うん、そうだね。もうお昼だったね」
「お食事は食堂で取られるご予定ですか?」
「うん」
「では、うめ様とさくら様との話は、食堂でお昼ご飯を食べながらということでいいでしょうか?」
「うん」
「ありがとうございます。では、そのように手配しておきますね」
「うん、こちらこそありがとう~」
そしてお昼、ハピ達3人は食堂にてご飯をもぐもぐと食べていると、うめとさくらが現れた。うめとさくらはハピ達を見つけるとテーブルにやってくる。
「「こんにちは」」
「「「こんにちは」」」
「お聞きしましたよハピちゃん、すごい草や果物を集めてきたそうですね。それに、ぴぴちゃんとぷうちゃんも、うすきちゃん達に特訓をしてくれたみたいで、ありがとうね」
「ううん、気にしないで、ギルマス達がやる気満々だったからね」
「うん、アオイ達と遊ぶのも楽しいしね」
「そうそう、我輩なんてさくらに言われた場所にちょっといって、採取してきただけだしね。ちょっとイレギュラーで別の惑星まで行っちゃったけど」
「ハピちゃんの集めてきたお肉や果物は私も食べさせてもらったけど、お肉も果物もとっても美味しかったわ。私では草の味はわからないけれど、きっと満足してもらえると思うわ」
「うん、そうだといいな~」
「それで、あんた達はいつごろ行く予定なんだい?」
「出来れば明後日くらいに行きたいんだ。うめが付いてきてくれるってナノハナが行ってたけど、予定は大丈夫?」
「ああ、心配無用じゃよ。あんたらが帰ってきたら、そう遅くない時期に行くんじゃないかと予想してたからね、こっちの仕事は片付いてるよ。それで、移動手段はどうするんだい?」
「はい! 出来れば馬車旅がいいな。モンスターもそんなにいないんなら、のんびり馬車に揺られながら旅がしたいの」
「そう言ってもらえると助かるよ、ぷう。あたしもいい年だからね。飛んでいくのはなかなか大変なのさ」
「そういえば、うめとさくらが妖精の国の女王様って聞いたんだけど、本当なの?」
「おや? 知らなかったのかい? そういえばあえて女王とは名乗らなかったね」
「そうね、みんな知っているものと思っていたから、つい忘れちゃったわね」
「まあ、改めて名乗るほどのことじゃないか。一応あたしとさくらが10年交代くらいで女王をやってるよ。まあ、たいした意味はないよ。ハピと一緒に行ったグラジオラス達も、女王経験者だからね。もっとも、一番長いのがグラジオラスで1週間だったかね?」
「ふふ、そうね、たしかそのくらいのはずね。でも、実際たいしたことないのよ。もともと妖精族に王はいなかったのだけれど、他の種族から、代表者がほしいって要請がよくあったらしいのよ。そこで、その要望をかなえる形で作られた制度みたいなの。だから、基本的にはやりたい子がやるのよ」
「ま、ほとんどのやつらはすぐ飽きちゃうから、あたしやさくらみたいな婆さんががんばってるってわけじゃよ。まあ、あたし達になにかあったら、ナノハナがやることに一応なっているんだけどね」
「そうなんだね。そうだ、馬車ってどうやって手に入れるの?」
「馬車ほしいのかい?」
「ううん、今回乗ってく馬車を入手しないとと思って」
「ああ、それなら気にしなくていいよ。あたしの馬車を使おう。仮にも女王だからね、いい馬車と馬を持ってるんだよ」
「ふふ、うめちゃんはこう見えて馬車や魔道自動車のコレクターなのよ」
「おお~、我輩も乗り物大好きなんだ」
「うん! わたしも好き!」
「へえ、じゃあ2人のお眼鏡にかなうような、とびっきりの馬車と馬を用意しようかね」
「おお~!」
「うん、わたしもいい馬車に乗ってみたい!」
「そうだ、御者はどうするの?」
「御者もこちらで用意するよ」
「なにからなにまでありがとう」
「若人が気にすることじゃないよ。あたしはこんな外見だけど、1000年以上軽く生きているんだからね」
「1000年以上なんだ~、すごい長生きだね」
「ふふふ、うめちゃんってば、随分さば読んでな~い?」
「うるさいよさくら。1000年以上であることに変わりないでしょ」
どうやらこれはもっと上っぽい。でも、今着ている毛皮を着て、メイクンのある宇宙に来てからは、20年ちょっとしか生きていないぴぴ達だが、猫の国でも記憶の消えないのが猫達の特徴である。猫の国でちょうのんびりしていた期間をいれると、ぴぴ達は丸の数がまったく違うレベルでだらだら過ごしていた。う~ん、まあ、内緒にしておこう。ハピはともかく、ぴぴもぷうも女の子だ、ぴちぴちの20歳でいいではないか! いや、猫で20歳はぴちぴちではないかもしれないが、地球の猫と違ってメイクンの猫は長生きなので、ぴちぴちなのだ。
「それじゃあ、明後日の朝出発でいいのかな?」
「ああ、そうさね。そうしよう。王城の馬車置き場はわかるかい?」
「うん、猫トラックバージョン3がとめてあるところだよね」
「そういえばあのかわいい猫の魔道自動車が止まっていたね。じゃあ、明後日、朝ご飯食べたら馬車置き場に集合でいいかい?」
「うん! そうだ、ご飯とかはいっぱい持ってるから、心配しないで」
「そうかい? でも、あたしも伊達に長生きしてないからね、あたしの収納魔法にもいろいろ美味しいものが入っているから、そこはみんなで楽しく食べながら行こうじゃないか」
「うん、そうだね。楽しみにしてるね」
「うん、わたしも!」
「私も~」
こうして、4人でのんびりと旅行しながら、旧王都へ行くことが決まるのだった。




