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パーティー会議

 ボス牛のお肉でみんなでランチをした翌日、今後の予定を決めることにした。え、いままでは予定があったの? って聞かれるとちょっとつらい。メイクンに来てからというものの、妖精の国に行く途中、ゴブリンと恐竜を寄り道して狩って、妖精の国に来てからの初ハンティングが先日のボス牛だ。よくよく考えると完全ノープランな3人であった。だが、アオイも仲間になったし、きちんと予定を立てねばと考えたのである。


「では、パーティー会議を開始します。まず、今回の議題は、今後何をするかです。正直、メイクンに来てこれまで、行き当たりばったりで動いてきました。ですが、アオイも仲間になったことですし、今後は予定をある程度決めて動きたいと思います。では、まずは今後の予定を決める前に、現状の把握をしたいと思います。ハピ君、簡潔にまとめて下さい」


 ぴぴが議事進行役となってパーティー会議は進んでいく。どうやら今日はこのノリでいきたいようだ。


「はい、我輩から現状報告をします。まず、今回のミッションは狩りモンスターを倒すこと、美味しいものを探すことです。モンスターを狩ることに関しては、恐竜の戦果をもってミッションクリアです。これはわんこ大臣から言われています。次に、美味しいもの探しですが、現状入手しているのは恐竜料理のみです。ですが、ボス牛料理が今後、王城の食堂で順次出てきます。そして、チーズとお酒は発注済み、市販品は集まるでしょう、ですので、最低限の部分はクリアしているかと思います」

「はい、ありがとうございます」

「では次、今後やったらいいんじゃないかということの発表を、アオイ君、発表して下さい」

「え、俺なの? まあ、なんとなくわかるからいいけどよ。やっぱ、美味いもの探しってんなら、ちょっとラインナップが弱いだろ。各地の名産品もないしな。王城の上級食堂は確かに美味いが、屋台料理や普通のレストランにだって、美味いものはたくさんあるんだぜ。お前ら好物が魚料理にカレーだろ。レパートリーはそこらへんの店のほうが豊富だぜ。それに、魚料理に関しちゃ、王都より港街のほうがいろいろあるぜ。後はお前らほど強けりゃ、もっと他の☆8モンスター狩ったりして、より美味い食材探しってのもありだろ」

「なるほど、いいアイデアですね。じゃあぷう君、他にもありますか?」

「はい、この国の人が強くなるのに協力するのもありだと思います。アオイの言う料理などはすべてこの国の軍やハンターは取ったものが中心のはずです。ですので、この国の人がより強くなれば、自ずと料理の食材のレベルが上がることを意味します。そうすれば、アオイの言う屋台料理などのレベルも上がる可能性が高いです」

「なるほど、それもいいアイデアですね」

「それは俺らとしてもありがたいが、いいのか?」

「問題ありません。いまのテーマは、いかに効率よく美味しいものを集めるか、ということですので」

「それ、効率いいのか?」

「私達が10年とかしかいないのなら効率悪い集め方なのでしょうが、この毛皮、かなり長生き出来そうなので、3人だけで集めるより案外効率的かもしれません。というか、なにげなく昨日のパーティーで、ギルマス達の特訓に付き合ってあげるって約束しちゃったんだよね。こないだギルマスにちょっと教えてあげたのが、思ったより好評だったみたい」


