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ガブガミガメ掃討作戦

 今日はついに巨大亀こと、ガブガミガメと戦う日だ。まずは朝食後にカリン主導による作戦会議が開かれる。


「さて、みなさん、ガブガミガメ討伐のための作戦会議を開きます」

「「「「はい!」」」」

「基本的には巨大ガブガミガメとの戦いがメインですが、普通のガブガミガメも一掃します。これは、間引きの意味ももちろんあるのですが、普通のガブガミガメも雑食のため、私達を襲ってくる可能性があるからです。巨大ガブガミガメとの戦闘中は、巻き込まれることを嫌って、参戦してこない可能性が高いですが、巨大ガブガミガメの討伐は、数日から数週間かかる予定です。放っておいて、巨大ガブガミガメの討伐に向かう際や、この拠点に戻ってくる際にちょっかいを出されるのも不愉快ですので、出来るだけ狩りますよ。」

「「「「はい!」」」」

「次にガブガミガメの探し方です。ガブガミガメは水中に住む亀で、水が綺麗で上空から簡単に見えるような場所よりも、泥の中ですとか、沈水木がある場所を好みます。ですので、湖の中でも、綺麗な場所にはいないと思ってください。湖の底に泥のある場所や、沈水木などがある場所に隠れられると、探索は困難になりますが、直接見つける必要はありません。それらしい場所を発見したら、爆発魔法でも叩き込んで、追い出してから倒しましょう。私とぷうさんは湖畔から、アオイ、ピヨさん、エリカさんは空中から捜索をお願いします。捜索時の注意点は、ガブガミガメはその名の通り、噛み付いてきます。しかも、見かけより移動速度は速く、首も延びるため、油断していると簡単に噛まれます。なので、必ず高度を取って捜索して下さい。いいですね?」

「「「「はい!」」」」

「もし万が一巨大ガブガミガメ発見時は、すぐに距離を取って、上空に光魔法を放って下さい。光を確認し次第集合するため、下を見てガブガミガメを倒しながらも、上空にも注意を払ってくださいね。そして、合流出来次第攻撃を開始します。普通のガブガミガメの掃除はついでみたいなものなので、巨大ガブガミガメがいたら、そちらを優先しましょう。合流時、私は空を飛べないため、一番近い湖畔にいるかと思いますので、それも頭に入れて置いてください」

「「「「はい!」」」」

「そして、ここからが一番重要なことになります。合流後の戦いの際は、何があってもガブガミガメから距離を取って下さい。先ほども言ったように、ガブガミガメは、その見た目と異なり、足も速く、首も長いです。そしてその口からは、水属性のブレスを放ってきます。ですので、絶対に遠距離攻撃に徹して下さい。ピヨさんは近接攻撃をしたいかと思いますが、近接攻撃をする場合は、必ずぷうさんのフォローの元で、尻尾の付け根付近の甲羅を狙って下さい。頭側半分くらいは、首が伸びてくるリスクがあります。あとは、ガブガミガメは、普通の亀よりも甲羅の面積が狭く、頭、手足、尻尾などが、甲羅に納まりきれていないことも多いです。ですので、そこを狙えば亀としては防御力は高くないのですが、あえて甲羅しか攻撃しません。今回のガブガミガメは通常よりかなり大きく、ランクも高いと思われます。想定外の攻撃が来る可能性もありますので、絶対に油断しないようにして下さい。最後に、ガブガミガメの生命力は極めて強力です。普通のガブガミガメでさえ、死後数時間は尻尾や手が動くことがあるそうです。倒した後も油断しないように注意してください。わかりましたか?」

「「「「はい!」」」」

「あとぷうさん、先ほどから一緒に返事をなさっておりますが、ぷうさんの役目は私達のフォローと、巨大ガブガミガメとの戦闘中に、他のガブガミガメに乱入されないように、周辺の掃除ですからね。お願いしますよ?」

「はい!」

「最後に、この地域の特有の気象現象として、夕霧がすごいです。この湖自体は標高1000mもないのですが、周囲の山がそれなりの標高のためか、かなり濃い夕霧が毎日のように発生します。ですので、戦闘が出来るのは夕霧のでない午前中が勝負になります。巨大ガブガミガメがどの辺りにいるのかにもよりますが、1時には撤収したいと思います。万が一戦闘中や撤収中に霧が濃くなってくると、かなり危険ですので、絶対に守って下さい」

