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みんなの帰還

 ぴぴはギルドへ、ぷうは山へ、ハピは森へと出かけて数ヶ月、ついに王都へと帰還する時がやってきた。


 随分と予定より時間が掛かってしまったが、それはハピと一緒にでかけた妖精トリオ、とりわけシクラメンが悪い。未知の惑星で食べた巨大ドラゴン料理のせいで、魔力過多状態に陥った妖精トリオだったが、1週間経過しても治まる気配がなかった。そのため、その時点ですでに1月以内での帰還が困難になっていた。


 まあそれは仕方ない。だが、魔力過多状態の際には飲食睡眠不要とはいえ、1週間もの間飲まず食わずという状況に、食いしん坊のシクラメンの精神状態がおかしなことになってしまった。そのため、結局ご飯もデザートもおやつもきっちりと食べるようになり、魔力過多状態が長期間にわたり続いた。猫トラックバージョン2には魔力豊富な恐竜やボス牛料理のほかにも、料理長に作ってもらった普通の食事も入っていたので、普通の食事を取ればまだよかったのかもしれないが、シクラメンはこの未知の惑星の、魔力豊富で美味しい果物のとりこにすでになっていた。そのため、魔力過多状態のところにダメ押しといわんばかりに大量の魔力を摂取し続けた。そして、目の前でシクラメンが美味しそうにご飯を食べる姿を見て、グラジオラスとローズが我慢できるはずもなく、結局みんなでご飯を食べた結果、魔力過多状態が治まるのに非常に長い時間が掛かってしまった。


 そのためなかなか帰れなくなってしまったハピだったが、ぴぴとぷうへの連絡はばっちりだ。なにせ未知の惑星に行った事で、ぴぴぷちゃ号を自由に使えるようになったのだ。ハピはルールに接触しない範囲内でぴぴぷちゃ号を思いっきり使うことにした。


 連絡するだけなら簡単だったが、ハピは単独での帰還を決行した。当初の予定より時間が掛かることを説明するだけじゃなく、未知の惑星産の果物やお肉も持ち帰りたかったし、なにより、ぴぴとぷうに会いたかった。猫好きのハピとしては、数ヶ月もぴぴぷう成分を補給できないのは、それこそ死活問題だった。そして、4人で相談した結果考え出された作戦が、ダイレクトリターン作戦である。作戦の内容はこうだ。はるか上空に浮かぶ惑星メイクンにある妖精の国目掛けて、ぴぴぷちゃ号に投げてもらうという作戦だ。


 打ち上げはぴぴぷちゃ号のパワーなら問題ないとして、問題は大気圏突入と着陸だが、そこは魔力を垂れ流し続けているシクラメンに妖精ゴーレムを作ってもらった。巨大ドラゴンとの戦闘時には妖精ゴーレムは飛べるように進化していたので、ダイレクトリターン作戦に使っても問題ないだろうという結論に至った。


 さっそく作戦は実行に移された。シクラメンの巨大妖精ゴーレムが猫トラックバージョン2を抱え、そんな妖精ゴーレムをぴぴぷちゃ号が尻尾でやさしく包み込む。そして、尻尾をぶんっと振るうと、妖精ゴーレムが飛び出した。最初の狙いは、ぴぴの居る王都だ。


 ぴぴと出会い、用事をすませたハピは、今度はぷうのところに行く。1度ぴぴぷちゃ号へと戻って再度メイクンに投げる作戦だ。未知の惑星のぴぴぷちゃ号まで戻る方法も、ダイレクトリターン作戦には含まれて居るが、その作戦もなかなか豪快だ。宇宙まで出てくることが出来れば、現在絶賛フリー中のミニぴぴぷちゃ号に回収してもらえばいいため、難しいのは宇宙に出ることであったが、そこはぴぴに宇宙まで運んでもらう。ぴぴは猫トラックバージョン2を抱えた巨大妖精ゴーレムの首に噛み付いたあと、ジャンプ1発で楽々宇宙まで飛んで見せた。実にシンプルな方法だ。


 そして今度は、ぷうのところへ投擲だ。ぷうのところでも用事を済ませると、再び宇宙に運んでもらう。ただ、その方法がユニークで男心をくすぐるものだった。ぷうは猫トラックバージョン2に大気圏脱出用のロケットモードと、再度メイクンへくるとき用のスペースシャトルモードを追加してくれたのだ。


 ちなみに妖精トリオの帰還は見送られた。妖精トリオの魔法の規模が、妖精の国の中や周辺で撃つには威力が高すぎたこともあるが、なにより3人にとっては、王都に帰ってくるよりも、メイクンでは使えないぴぴぷちゃ号の内部のほうが都合がいい可能性が高かったからだ。なにせ3人が元気になるということは、ハピにとって都合がいいことである。そのため、猫にとって都合のいい空間の広がるぴぴぷちゃ号内部のほうが、いろいろと良さそうだったのだ。




