巨大ガブガミガメ討伐作戦、敗退
エリカはふらふらと飛行しながら、アオイの羽根の先端部分が舞っているところに行こうとしていた。アオイの魔力の残滓が、そこにしかなかったから。せめてそれだけでも、収納魔法で確保したかった。だがそれはピヨが止める。アオイが攻撃を受けた場所は霧がない場所だからだ。
「エリカ、ダメだよ。撤収するよ」
「あ・・・・・・」
妖精族の羽は魔力の結晶だ。本体から離れれば短時間で消えてしまう。アオイの羽根の先端は、2人の前で消えていった。動かない2人を見て、カリンは撤退を促すために光魔法の乗った矢を飛ばし、上空で強烈な光を発生させる。
巨大ガブガミガメはそれ以上の追撃はしてこなかった。首を振ってぶんぶんすれば、ピヨやエリカにも攻撃できたかもしれないが、それはなかった。魔力のチャージがもともと1秒分しかなかったのか、霧に隠れた2人への追撃は無駄が多いと思ったのか、あるいは自身に重症を負わせた強敵に、隙を見せまいと考えたのかは定かではないが、とりあえず2人は無事だった。
「エリカ、いくよ」
茫然自失のエリカを、ピヨは爪で掴んで強引に連れて帰る。カリンと合流し、拠点に戻る。話をするものは、だれもいない。ハンターは死にやすい職業と思われるかもしれないが、そんなことはない。ハンターは無茶な戦いを普通挑まないから。勝てるモンスターを確実に狩りながら、強くなり、上を目指すのがハンターだ。勝てないモンスターと戦う必要など無い。そうならないように情報収集をするし、そのためにギルドがある。運悪く出会ってしまっても、逃げればいい。無理に戦って死ぬよりも、逃げて情報を持ち帰るほうがはるかに大切なのだから。そのため、ハンターの死亡率はそこまで高いわけではなかった。その上、カリンはともかく、ピヨとエリカは元々2人組みでやってきた。仲間を失う経験は、したことが無かった。
拠点に戻り、重い雰囲気のまま扉を開けて中に入る。
「あれ、撤収しちゃったのか? くっそ~、回復したらリベンジしたかったんだがな」
そこには、元気にもりもり食事をするアオイと、横でご飯を収納魔法からせっせと出すぷうの姿があった。
「え、なんで?」
「・・・・・・」
「あ、あ、うわ~ん!」
ピヨとカリンは動揺しているようだったが、エリカは泣き出すと思いっきりアオイに抱きついた。その速度はもはや突進といってもいい。なんなら巨大ガブガミガメから逃げるとき以上に速い。
「ぐふっ、おいおい、どうしたんだよ」
「だって、だっで、死んじゃったかと思って、えぐっ」
「はあ? 死ぬわけねえだろ。ぷうの泥鎧なんだと思ってんだよ。あの10倍の威力だって防ぎきれるだろうぜ。なあ?」
「むう、そんなに弱くないよ。100倍だって余裕だよ!」
「では、どうして私をかばったのですか?」
「そりゃあれよ、泥かぶったときに、邪魔だからって俺達羽消してただろ? だから、羽根は持ってかれると思ってな。いくら本物の肉体じゃないとはいえ、命の魔力で出来てるから、羽壊れるとちょっと痛いからな」
「んだよも~、やられたのかと思って心配したよ」
「ええ、人騒がせですね」
「でも、無事でよかったです」
ピヨとカリンは呆れ顔だが、エリカは満面の笑みだ。
「ってことはなんだ。アオイはあの時、上空に吹っ飛ばされてただけってことか?」
「ああ。もっとも、ある一定の高度で止まってたみたいだがな。そのあとはぷうの泥鎧が、ゴーレムみたいに動き出して、ここに連れてこられた」
「アオイ羽失っちゃったし、羽の復活には魔力をけっこう消費するって聞いたから、ご飯食べて回復したほうがいいかなって思ったの」
「なにはともあれ、ご無事でなによりです」
「はい」
「そうだね」
「悪いな。心配かせさせちまったようだな」
「では、この後はどうしましょうか?」
「ん? 今度は羽にもちゃんと泥つけて、もう一回戦えばいいんじゃねえのか?」
「ぷうさん、いまのままでは、ぷうさんの泥鎧の恩恵を受けてただ闇雲に攻撃するだけになる気が致します。ここは1度、特訓して下さいませんか? ギルマス達のように。みなさんもいいですか?」