「「「「はい!」」」」

「午後の霧が出て戦えない時間は、午前中の反省会や、技の練習時間に当てましょう。では、まずは通常のガブガミガメを掃討しながら、巨大ガブガミガメを捜索しましょう。ガブガミガメとの戦闘経験がない方は、普通のガブガミガメの動きも多少参考にしてみて下さい。ただし、参考までに留めて下さい。強力な個体ほど、特殊な動作をしてくるものですので」

「「「「はい!」」」」

「では、準備かいいですね? 外に出ますよ」

「「「「はい!」」」」


 ぷう達は拠点の家を出てまずは普通の亀を探す。家を出た一行をまず迎えたのは、昨日の夕方は霧でよく見えなかった、巨大な湖だ。すごく大きく、水も綺麗だ。周囲を囲む山の緑と、空の青、そして湖の青のという色合いもなかなかいい。一行はしばし景色を楽しむ。とはいえ、花より団子のぷうと、花よりバトルな一行は、景色を楽しむというよりも、どの方面に誰が行くかだとか、どの辺に亀がいそうかといった話しかしなかったが。


「それでは、作戦開始です」

「「「「お~!」」」」


 アオイ、ピヨ、エリカは空から、ぷうとカリンは地上から探す。カリンはこの3日でつるの鎧ケンタウロスバージョンを完璧に使いこなせるようになっていた。いまも弓と矢を持ちながら湖畔をパカラパカラと走る。そして、ガブガミガメが潜んでいそうな場所を見つけると、爆発魔法を乗せた矢を放ち、ガブガミガメを追い出していく。住処を爆破されたガブガミガメは、あわてて逃げようとするも、カリンの矢は正確無比だ。比較的浅瀬だったこともあり、あっさりとガブガミガメの甲羅を貫いた。


 爆発魔法を水中に放って索敵なんてしたら、その爆発だけでガブガミガメを倒せそうな気がするが、そう上手くもいかなかった。物理現象としては、空中よりも水中のほうが爆発の衝撃波は強く伝わりやすい。それは、空中では空気の流動性が高いがために、並みの爆発では空気に衝撃波を吸収されてしまうが、水中では、水の流動性が悪いために、水は衝撃波を空気中ほど吸収しない。そのため、衝撃波によるダメージは空中よりはるかに高くなる。特に生き物の場合、呼吸器官等の弱い部分にまで攻撃が及ぶため、大きな被害をこうむりやすいのだ。


 だがメイクンでは、魔力体や身体強化魔法のせいで、単純な物理現象の威力だけではモンスターにダメージを与えにくい。魔力が乗っていない攻撃は、銃ですら下位のモンスターにしか効かないくらいだ。そのため、攻撃の際に発生したおまけの衝撃では、頑丈なガブガミガメには大したダメージを与えられないのだ。もちろん、爆風にすら魔力を乗せる爆発魔法でならダメージは与えられるが、その手の爆発魔法は威力が分散しやすいため、魔力効率が悪いのだ。



 一方、アオイ、ピヨ、エリカは、持ち場を分けて上空からの索敵だ。上空からだと見やすいのだろう。次から次へと3人から魔法が湖面に撃ちこまれる。アオイはガブガミガメが居そうな場所に、水球と大岩を次々に放り込んでいる。最初に水魔法で、一時的に住処の上の水をどけて、そこに先端の尖った岩をたくさん撃ちこむというコンボでガブガミガメを順調に仕留めていた。水の大部分はどけているものの、泥水までは完全に除去できているわけではないため、本当にそこに居たのかはわからないのではあるが、岩が綺麗に地面にぷすぷす突き刺さっているため、いたなら倒せているだろう。


 ピヨとエリカは連携攻撃で仕留めていた。エリカがアオイ同様に水魔法でガブガミガメが居そうな場所の水を一時的にどかし、ピヨのファイアアローで仕留める。アオイ同様、こちらも正確な居場所はわからないので、適当な間隔での無差別攻撃だ。1人連携の出来るアオイもすごいが、完璧な連携で次々と仕留めていくピヨとエリカもなかなかだ。単純な討伐速度ではアオイの倍以上の速度で狩っているようだ。