 もうまじめな会議の議長モードに飽きてきたのか、素が途中で出始めるぴぴであった。


「ぴぴもなんだ。わたしもアオイとカリンの特訓付き合うって約束しちゃった。特訓かねて強いモンスター狩りにいくんだ。カリンに心当たりがあるみたいでね」


 ぴぴがまじめな議長モードを止めるなら、ぷうも付き合う必要も特に無い。ぷうも元の口調で話し出す。


「な~んだ、なら問題ないね。今後の予定も決まったようなものかな?」

「そうだね。ハピはどうするの?」


 ぴぴはギルマス達の特訓、ぷうとアオイはカリンと特訓。ハピだけはまだ予定が決まってない。


「ん~、のんびりしててもいいんだけど、おいしい草の採取に行ってこようかな」

「昨日さくらと話していた件?」

「うん、ちょっと時間かかりそうなのがネックなんだけどね」

「そんなにあせることないよ。あの森はけっこう遠いし、1月くらいかけてのんびり行ってきて」

「うん、わかった」

「それじゃあ、当面の予定はこれで決まりだね。合流は、ハピが1番時間かかりそうだから、ハピが帰ってきたタイミングね。3人はいつ出発するの?」

「準備があるし、他の人の予定も確認しないとだから、明日以降かな」

「だな。カリンやハンター達には今日中に俺が連絡しにいっとくぜ」

「我輩も今日はいろいろ準備しようかな。しばらく出かけてくるから、ぴぴとぷうとアオイのご飯も用意しないとだしね」

「そうだね。私もご飯をたくさんハピに用意してもらわなきゃだから、今日はみんなで準備、明日以降本格稼動だね」

「「「お~!」」」


 こうして、みんなやることが決まった。みんなしてやりたいことがばらばらだが、それは仕方ない。そもそもぴぴ達3人にとって、別行動はよくあることだ。普段から夜寝るときは一緒に寝ていたが、昼間は好き勝手に動く、それがぴぴたちなのだ。アオイは最初こそちょっと戸惑ったが、ボス牛狩りの際、戦闘には同行すらしないハピであったり、戦闘時であっても協力せず、単独で狩りをするぴぴとぷうをみて、こういうものなんだと納得することにしたようだ。






 というわけで、ぴぴは王都ハンターギルド本部に来ていた。目的はもちろんギルマス達との特訓だ。ギルマスとしては、モンスターの時代が来るといわれている今、一刻も早くハンター達の戦力の底上げをしたかった。現にボス牛のような、そこそこ強力なモンスターも現れ始めている。ぴぴ達に直接教官をやってもらえればそれが一番なのだろうが、そういうわけにもいかない。ここはぴぴの特訓を自ら受けて、その教え方や、強さの秘密を探ろうというわけだ。しかも、今までだったら加齢による魔力回復能力の低下という問題があったが、ぴぴ達の持ち込んだ恐竜やボス牛の肉という豊富な魔力を含んだ食材により、その問題も解決した。精力的に動くタイミングは、ぴぴ達がいるいまが最適というわけだ。


 早速ぴぴは訓練場に向かう。ギルマス達と特訓するということで、そこにはギルマスのリオンだけじゃなく、わんこ大臣ことうすき、その側近ブランシュ、アオイの上司クロ将軍も準備万端で待っていた。うすきやブランシュ、クロも特訓を受ける理由は、ギルマスと同じだ。特にクロは自身が現役の妖精の国の将軍でもある。アオイ同様、まだまだ強さに貪欲でもあった。なおこの4人、けっこう前からの知り合いのようである。国の組織である軍やギルドのお偉いさんである、別に不思議では無い。ぴぴにはわんこの年齢もライオンの年齢もよくわからないが、どうやら、うすき、ブランシュ、リオン、クロの順番のようだ。ちなみにカリンはブランシュとリオンの間だそうだ。


「おうぴぴ、受けてくれてありがとよ」

「ほっほっほ、わしらまで悪いのう」

「私までありがとうございます」

「おう、俺もまぜてもらうぜ」

「ううん、気にしないで。私にも利があることだからね」

「そうなのか? まあ、それはどうでもいい。早速はじめようぜ。まずはなにやる?」

「まずはお勉強だね」

「はああ!?」

「リオンや、文句をいうでない」

「だってよ、うすきの爺さん。あ~、勉強かよ」

「確認するけど、最短で強くなる方法でいいんだよね?」

「ああ、もちろんだ」


 さっそくギルマスが勉強を嫌がったが仕方ない。訓練の意味を知っているのとそうでないのとでは、効果が違う。よって、いやでもまずは勉強である。それに、猫科の猛獣であるライオンのギルマスと、わんこであるほかの3人はトレーニングメニューが違うのだ。その辺を勘違いさせないためにも、勉強は必須なのである。というわけで、ギルマスもいやいやながらその場に座り込む、お勉強の始まりだ。


