ナノハナへの報告
旧王都への行き方を教えてもらおうと、ハピはさくらに会いに行くことにした。が、部屋を出て1秒でさっそくピンチに陥る。そもそもさくらとは食堂であったことがあるだけなので、どこにいるのかわからない。いや、グラジオラス達の話ではどうやら現在の女王様らしいし、どうやってあえばいいのかわからない。
「う~ん、どうしよう。アオイも家に帰っちゃってるしな~。訓練場のほうに行けば、グラジオラス達に出会えるかな?」
ハピは誰も聞いていないと思って、独り言を言いながらとりあえず訓練場へと向かっていく。
わっがっはい~は猫である♪ ふふん♪ チーズを求めるねっこである♪ ふふん♪
そのまま調子にのって歌いながら訓練場へと向かう。すると案の定グラジオラス達を見つけた。というか、見つかった。
「あ、ハピだ~。今日は何してるの?」
「あ、みんな。ちょうど良かった、3人を探してたんだ」
「あら、そうですのね」
「なんだ? ハピから用事なんてめずらしいじゃん」
「うん、ほらナノハナに呼ばれてたでしょ? それに、みんなと集めた草や果物を持って、旧王都に行こうと思ってるんだけど、さくらに会いたくて」
「そうなんだ、じゃあ一緒に行こう。あたし達もナノハナのところにいくとこなの。さくら様のとこにはその後案内してあげるよ」
「ありがとう!」
「じゃあ、れっつご~」
「お~!」
3人に案内されてナノハナの部屋まで行く。
「そういえば、なんで我輩がいるってわかったの?」
「だって、ハピの歌が聞こえたし」
「ええ、独特な歌なのですぐわかりましたわ」
「ああ、前回のときもそうだぜ。馬車置き場でなんか聞こえるな~っておもっていったら、お前がいたんだよ」
あうっ、どうやら全部聞かれていたようだ。1人でこっそり歌っている予定だったので、けっして上手に歌っていたわけではないので、ちょっとはずかしい。いや、全力で歌えば人に聞かせられるほど上手かと言われると、それはそれで答えに困窮してしまうのだが。
ハピが恥ずかしさに打ちひしがれていると、ナノハナの執務室に到着した。
「ナノハナ~、きたぜ~」
「きったよ~!」
「失礼しますわ」
「はいるね~」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりましたわ。どうぞおかけ下さい」
「美味しいお茶とお菓子を頼むよ~」
「ええ、シクラメンの好みのお菓子を用意致しましたわ」
ハピ達はとりあえずお茶とお菓子をいただいて軽くくつろぐ。
「では、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ~」
「ではまず、今回の戦果になるのですが、モンスターに関しては、すでにこちらに渡していただいたビッグヘッドランドドラゴン1匹と、巨大な未知のドラゴンの1匹、合計2匹でよろしいでしょうか?」
「ああ、倒したモンスターはその2匹だけだな」
「うん、そうだよ~」
「ええ、ですがどちらも倒したのは私達ではなく、ハピさんが1人で倒したものですわ。・・・・・・え~と、ぴぴぷちゃ号もハピさんの戦力でいいですわよね?」
「う~ん、ちょっと微妙だけど、まあいいかな」
「では、なるほど、では大量の果物は採取物ということでしょうか?」
「うん、巨木の森や未知の惑星で取った果物だね。ぶどう、かき、くりなんかが巨木の森で、りんごとかみかんが未知の惑星で採取したものだよ」
「ありがとうございます。では、存在していたモンスターもあの2種類だけでしょうか?」
「ううん、それは違うよ。倒したのはあの2匹だけだったけど、草食の大人しいモンスターもいっぱいいたよ」
「そうそう、モンスターって凶暴なのばっかだと思ったんだけど、草食モンスターはけっこうかわいかったよね~」
「ああ、巨木の森とか凶悪なイメージしかなかったが、肉食のやつ以外はぜんぜん怖くないな」
「ええ、特に子供はかわいらしかったですわ。また果物をあげたいものですわね」
「え~っと、グラジオラスの話からすると、モンスターの子供に果物をあげたのですか?」
「ああ、首が長くてキリンみたいなやつがいてな。まだちびっこで果物まで首が届きそうになかったから、俺達で食いもんあげたんだぜ」
「うん、かわいかったよね~」
「まさか、シクラメンまであげたのですか?」
「あ、ひっど~い、まるであたしが食べ物を独占する、食いしん坊みたいな言い方に聞こえるんだけど~?」
「そういうわけではないのですわ。ごめんなさいね」
「じと~」
「こほん、では、お話の続きをさせてくださいね。草食モンスターでは、肉食モンスターに太刀打ちできないほど、肉食モンスターは強かったのでしょうか?」
「う~んとね、巨木の森の頭でっかちドラゴンはそうでもないかな。今回持ってきたやつなんかは、解体した時に気づいたかもしれないけど、体にけっこうな攻撃跡があったとおもうんだ。我輩が攻撃したのは、頭の一発だけだから、他は草食モンスター達の攻撃だよ」
「なるほど、私も解体には立ち会いましたが、頭の一撃以外はハピさんの攻撃じゃないのですね」