「わたしはかまわないよ~」
「俺もいいぜ!」
「私もです」
「ああ、あたしもいいぜ!」
「ん~っと、ぴぴがギルマス達とやってる方法でいいのかな?」
「ええ、かまいません」
「おう、どんな方法か知らないが、どんとこいや!」
「私はできれば、どんな方法か知りたいです」
「ああ、あたしも知りたいかな」
「たしか、ギルマスは最短で強くしてくれってぴぴに言ってたから、ぴぴも結構ハードなメニュー考えてたんだ」
「へえ、どんな内容なんだい?」
「んとね」
ぷうは説明した。手っ取り早く魔力体の重要な要素である、最大魔力量、瞬間最大量、操作技術を鍛えるためにぴぴが考案したハードメニューを。
「「「「・・・・・・」」」」
みんなドン引きのようだ。
「説明は以上かな。ピヨとエリカはどうする~? カリンとアオイはこのメニューで良いみたいだけど、一緒のメニューでいい?」
「「え・・・・・・」」
「えと」
「あ~、ん~っと」
カリンもアオイも、ここまで無茶なメニューだとは想像していなかった。24時間不眠、ご飯後の消化吸収の回復速度しだいだが、数分に1度死に掛ける。もはやそれは特訓なのだろうか。回復が間に合う以上確かに効果はあるだろう。だからって、この内容で1月は精神的に辛すぎる。
「な、なかなかひでえメニューだな」
「やっぱりそうなの? ぴぴが最短でやる方法をいろいろ考えてたんだけど、この方法でも、例えばバトル2分、ご飯と消化吸収で2分とすると、実際のバトル時間は、半分しかないんだよね。やっぱこの程度じゃ満足しないか~。ぴぴ、ギルマス達がこれで満足するか、結構心配してたんだよね。大丈夫かな~」
「いやいや逆だ逆。ハードすぎる。ここまでハードじゃなくていいよ。それに、いくら魔力が豊富な食材があっても、俺の実力じゃあ、飯後に消化吸収促進魔法使っても、2分で回復は無理だ。せめて30分はないと回復しきらねえよ」
「そこは私の魔法でフォローしてあげるよ」
「う~ん、どうする?」
「私はアオイ様の希望通りでかまいません」
「ああ、あたしもだ。割り込んだのはあたし達だからな」
「私としては、1度受けてみたいですね。ギルマスと同じメニューというのも、気になりますから、厳しそうだったら、変更しましょう」
「そうだな。うし、とりあえずギルマス方式で頼むぜ!」
「うん、わかった! たぶんだけど、特訓の成果はギルマス達より出るはずだよ」
「お、そうなのか?」
「うん、ギルマス達のほうがもとが強いっていうのもあるけど、ギルマス達って、話をする限りちょっと年だよね?」
「ええ、そうですね。まあ、それは私もですが」
「あう、カリン、ごめんね。それにプラスして、この環境が良いとおもうの」
「なるほど、周囲の自然魔力が来い場所ほど、呼吸による魔力回復とかがしやすいっていうもんな」
「うん、それに加えて、あの巨大ガブガミガメほどの魔力をみんな持っていないってことは、巨大ガブガミガメのいるここの外部環境はみんなにとって各上ということになるから、魔力体が強くなろうと必死になるはずなの。だから、王都で特訓してるギルマス達より、強くなりやすいはずだよ!」
「そうだな、うっしゃ、やるかあ!」
「じゃあ、最初はみんな一緒にやろっか」
「「おう!」」
「「はい!」」
みんなで外に出て特訓開始だ。巨大ガブガミガメはあえての放置である。理由は、巨大ガブガミガメがいたほうが、本能的な危機感を感じてより強くなりやすそうだからだ。ぷうはアオイ、カリン、ピヨ、エリカと対峙する。もちろんぷうとカリンは地上で、アオイ、ピヨ、エリカは上空で。そして特訓が開始された。やり方はぴぴと同じなので、猫パンチ猫パンチ猫パンチ猫パンチ猫パンチ噛み付き、猫パンチ猫パンチ猫パンチ噛み付き、猫パンチ噛み付き猫パンチ猫パンチ猫パンチ、ひたすら2分間の猫パンチだ。
4人はピンボールの球ように空中でぷうの猫パンチを食らう。ときどき噛み付きが混じるのは、まあ、ぷうだからだ。2分後、4人はボロボロになっていた。怪我はぷうの回復魔法で治して、ぷうの補助魔法を受けながらご飯を食べて消化吸収の促進魔法を使用する。