「じゃあまずは、みんな知ってるであろう初歩的なことのおさらいね。じゃあギルマス。手っ取り早く強くなるには、何を鍛えるのが1番でしょうか?」

「そうだな。1番手っ取り早いってことを考えりゃ、魔力体を鍛えることだな。そうすりゃ早い話全能力が大幅にあがるからな」

「はい、正解です。そう、魔力体を鍛えるのが1番です。筋力トレーニングなども無意味ではないですが、魔力体を鍛えることに比べたら効果は薄いです。ライオンであるギルマスの体は猫である私の体よりもはるかに優れた筋肉をもっているけど、身体強化魔法による強化が無ければ、鉄を切り裂くことは出来ないし、槍や銃の攻撃を防ぐこともできません」

「うむ、そうじゃの。身体強化魔法自体は、加算で強くなる分もあれば、乗算で強くなる分もある。筋トレが無意味とはいわないが、それは十分に強力な魔力体があってはじめて意味をなすものじゃの」

「はい、わんこ大臣正解です。もっとも、魔力体と肉体は同時に鍛えることも可能なので、同時に鍛えちゃうのがいいでしょう。では次の問題です。クロ将軍、魔力体の強さの要素とはなんでしょう?」

「ああ、楽勝だな。魔力体の3要素ってやつだろ。魔力体の総容量、1度に使える魔力体の容量。最後に、魔力体を自在に操る技術。この3つだ」

「その通りです。では、ブランシュに問題です。まずは魔力体の総容量をどうやって増やしますか?」

「魔力体の総容量を伸ばすには、魔力をたくさん使うのが一般的ですね。魔力をたくさん使えば使うほど、現在の容量では足りないのではないか、では、大きくしようという反応が体の中で起きると言われています。その他にも自身に不釣合いなほど自然の魔力が濃い場所で生活したり、魔力を大量に含んだ食材を食べることなどでも、外部環境に比べて魔力量が少ないと判断され、大きくなると考えられています」

「その通りです。ですが、魔力の回復のためには当然ですがそれ相応の栄養が必要です。幸いなことにいまは恐竜の肉とボス牛の肉が山ほどありますので、たくさん魔力を使って、たくさん恐竜の肉を食べて、回復しましょう。ついでに恐竜より弱いうちは、体に危機感を持ってもらい、より魔力体を大きくしてもらいましょう。では次、ギルマス、1度に使える魔力体の容量を増やすには、どうしたらいいですか?」

「簡単だ。全力で魔力を使い、体が悲鳴をあげようが強引に魔力を使えばいい。筋トレの筋肉痛と同じだな。魔力体の痛みが治まる頃には、上限も上がってるってわけよ」

「正解です。今回の特訓では私がみんなの限界より強い力で攻撃します。そうすると、限界を引き上げないと死ぬと体が思い、いやでも上がるはずです。じゃあ、最後に、クロ将軍、魔力体の操作技術をあげるにはどうすればいいでしょうか?」

「いや、その前にその特訓やばくないか?」

「こほん! 操作技術をあげるのは、どうしたらいいでしょうか?」

「あ、ああ。魔法を使うときに、魔力の漏れに意識して魔力の無駄が無いようにコントロールするってことだよな?」

「基本的にはそうですが、それだけでは不十分です。じゃあ、わんこ大臣他には?」

「魔力操作には、他にも魔力の圧縮や魔力の操作速度があるからのう。じゃが、鍛え方というと、ひたすら練習するしかないかのう」

「正解です。ですが近道もあります。先ほどの1度に使える魔力容量を上げる訓練の際に、単純な量だけでなく、魔力の高速操作と、高圧縮が出来ないと打ち消したりガードできない攻撃をたくさんまぜます。なので、それにより鍛えられます。圧縮が上手くなれば、無駄は自然と減ります」