「うん、でも、未知の惑星のほうは無理だね。完全にあの巨大ドラゴンのほうが大きかったし、草食モンスター達の勝ち目はないと思う」
「そうですか。では、今回の巨大モンスターがこちらに来る可能性はあると思いますか?」
「それはないと思うよ。我輩達が転移した不思議な実は、そんなに大きくなかったから、頭でっかち恐竜ですら、通れないサイズだったよね」
「ええ、そうですわね。大きさとしては、せいぜい10mくらいの大きさが限界ではないでしょうか? それに、仮にこれたとしても、魔力量の差でこちらの世界に興味を示すとは思えませんわ。巨木の森と比較しても、自然界の魔力の豊富さは桁違いでしたので」
「ああ、俺もそう思う。ただ、魔力自体はもれてたみたいだからな。巨木の森でも、不思議な木の周辺では木が馬鹿でかくなってたぜ」
「うん、一番まずい可能性を考察するとしたら、向こうのモンスターがこっちにくるっていうよりは、こっちに漏れている魔力の影響で、こっちで向こうクラスのモンスターが生まれるか、あるいはこっちのモンスターがその魔力に当てられて強くなっちゃうかっていうところじゃないかな」
「ええ、いまはまだ向こうの魔力の影響下にある場所は、警戒しているのかこちらのモンスターが侵入した気配は感じませんでしたが、すでに影響下にある木々は通常の巨木の森のものよりも巨大になっており、巨大な実をつけておりましたわ」
「だから、可能性としては、その実を食ったこっちの草食モンスターが強くなる可能性が一番高いな。もちろん草食モンスターだから脅威度は低いし、パワーアップした草食モンスターなら頭でっかちにも負けないだろうが、問題は寿命で死んだあとだな。死んだ後に肉を食べられて、肉食モンスターが強くなったらまずいかも知れねえ」
この3人、なんだかんだいいながら優秀なのかもしれない。一緒に居るときは楽しそうにうきうきしてるだけなのに、見るところはちゃんと見てるし、報告もハピが口を挟む必要がある場所なんてどこにもない。
「なるほど、由々しき自体ですわね。それからもう1つ、あの巨大ドラゴンはどうやって仕留めたのでしょうか?」
「それはぴぴぷちゃ号で攻撃したの」
「ぴぴぷちゃ号、ですか?」
「うん、我輩達がこの星に来るのに使った宇宙船」
「なるほど、それを見せていただくわけにはいきませんか?」
「う~ん、メイクンでの使用は禁止されてるの。今回はメイクンじゃない場所だったから使っちゃったけどね」
「そうですか、残念ですが、それではしかたありませんね」
「攻撃力を見たいだけなら、ぴぴに頼もうか? 巨大ドラゴンを切り裂いた攻撃くらい、ぴぴなら簡単に再現して見せてくれると思うよ」
「そうですか、では今度頼んでみますね」
「うん」
「あとは3人がなにやらすさまじいパワーアップをしているように見えるのですが、それは特訓をされたのですか? 報告では、食べすぎで苦しんでいると書かれていたと思うのですが」
「ふっふ~ん、やっぱわかる~?」
「やっぱ強くなってるんだな」
「ええ、実感はわかなかったですが、やはりそうでしたのね」
「実感なかったの? 大きい果物運んだり、パワーアップしてるように思ったけど」
「そういうのとはレベルが違うのですわ」
「でもよ、特訓はしてないよな。せいぜい農作業くらいだな。基本は食い物のせいで強くなっただけだぜ」
「そうなのですか? それにしては、強くなりすぎではないでしょうか?」
「あれ? 巨大ドラゴンのお肉はハピが持ってきたっていってたし、こっちのみんなも強くなってるんじゃないの?」
「いえ、多少のパワーアップはしましたが、それはビッグヘッドランドドラゴンのお肉よりも、更に魔力量が豊富で、回復速度が速いので特訓がはかどるという意味ですね」
「そうなんですの? 私達の場合は、お肉を食べただけで、魔力過多状態に陥り、その状態がず~っと続いていたのですわ」
「ああ、実際魔力を消費したり体になじませるのに時間が掛かってたんだよな。食べすぎで動けないってのはシクラメンだけだぜ」
「え~、でも食べすぎで動けないのは事実だったでしょ。だから、報告書にはたべすぎって書いただけだよ」
「ですが、こちらではそこまでの変化はありませんでした。そもそも通常ですと、命の危機にいたるような過剰な魔力は吸収されずに体外に放出されるでしょう?」
「言われてみればそうだな。なんかそれ以外の要因があったのかもな」
「あるとすれば、環境くらいでしょうか?」
「ですが、それだけでは弱いのではないでしょうか? なにか特殊なものを食べませんでしたか?」
「う~ん、でも、他には思いつかないよね。そもそも我輩はまったく無事だったし」
「うん、ぜんぜん思いつかないね」
「そうですか、では、3人には今度訓練場で力を見せてもらってもいいですか?」
「うん、それはかまわないよ」
「おう、なんならナノハナ相手でもいいぜ!」
「ええ、どんとこいですわ!」
「では、楽しみにしていますわね」
こうして、ナノハナへの報告会は終わった。次はさくらに会って、旧王都への行き方の確認だ!