「ぴぴがギルマス達にしている特訓は、こんなかんじかな。これを続ければ良いかな?」
「「「「・・・・・・」」」」
良いか悪いかでいえば、よくは無い。でも強くもなりたいという葛藤が4人の中にあった。しばし無言になる4人だったが、アオイがおもむろに口を開く。
「いや、待ってくれ、ぷう。これはダメだ。ダメすぎる。説明を聞いた以上にだめだ。これは無理だ。確かにこれなら魔力体の強化は出来そうだがよ。これ、魔力体を鍛えるだけのトレーニングだよな? いや、もちろんそれが重要なのもわかってるんだけどよ。ここに来る間みたいな、もっとこう、実践的なトレーニングにしないか?」
「この特訓は、魔力体特化のトレーニングメニューだね。ギルマス達はぴぴに、自分を鍛えてくれって言ってたけど、実際には、ギルド所属のハンターや、軍人を鍛える際の参考にしたかったみたいなの。そもそも、ぴぴとギルマスは同じ猫科で戦い方も似てるから、いろいろな細かい戦い方を突き詰めたりできるかもしれないけど、わんこ大臣達は、戦い方まったくちがうからね。だから、最終的にギルドのハンターや、軍人を鍛えるってことを考えると、全員に共有できそうなトレーニングは、魔力体トレーニングかな~って思ったみたいだよ」
「ギルマスにわんこ大臣、それにクロ将軍まで、そんなこと考えてたのかよ」
「ギルマス達の思惑は、駄々漏れだったのですね。ですが、それをわかっていて、教えて下さるのですか?」
「うん、妖精の国のハンターや軍人が強くなれば、より美味しいご飯の素材が集まりやすくなるでしょ? わたし達3人で全部の食材を集めるのはけっこうハードだし。だから、わたし達としても、こっちの都合だから、気にしないで」
「うん、お前らも大概だな」
「そういうことなら、ありがたく受けさせていただきます」
「うん、気にしないで~。でも確かに、アオイの言うとおりだね。ギルマスやわんこ大臣達が、ぴぴに徹底的に魔力トレーニングの仕方は教わってるはずだから、わたし達は実践的なトレーニングにしよ~。魔力体も戦い方も、全部鍛えよう!」
「「「「お~!」」」」
「じゃあ、みんながどうしたいのかの話し合いからだね」
というわけで特訓内容を決める作戦会議だ。司会はカリンだ。
「では、まずは皆さんが鍛えたいことを洗い出しましょう」
「俺はやっぱり遠距離での戦いだな。今回の巨大ガブガミガメとの戦いでわかったが、敵の強力な遠距離攻撃をかわせる速度、回避しにくい技を受けるシールド、安全な距離からでも十分なダメージを出せる攻撃、俺にはどれもたりねえ。近距離戦に関しては、距離を取れる技や、距離を取れるスピードがあればいいかな」
「私もアオイと同意見ですね」
「あたしは遠距離攻撃っていうよりも、近距離や中距離で戦いたいかな。強襲からのヒットアンドアウェイがあたしの持ち味だからね」
「私もアオイ様と基本的には同じことを鍛えたいです。ですが、攻撃よりも強化や妨害といった、補助技を鍛えたいです。ずっとピヨと組んでいますが、私達の狩りは、私がサポート役でピヨが攻撃役という役割分担で行っていましたので」
「では、次の議題はこれらを鍛えるにはどうすればよいのか、ということですね」
みんなでどうやったらそれらを両立できるか考える。子一時間考えて、ついにいいアイデアが出た。あんまり悩んでいてもしょうがないので、修正点があったらそのつど変更することにして、早速特訓開始だ。特訓はみんな同時に行う。みんな単独での戦闘もできるが、連携を取った戦闘だってできるメンバーなので、同時にやりたいということになった。
「準備いい~? いっくよ~」
「「「「こい!」」」」