 一見順調な狩りだが、これに危機感を覚えた猫がいた。そう、ぷうだ。猫先生から亀はおいしいという話を聞かされたことがあったため、ぷうはたくさん持って帰ろうとしていた。巨大ガブガミガメがいるじゃんって思うかもしれないが、普通サイズのガブガミガメも試してみたいのが食いしん坊の思考回路だ。しかもこのガブガミガメ、めったに市場に出回らないらしい。そのため、牛モンスターと違って、普通サイズだからいつでも食べれるというものではない。理由としてはなんといっても地理的条件が悪すぎることだ。王都や港街といった主要都市から遠い上に、主要街道からも外れている。実際にぷう達も、平原を駆け、森を抜け、山を1つ越えてきた。今回は移動時の練習の邪魔になるからとぷうがさくっと倒してしまったが、本来であればこの道中でさえ、モンスターも結構多かった。そして、ここにたどり着くのが大変なら、帰るのはもっと大変だ。ガブガミガメはランクが低いものだと5m以下の個体もいるが、ここまで来るほどのハンターなら、もっと高ランクのガブガミガメを倒したいと思うのが普通だろう。実際10m越えはそんなにめずらしくない。20m越えすら稀にいる。だが、そいつらを倒しても、持って帰るのが至難の技だ。というわけで、牛モンスターとは違い、ガブガミガメを好んで狩るハンターは少ないんだそうだ。


 じゃあ、モンスターが増えすぎないようにする間引きはどうするのかといえば、軍隊の出番なんだそうだ。軍隊が定期的に狩るのなら、市場に素材が出回りそうなものなのだが、軍隊のガブガミガメの狩り方は、アオイよりもっと杜撰なやり方のようだ。グラジオラスのような大火力派と呼ばれる、軍の中でも高火力命な妖精を揃えて連れてきて、みんなで大岩を落としまくったり、ひどいときには毒小隊と呼ばれる、毒魔法が得意な小隊に、湖丸ごと汚染させるという方法すら取るようだ。


 とんでもない環境破壊だが、メイクンでは、自然の強い復元力によって、割とあっさり元通りになる。ちなみに今回ぷう達が狩りに失敗すると、軍が動く予定になっている。それは、この湖が妖精の国の大動脈であるフラワーリバーの支流にあり、ガブガミガメが溢れた場合、フラワーリバーに向かうと考えられたからだ。そこでカリンはこの話をいち早く察知して、自分達の修行のために軍から仕事を奪ってきたようだ。


 そのためぷうは、お肉を回収する気さえない4人の狩りに危機感を覚えた。


(このままじゃ、わたしのお肉がなくなっちゃう!)


 ぷうはちょっと本気で狩りをすることにした。ガブガミガメが潜んでいる場所は主に泥の中だ。そして泥というのは、水と土で出来ている。つまり、土魔法が得意なぷうにとっては、かなり都合のいい自分のフィールドなのだ。


 湖底に魔力を流し込んでいく。ぷうの土の魔力は地面を伝ってどんどん湖底に広がっていく。そして、湖底一面を自らの魔力で覆ったあと、今度は徐々にその魔力を浮上させる。そうすれば水中をも通って水の中の泥の動きまで感知できる。そして、泥や砂利、礫が、不自然な形で存在していない場所こそ、ガブガミガメのいる場所だ。しかもガブガミガメは、どんなにがんばっても尻尾が甲羅に入らない構造になっている。そのため、大体の頭の位置すらわかる。こうなればやることはただ1つだ。湖中にいる全てのガブガミガメの頭目掛けて、地面から鋭い土槍を発生させる。


(あとは収納魔法にしまってっと。うん、完璧。大漁だね)


 湖底に広げた自分の魔力を通じて、収納魔法を発動する。超大漁の釣果に、ぷうは大満足だ。だがここで、ぷうはふと、あることに気が付いた。


(まずい、巨大なやつまで倒しちゃったかも・・・・・・)


 ぷうはあわてて収納魔法の中身を確認する。すると。


(入ってた! これは、ピンチだ。大ピンチだ。大ピンチ過ぎる。どうしようどうしようどうしよう)


 アオイ達はまだ気づいていない。なにせアオイ達の狩りは無差別攻撃だ。倒した確認をしているわけではないので、普通のガブガミガメが居なくなったことに、まだ気づいていないだろう。


(とりあえず巨大ガブガミガメを元の場所に戻して、回復魔法。効いて~!)


 なんとかばれないように巨大ガブガミガメの復活を願う。巨大ガブガミガメの頭に刺さってた土の槍をどかし、懸命に回復魔法をかける。モンスターも基本的な体の構造は一緒だ。命の魔力により体が作られ、魔力体という魔法の体と、絡み合うように2つ一緒に存在している。完全に死んでいる場合、魔力体の一部が自然に返ろうとするはずだが、この巨大ガブガミガメはまだそうなっていない。ぷうは命の魔力を強化する回復魔法をがんばってかける。亀は生命力が強い生き物だ。死んでも数時間くらいはぴくぴく動いたりするくらいに。だから、なんとかなるだ。


 奇跡は起こった。巨大ガブガミガメはなんとか命を吹き返したようだ。流石ガブガミガメ、すごいぞガブガミガメ!



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