 妖精トリオも落ち着いて、ハピ達4人が帰ろうとしているころ、ぷう達5人も王都目指して出発していた。巨大ガブガミガメの討伐はすでに終わっており、残りは普通に修行をしていた。本来なら1月の予定だったが、食料などは多めに持っていっていたし、ハピが途中で現れて追加の食料を置いていったことで、結局ず~っと修行しっぱなしになっていた。



 なんだかんだいろいろあったものの、ぴぴ、ぷう、ハピの3人は、王都の王城の3人の部屋状態になっている来賓室へと戻ってきた。他のみんなもそれぞれのお家へと帰っていっていた。修行もしたし、美味しいものも入手したし、当分は休養だ。


「ただいま~」

「「おかえり~」」

「あれ、我輩が最後だったか~」

「ハピの居たところが一番遠かったからね、しょうがないよ」

「だね~、わたしの居たところは、帰りはアオイ達でも1日で帰れる距離だったから。でもこうして3人で会うのも、久しぶりだよね~」

「うん、3日ぶりかな?」

「そうだね、そのくらいかな」


 ダイレクトリターン作戦で、ぷうに猫トラックバージョン2にロケット機能をつけてもらってて以降、ハピはただ3人が魔法を撃つのを見るのにも、一人で収穫するのにも飽きてきたため、結構頻繁に王都まで帰ってきていた。そして、ぴぴもぷうも流石に休日を取ったりしていたため、ちょこちょこ王都であっていた。なので、数ヶ月ぶりの感動の再会とはならなかった。


「しばらくぴぴもぷうも休養だよね?」

「うん、今度ギルマス達の強さを見てあげて、結構強くなったと思うんだ」

「それなら、アオイ、カリン、ピヨ、エリカだって強くなったんだよ~」

「そうなんだ~。我輩のほうはシクラメンが食べすぎで大変だっただけだからな~」

「でもハピが持ってきてくれたお肉と果物、すっごい美味しかったよ」

「うん、お肉も果物も、メイクンに来てから食べたご飯の中だとダントツで美味しかったよね。料理長も早速いろいろ料理研究してるから、今日は久しぶりに食堂にいこ」

「うん。あの巨大ドラゴンのお肉を、料理長がどう料理するのか、我輩もすごい気になる」

「だね!」

「私は試作品を何度か食べさせてもらったけど、すっごい美味しかったよ」

「いいな~」


 王都に居たぴぴは、ぷうとハピに先駆けて、わんこ大臣やギルマス達と先に料理長の美味しい巨大ドラゴン料理を何度か食べていた。また、巨大ドラゴンの解体はすでに終わっている。ぴぴ達3人は解体なんて出来ないため、グラジオラスに手紙を書いてもらって、全部ナノハナにやってもらったわけではあるが・・・・・・。


「ぷうの方もそんなに強くなったのなら、休暇中にみんなで遊びたいね」

「うん、それでね。カリンが言うには、腕試しにちょうどいいイベントがあるんだって」

「「イベント?」」

「うん、なんと1月後に、バトル大会があるらしいの」

「バトル大会か~、わんこ大臣やギルマスも出ないかな~」

「聞いてみたいよね。アオイ達はみんな腕試しに出場するらしいよ」

「ぴぴとぷうはどうするの? 参加する~?」

「ん~、わたしとぴぴは出るなってアオイとカリンから言われてるんだよね。ハピは出てもいいかもよ」

「絶対にいや。それより、バトル大会まで1月もあるし、やりたいことも特にないなら、旧王都に行ってみない? チーズ作りの依頼をしてきたいんだ」

「そうだね。女王様やお姫様のためにも、チーズは絶対にはずせないから、1月後のバトル大会までは旧王都へ行くのもいいかもね」

「うん、そうだね。わたしも賛成」

「それじゃあ、さくらに行き方とか聞いてくるね。休養もしたいし、出発は1週間後でいいかな?」

「ううん、3日後くらいでいいよ」

「そうだね、わたしもあんまり疲れてないし、旧王都はモンスターも弱いのしかいないみたいだから、旅行気分でまったり行きたいかな。わたし、馬車とか魔道自動車とかにも、乗ってみたかったんだよね」

「なるほど~、馬車か~、我輩も馬車でのんびり旅行とかもあこがれるかも。よし、じゃあ、3日後くらい出発で、手配してくるね」

「「うん」」


 こうして3人は、バトル大会までの1月の間に、美味しいチーズ作りを依頼するため、旧王都へまったり旅行へ行くことにするのだった。




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