ぷうは土魔法でゴーレムを次々に作り出す。まずは毎度おなじみの身長3mの頭でっかちゴブリンゴーレム3体だ。いちおう今回の特訓における、ボスモンスターという設定だ。アオイ達は可能ならこの3体の撃破を目指すというわけだ。装備はみんな共通で、バカでっかい大砲みたいなものを装備し、背中にもごちゃごちゃといろいろなものを背負っている。恐らく意味は無い、かっこ良さそうというだけだろう。他には大量の猫科の動物の土ゴーレムだ。猫、山猫、ヒョウ、ジャガー、ライオン、チーター、トラなどなど、種類も量も豊富だ。しかも、パワー型、防御型、スピード型など、性能もばらばらだ。
そして、次々と猫科の動物のゴーレムがアオイ達に襲い掛かる。アオイ達は空を飛んでいるわけだが、この猫科のゴーレム達は、空も走れるのだ。足の裏に空間魔法を発動させて、足場にしたい位置で空間に固定する。そして固定した空間魔法を蹴ると同時に固定を解除して進む。これを連続で繰り返すことで、空を自由に駆け回れる。
アオイ達はそれぞれ迎撃を開始する。まずアオイは両手で氷魔法を使い、左右の手で別々の猫科の動物のゴーレムに攻撃していく。
「オラオラオラオラオッラア!」
だが、ぷうの猫科の動物のゴーレムはそう簡単に壊れない。簡単に壊れちゃったら特訓にならないからと、ぷうはそこそこの強度を持たせていた。
「げ、かってえ」
猫科の動物のゴーレムの速度は速い、恐らくアオイの全力飛翔以上の速度だ。アオイは距離を詰められる前に全力で逃げ出す。もちろんただ逃げるだけじゃない。逃げながら迎撃だ。
「けっこうはええな、これでもくらえってんだよ!」
だが、猫科の動物のゴーレム達は数も多い上に速い。とても迎撃しきれるものではなかった。次第に距離を詰められると、1体の猫科の動物のゴーレムがアオイの足に噛み付こうとする。
「ちいっ」
咄嗟にバリアを張って防ぐものの、バランスを崩してスピードが落ちたところに、猫科の動物のゴーレムが群がってくる。
「こんのおおお! フリージング、エクスプロージョン!」
アオイの体を中心とした氷属性の爆発が起きる。その威力と凍りつかせる爆風のおかげで、1時的に猫科の動物のゴーレム達との距離が開くかに思われた。だが、猫科の動物のゴーレムの中でも大柄な、トラの猫科の動物のゴーレムにはまったく効果が無かった。そしてアオイは、そのまま噛み付かれた。
「いってえええええええええ!」
その頃カリンも必死に戦っていた。カリンは自身の連射性能が低いことはわかっている。まずは爆発魔法を乗せた矢で様子見だ。これで猫科の動物のゴーレムが倒れたり怯んだりしてくれたらいいのだが、やはりそうはいかなかったようだ。ぷうの猫科の動物のゴーレム達はまるで気にした様子もなく突っ込んでくる。カリンは走りながら次々に弓を放つ。流石に矢の刺さったゴーレムは動きが悪くなるようだが、土ゴーレムというだけのことはあって、すぐに矢を抜いて復活してくる。しかも、どんどん数も多くなる。
(これはまた、面倒な相手ですね)
弓では間に合わないと、判断し植物魔法を駆使して妨害をはかる。地面から短い竹や棘のある植物をはやす、4人の中で一番足の遅いカリンの必死の抵抗だった。だが、猫科の動物のゴーレムはそんなものお構いなしに突っ込んでくる。そして、追いついたカリンのつるの鎧ケンタウロスバージョンの後ろ足に、次々と猫科の動物のゴーレムが飛び掛り、噛み付く。すると重さのせいもあってどんどん速度が遅くなる。カリンは植物魔法を駆使してケンタウロスの体をロデオのように暴れさせ、振りほどこうとする。だが、まるでふりほどけない。そうこうしているうちに、カリンは周囲を猫科の動物のゴーレムに完全に囲まれた。
(ここまでですか・・・・・・)
カリンは弓をすて、矢を2本、左右の手で構えると、最後の悪あがきの接近戦を仕掛けたが、あえなく猫科の動物のゴーレムに、全身を噛まれた。
ピヨもアオイ同様に最初こそフレイムアローで迎撃を試みたが、妖精族のアオイでも効果が薄かった魔法攻撃が、ぷうの猫科の動物のゴーレムに通用するはずが無かった。
「くっ、硬いねえ」
