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グルメツアーの成果

 ぴぴとぷうにまさかの4対1で、2連敗するという現実に愕然とする女王様達であったが、たまたま居合わせて見学していた猫達に慰められていた。


「まあまあ女王様、たった4匹で強化しまくりのぴぴとぷうに挑むこと自体が勇敢さの表れだって」

「そうそう、全能力2倍にしたって話だし、そんな強化されてたら、4匹じゃ勝てっこないって」


 なぐさめの声に女王様も返事をする。


「ぐすっ、たったの2倍強化されてるだけの相手に、こっちは4匹で負けたんですよ」

「いやいや、全能力2倍の相手には10匹いたってきついんだって。俺らもあいつらにはよくやられるから知ってる」

「ぐすっ、そうなの?」

「ああ、なにせ何でもかんでも2倍にしてくるからな、相当厄介だぜ。攻撃力や防御力だけが2倍とかならまだいいんだが、スピードも2倍になるせいで、向こうは回避し放題、おまけに攻撃も平然とこちらの2倍くらいしてくるしな。しかもだぜ、そんな状況なのにCPの量だけじゃなく、効率まであがるのか、息切れすらしねえ。あれは割りとまじでどうにもなんねえぜ。索敵能力も上がるのか、不意打ちも難しいし、そもそも隠蔽能力もあがるせいで、こっちが不意打ちくらうしな。相当上手くやんないと勝てないぜ」

「ぐすっ、確かにそうね。みなさんは勝った事がありますの?」

「おう、あるぞ、10対1とか、圧倒的にこっちが有利な条件でなら、だけどな」

「そうなのですね」


 女王様も少しは気分が晴れてきたようである。さらに別の猫もなぐさめる。ここで一気になだめてしまおうというわけだ。


「そうそう、それに女王様の諸国漫遊のグルメツアーも、悪いこととは誰も思ってないと思うよ。だって、女王様達が新しいグルメを見つけてくれるたびに、私達に紹介して食べさせてくれるから、みんなの食事のレパートリーが増えたわけだしね」

「ですが、私自身の好物探しという1面も強いわよ」

「それこそ100%みんなのために動くなんて、ありえないでしょ。自分のやりたいことをやりつつ、みんなのためになる。それで十分じゃない」

「ふう、そうね、わかったわ。もう完全復活よ!」


 女王様はそういうと元気いっぱいになったようだった。猫岳の猫おそるべしである。ぴぴ達とは違い完璧なフォローができている。女王様以外にも、お姫様と将軍も別の猫たちになぐさめられて、元気になっているようである。猫先生だけは流石の精神力で、落ち込んだ様子すら一切なく、ぴぴ達と感想を言いあっていた。


「ぴぴよ、1回戦目でわしらの攻撃を防いだとき、大爆発が起きたようじゃが、なにをしたんじゃ?」

「火の爪で思いっきり引っかいただけだよ。遠距離攻撃は、距離を飛ばすための持続と発射の速度にCPを結構使うでしょ。だから、技と技のぶつかり合いでは、近接攻撃のほうが有利だからね。タイミングを間違えると思いっきり当たっちゃうけど、私の火の爪の場合射程を伸ばせるから、技をぶつけるタイミングがそこまでシビアじゃないんだ。おまけに、ハピの強化のおかげで射程と威力に余裕まであったからね」

「なるほどのう、ちなみにもしもあの攻撃が2個ではなく、4個だったらどうじゃった?」

「ん~、あんまり変わんないかも、全部火の爪で迎撃してもいいし、全部避けてもいいし、その時の気分次第しだいかな。選択肢としてはあんまりないけど、そもそも防御も2倍だからね。当たっても、そこまでダメージは受けないから、強引に突撃もできるかな」

「なるほどのう、やはり2倍のパワーアップは脅威じゃのう。単純なパワーだけで押し込まれるとはのう。しかも、お主今回、2倍の速さはつかってないじゃろ?」

「うん、パワーだけ使った」

「ふう、まさかこんなに差がつくとはのう。あっぱれじゃ」

「ありがと、猫先生」


 ぴぴはほめられて上機嫌だ。


「して、ぷうよ、お主はどうやってあの岩石の雨の中接近したのじゃ、あの中を突き進んだら、おぬしもけっこうなダメージになるじゃろ?」

「土の鎧みたいなのを着てたのは見てくれた?」

「うむ」

「あれ、一応ちゃんとした防具なんだ~。それでね、中小の岩石は、あれを着てればほとんどノーダメージになるような大きさにしてあったの。だから、大きいのの位置だけ確認して、普通に走って行っただけだよ。あそこまで土ぼこりが舞うと、土の鎧はいいカモフラージュになるしね」