「な、なあ、ぴぴよ。それって、俺達を半殺しにして無理やり回復させて、また半殺しにするを繰り返すって聞こえるんだが、違うよな?」


 ギルマスがちょっと情けない声で聞いてくる。ライオンのプライドとやらはどこへ行ったのか。確かにハードなメニューだが、最短で強くなれる方法とわがままを言ったのはギルマスなのだ。だが、ぴぴのそんな思いとは裏腹に、ギルマスは思った。このやり方じゃあ自分は耐えられたとしても、他のハンターに教えられない。同様の問題はわんこ達も感じたようである。しかし、すでに手遅れだ、なにせ。


「遠慮しなくていいよ、恐竜の肉をつかった料理もこんなに用意してもらったからね」


 そう、すでに準備万端整えられていたのだ。いまさら本当は自分の特訓がメインの目的じゃなくて、教え方を見て学ぶつもりだったから、もっと一般向けのメニューでいいなどとは、言えなかった。ちなみにこの大量の料理は、ハピに大量に作ってもらったものだ。1度食べた味の再現はハピのご飯皿の本領発揮ということで、ハピは喜んで大量に作った。そして、ぴぴの収納魔法の中には恐ろしい量の恐竜料理が入っている。それはつまり、ギルマス達の地獄の特訓が、そう簡単に終わらないことを意味していた。


「のう、ぴぴや。わしらも同じ内容なのかの?」

「もちろん」

「わしら、犬じゃよ。おぬしら猫系の動物とはちょっとちがうんじゃが」

「それはわかってるから大丈夫だよ。戦い方が違うこともね。私やギルマスは瞬発力重視なのに対して、わんこ大臣たちは持久力重視だよね。なので今回はあくまでも、魔力体の強化に重点を置いているの。魔力体には普通の筋肉と違って、速筋だとか遅筋とかがないからね、みんな共通の特訓で大丈夫なの。いまのままの魔力だとそもそもいろいろ足りないでしょ。どんなにすごい持久力があっても、モンスターにダメージを与えられないんじゃしょうがないし。一瞬で殺されちゃっても意味が無いでしょ? だから、恐竜の鱗に牙でも爪でも魔法でもいいけど、ダメージを与えられるくらいの攻撃力が得られるまでは、みんな一緒に魔力体の特訓だよ。わかった?」

「「「はい・・・・・・」」」


 わんこ大臣達も、あとには引けないと悟ったようだ。余談ではあるが、肉食動物は狩りのプロである。そして、筋肉の付き方は狩りの仕方によって異なるのだ。動物の筋肉は3種類のタイプがあるといわれ、1つ目が持久力はあるが瞬発力のないタイプ1と呼ばれる筋肉だ。遅筋とか赤筋とも呼ばれている。2つ目が瞬発力はあるが持久力のないタイプ2x。速筋、白筋とも呼ばれている筋肉だ。3つ目が瞬発力がありつつも持久力も持つ、タイプ1とタイプ2xの中間の速筋でタイプ2a、あるいはピンク筋と呼ばれる筋肉だ。そして、猫科の動物は、瞬発力がある筋肉の割合が高く、タイプ2x、タイプ2a、タイプ1の順番で多い。そのため、猫の狩りは隠れて近づき、一瞬の瞬発力で勝負を決する、短期決戦になるのだ。大して、多くのわんこはこの逆であるようである。わんこの狩りは獲物が疲れ果てるまで追い回すスタイルだ。当然重要視されるのは持久力になる。つまり、瞬発力特化のタイプ2xの割合が低く、持久力のある筋肉の割合が高いんだとか。とはいえ、わんこは種類も多いので、すべてに当てはまるわけではないようだが。


 そういった事情も加味して、今回の特訓で鍛えるのは、あくまでも魔力体だ。筋肉に下手に手を出して、持久力の無いわんこになったりしたら、元も子もない。猫は犬になれないし、犬も猫になれないのだから。


「じゃあ、ギルマスの実力は知ってるからいいんだけど、他の3人の実力は知らないから、まずは戦おう。とりあえず3人同時でいいから、かかってきて」


 こうして、ぴぴの特訓が始まるのだった。



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