ピヨは距離を取ることにする。距離を取って上をとり、敵の集団の端からちまちまとヒットアンドアウェイで削るしかないと思ったからだ。かぜを纏い、加速する。だが、ぷうの猫科の動物のゴーレム達はいっこうに振り切れない。それどころか容易く追いついてきて噛み付き攻撃を仕掛けてくる。バリアや急旋回などでこれを回避するが、いつまで経っても距離が取れない。
(これは燃費悪いんだけど、しかたないか)
「フレイムジェットバード!」
1度距離を取って上空を確保できれば、位置エネルギー的に有利になれるはず。あとは急降下から攻撃アンド離脱を繰り返せば勝てる。そう考え、切り札の火の鳥で一気に急上昇する。だが、速度ゆえに小回りが気か無そうと判断したのか、ぷうの猫科の動物のゴーレムはそんなピヨの火の鳥をあっさり追い抜き、行く手を阻むかのように正面に回りこんだ。
「なっ、こんのおおおお!」
ピヨは一瞬同様したものの、即座に爪に炎の魔法を纏わせた技で、猫科の動物のゴーレムに襲い掛かる。猫科の動物のゴーレムはそんなピヨの炎の爪に合わせるように噛み付いた。ピヨの炎の爪は猫科の動物のゴーレムの腹を捕らえたが、自身も猫科の動物のゴーレムに脚を噛まれた。
「ぐうう」
痛みに耐えて振り払おうとするが、ぷうの猫科の動物のゴーレムのパワーが見た目より高くて剥がせない。そんな攻防の間にも、どんどん他の猫科の動物のゴーレムが追いついてくるが、錘をつけた状態では速く飛ぶことも難しい。ピヨも周囲を猫科の動物のゴーレムに囲まれ、一斉に襲い掛かられて、噛み付かれた。
「うわあああああ!」
エリカは他のみんなとは違い、最初から全力で逃げながらの戦闘を選択していた。
「高粘度水!」
エリカは逃げながら攻撃魔法ではなく、水属性の妨害魔法を使う。短杖を優雅に振り回し、的確に猫科の動物のゴーレムの移動経路に魔法を置いていく。使っているのは粘度の高い水魔法だ。恐らく当たるとべとべとして、様々な動きが阻害されるのだろう。だがこの手の魔法はただ当てるだけでいい攻撃魔法とは違い、当たった後も魔力供給を続けないといけないなど、使い勝手はそこまで良くなかったはずだ。恐らく、魔力制御能力には自信があるのだろう。
ぷうの猫科の動物のゴーレムはときにエリカの攻撃をかわし、ときにあえて突っ込んでパワーで強引にうちやぶる。
「すさまじいパワーですね」
最大魔力量、瞬間的に使える魔力量、飛行速度、すべてに置いてエリカはアオイより低いはずだが、立ち回りが上手い。一番逃げれている。エリカは逃げながら次々と高粘度水を作り出し、自身の周りに浮かべながら、接近してくるぷうの猫科の動物のゴーレムの動きを的確に妨害していく。だが、飛行速度そのものは遅いエリカである。足の速い猫科の動物のゴーレムに先回りをされ、取り囲まれる。こうなってはもう逃げ出すのは難しい。必死に水魔法で妨害をするが、パワーのある猫科の動物のゴーレムが追いついてきて、強引に突破しに来る。パワータイプの猫科の動物のゴーレムは、水魔法による妨害を受けてなお、エリカに迫って来る。これを押さえ込むには、エリカのパワーが足りない。完全にエリカの力負けであった。接近された猫科の動物のゴーレム達を吹き飛ばせるほどの出力の魔法の使えないエリカは、なすすべなくがぶがぶされるのだった。
4人全員が倒されたことでひとまず休憩だ。回復魔法で怪我を治し、魔力豊富な恐竜料理を食べて、消化吸収を助ける魔法で無理やり魔力の回復をはかる。消化吸収には10分以上かかりそうだ。
「特訓、どうだったかな? いいかんじ?」
「ああ、いい感じだったと思うぞ。だが、ぜってえこの訓練中に、頭のでかいゴブリン倒してやるぜ」
「はい、私もフォローします」
「アオイ殿、1体はあたしに譲ってくれよ」
「ふふふ、では、1体は私がもらいましょう」
「わたしのゴブリンゴーレム達は、そう簡単にやられないんだからね」
「じゃあ、回復したらもう一線だな!」
「ああ」
「「はい!」」
(そういえば、大砲撃つの忘れちゃったっけ)
不意の遠距離攻撃への防御の練習用にいいかと思って、ゴブリンゴーレム達に巨大な対空砲をもたせていたことを、すっかり忘れていたぷうであった。