「なるほどのう、広範囲高密度攻撃と思わせて、実際には自身にとって脅威度の高い攻撃は一部じゃったというわけか」

「うん、わたしと同様防御力に長けた猫将軍は、同じように大きな岩以外は無視してたしね。なのであの攻撃は、わたしより防御力が低い敵には大規模範囲攻撃だけど、わたしと同等以上の防御力の敵には、散発的な範囲攻撃ってかんじになるの」

「なるほどのう、わしらの中で、ぷうレベルの防御力をもっているのは将軍だけ。たしかにわしらには有効な攻撃じゃな。岩の中に変な鉱石みたいなのをいれて、テレパスを妨害したのも作戦じゃろうか?」

「うん、そうだよ。猫先生達がバラけたらテレパスを妨害して1匹づつしとめようかと思ってね」

「なかなかいい戦術じゃのう。仮にわしらが密集陣形をとっておったら、小規模か中規模の範囲攻撃で一網打尽といったところか?」

「もちろん!」

「なるほどのう、流石ぷうじゃ」

「ありがとう。でも、猫先生達はハピの強化込みのわたし達とは、あんまり戦ったことなかったから、しょうがないんじゃないかな」

「っほっほっほ、確かにのう。今日は完敗じゃったが、次は負けんぞ」

「うん、楽しみにしてるね」


 猫先生に戦術面でほめられて、ぷうは満足げだ。


 そして、元気になった女王様は、ハピに勝負を申し込んだ。


「ハピ、私とやりましょう」

「うん、いいよ」

「あら、めずらしい、簡単に了承するなんて」

「さっきのバトルをみてたら、思うところがあってね」

「ふふふ、ハピにも猫として、戦いを求める血が流れてたのね」

「じゃあ、舞台にいこっか」

「ええ、いいわ」


 そして向かい合う2匹。普段戦わないハピと最近いなかった女王様の対戦というレアカードなだけに、他の猫達も観戦モードだ。


「ハピと戦うのは、ものすごいひさしぶりかしら?」

「そうだね、前に戦ったのは、覚えていないくらい昔だね。たぶん我輩が負けたんだろうけど、今回は勝たせてもらうよ」

「ふふふ、私も本気でいかせてもらうわよ」


 お互いに軽く挑発しあい、バトルが開始される。


 バトル開始と同時に、ハピが猫ならみんな使える基礎的な身体強化技をかけて全力で突進する。ハピには遠距離攻撃がないため、接近できなきゃ始まらないのである。そしてその速度は、少なくとも戦えないと思っていたみんなを驚かせるくらいには速かった。なにせハピの基礎的な身体強化+ハピ猫グッズによる強化から繰り出される速度は、他の猫の繰り出す基礎的な身体強化+オリジナル強化技と同じくらいの効果があったのだから。しかもハピは巨体だ。機敏な動きはともかく、まっすぐ走るだけなら十分速かった。


「おお、ハピって以外と速いんだな」

「ああ、将軍は知らなかったのか? あいつ、バトルにはあんまり参加しないんだけど、追いかけっことかは地味に速いんだぜ。俺もお風呂に入れるとか言われて、盛大な追いかけっこの果てにつかまって入れられたことがあるからな」


 猫将軍と猫岳常連の猫が楽しそうに会話している。どちらも真剣な目だ。さきほどの戦いは、ハピはなにもしていないし、女王様もその実力を発揮できたとは言えなかった。そのため、この戦いで女王様とハピの実力を測ってやろうと、みんな割りとまじめに観戦していた。


 女王様は宣言どおり開幕から全身に雷をまとい、本気モードだ。そして、突っ込んでくるハピ目掛けてサンダーアローを連射する。


「あたるか~!」


 ハピはそう宣言して、華麗に左右にステップしてサンダーアローを回避する。が、実際にはハピがステップを繰り出したのは、サンダーアローが軽く10本ほど突き刺さってからだった。


「あだだだだだだっ、でも、まだまだ~」


 サンダーアローが刺さって痛かったようであるが、まだまだ突進を継続する。女王様も立て続けにサンダーアローを撃ちまくる。このサンダーアロー、女王様は中心に細い金属を仕込んで発射している。なぜそんな真似ができるかと言うと、別に土系のCP技が苦手じゃないからだ。明確に嫌いでもないかぎり、どんな属性の技でも使用できる。ましてや得意属性の補助ができる属性技は、鍛えるのが当然だった。そのため、大技を確実に当てるため、避雷針代わりに細い金属を使うのだった。


「あ、逃げるなんてずるいよ」

「近距離攻撃手段しかもってない相手に、距離をとるのは当然です」


 そして、オリジナルの雷を身にまとう強化技を使った女王様の足の速さは、ハピの足の速さといい勝負であった。つまり、いつまで走っても、女王様のもとにたどり着けず、いつのまにかハリネズミのようになっているハピであった。しかし、それでもハピは走り続ける。猫グッズ系の技は、基本的には強化回復が得意な、命の属性に分類されるだけのことはあって、流石の耐久力であった。しかし、女王様も途中からはサンダーアローより、もっと強力な電気技を逃げながら浴びせ続けた。避雷針効果により回避も出来なくなったハピは、ついに耐え切れなくなるのであった。


「みぎゃっ・・・・・・」


 プスプス・・・・・・


「・・・・・・なにもできなかった・・・・・・」


 流石になにもできずに、ちょっと落ち込むハピなのであった。




 そしてこの後は久しぶりに帰ってきた女王様達を交えて、いろいろなバトルをみんなで楽しむのだった。猫岳の条件設定でハピの強化を無効化した上での1対1のバトルをしたり、ここに集まっている猫達24匹VSぴぴぷうチームで戦ったりと、いろいろ無茶な条件で戦った。


 ちなみにハピの強化なしの1対1は総当りで行われたが、やはりぴぴとぷうは強かった。とはいえ、この猫岳に来ている猫達の基本スペックはほとんどかわらないため、あそこでああすればよかった、とか、ああされたらまずかったかも、といった名勝負が繰り広げられていた。


 そして、24匹VSぴぴぷうハピの戦いも行われた。先ほどの対女王様戦でぼろぼろにも負けたハピも、リベンジに燃えていた。そして・・・・・・


「ぴぴさん、ぷうさん。懲らしめてやりなさい!」


 ハピのなりふり構わぬ超強化と、ぴぴとぷうのがんばりにより、恐るべきことにぴぴ達のチームが勝利を収めた。ハピはバトル開始前の強化で力尽き、バトル開始時にはすでにくたばっていたため、バトル中の出来事は一切覚えていなかったようであるが、結果だけ聞き、大喜びだ。

 一方で女王様達は、素直に負けを認め、次回のリベンジを心に誓うのであった。




 一通りバトルを楽しんだ後は、女王様達のグルメツアーの報告会である。グルメツアーで知った新しい料理をご飯皿を利用して再現する。


「並べられているお皿には、今回のグルメツアーで新たに知ったささまざまな料理を再現しています。みなさん、存分に食べて飲んでください」


 女王様の開会のあいさつで大宴会が始まるのだった。


「あ、これおいしい」

「へ~、このミルクも上手いな、随分濃厚だけど、どこのなんのミルクなんだろう?」

「いや、こっちの酒も悪くないぞ。ちょっと度数がきついが、甘くて飲みやすい」


 あちらこちらであがる絶賛の声、もう女王様達も諸国漫遊の修行の旅とかいわず、グルメツアーと普通に言っていた。そして、ぴぴ達は女王様達と一緒にご飯を食べていた。


「流石女王様達だね、どれもおいしいね」

「うん」

「わたしこれ好き~」


 ハピ、ぴぴ、ぷうも大満足なようだ。地球以外の食材なのだろう、ハピも見たことも無いような様々な魚や肉などが大量にならんでいる。


「もし気に入ったのがいれば言ってね。それ専用のご飯皿作るから、もっと美味しく食べれるよ」

「「うん!」」

「っほっほっほ、ではわしはさっそくこの酒の皿を頼もうかのう」

「あ、ずるいぞ先生、俺はこの肉のやつたのむ」

「わたくしはこのチーズをお願いします」


 猫先生と猫将軍、お姫様は旅の途中からすでにお気に入りがあったようである。


「女王様達のグルメツアー、大成功だね!」

「本当は諸国漫遊修行の旅ですけどね」


 ぴぴの言葉に少し恥ずかしそうに答える女王様。


「どっちでもいいと思うな。確かに女王様達がいろいろな修行をして、新しい技とかを教えてくれるのも楽しいけど、こうやって新しいグルメを広げてくれるのも楽しいよ」

「そうね、その通りかもね」

「私もだけど、みんな基本的に、縄張りから出ようとしないからね。あっちこっち出かけて、いろいろ教えてくれる女王様達にはきっとみんな感謝してるよ」

「ふふふ、そうね。ありがとう。ぴぴ」


 こうして、大宴会は夜更けまで続いていくのであった。




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