ボス牛
アオイは全速力でボス牛に飛んでいった。さきほどのボス牛の攻撃で、ほとんど全員戦闘不能になっているだろう。だが、全滅したとは思えない。実際吹っ飛んできた連中は全員生きていた。だとしたら、まだ生きているやつが大勢いる可能性は十分にあった。
(牛の前方に人影? やっぱり生き残りがいやがったのか)
「ぶもおおおお」
「お前は早く怪我人連れて逃げろ、時間は俺が稼ぐ」
「ですが、リーダー、あいつは俺らのことなんて見てないです。一緒に行きましょう!」
「だめだ! あの目はもう違う、俺達を敵としてみている。2人で逃げるのは無理だ」
「ですが!」
「くどい! お前は出来るだけ怪我人抱えてさっさといけ。俺が死んだら、お前がリーダーなんだぞ、弟分たちの面倒をみるのは、お前しかいねえんだよ。わかったか!」
落とし穴の前方にジャンプしたボス牛だったが、そのさらに前にリーダー熊が立ちはだかる。ボス牛はいまだに全身に雷を纏ったまま、臨戦態勢だった。普段は温厚で、肉食ではないものの、敵対するものを生かしておく必要などどこにもない。ボス牛の雰囲気は、もはや温厚な草食動物のそれではなかった。怒り狂ったその姿は、まさに上位のモンスターそのものであった。ハンター達は生きているものも多かったが、このままでは全滅も時間の問題だろう。リーダー熊も満身創痍という言葉が十分当てはまるほどぼろぼろだし、周囲には意識を失ったハンターが多数いた。
そして、ボス牛は、先ほどより1段階強い雷を纏う。ボス牛の攻撃パターンなど知らないが、リーダー熊は本能で察知した。これは周囲にいるものを無差別で攻撃する放電攻撃ではないのかと。いやな予感ほどよく当たるものである。リーダー熊のそのカンはまさに正解だった。このままでは弟分の熊もやられる。そんなことを黙って許せるリーダー熊ではなかった。
「てめえの相手は俺だって、言ってんだろうが!」
リーダー熊がボス牛の鼻に全力で噛み付いた。雷を纏った状態のボス牛に対しての近接攻撃、もはやボロボロのリーダー熊には、雷を纏うボス牛に近づくだけですら命に関わるだろう。だが、そんなリーダー熊の思いが通じたのか、ボス牛は痛がり、仲間への攻撃を中断させることに成功した。そして、顔を振ってリーダー熊を振り払う。ボス牛の防御力からして、ボロボロのリーダー熊の攻撃など、どれだけ力を振り絞ろうとダメージはないはずだが、痛みとダメージは時として別物である。だが、仲間への攻撃を中断したということは、ボス牛の攻撃対象がリーダー熊に向いたということである。
「ぶもおおお!」
角から巨大な雷の球が生み出される。怒ったボス牛の作り出した雷の球は、リーダー熊を殺すには十分すぎる威力だった。最後の力を振り絞り、ボス牛の纏った雷を無視して、攻撃をしたリーダー熊は、すでに瀕死の重傷を負っていた。避けるどころか、腕も足もまともに動かせない。巨大なボス牛の鼻から振り払われ、力なく落下するリーダー熊。そんなリーダー熊目掛けて、雷の球が発射された。
「リーダー!!」
(これはもうダメそうだな。あばよ、俺のかわいい弟分ども)
「あとは、頼んだぜ・・・・・・」
リーダー熊の最後のセリフは声になるかならないかという、か細いものだった。弟分の熊には、聞こえていなかっただろう。リーダー熊の瞳には、かわいい弟分の熊と、猫が写っていた。
「悪いがこいつは俺がもらうぜ! コンプレッションアイスランス!」
そこにアオイが飛び込んできた。アオイはボス牛の雷の球とリーダー熊の間に割ってはいると、勢いそのままに氷の槍を雷の球目掛けて投擲する。ボス牛の攻撃力は☆6ランク下位相当。対するアオイのコンプレッション魔法は、今は☆6ランク相当とはいえ、元☆7ランクのカリンの攻撃をも上回るのだ。本気の攻撃でもないボス牛の雷の球など、容易く打ち砕いた。
「そのまま目に刺され~!」
そして、アオイの氷の槍は勢いそのままにボス牛の右目に突き刺さる。さらに、右目を中心に顔の半分ほどを凍らせた。
「ぶもおおおおお!!!」
いままでハンター達からいろいろ攻撃されたものの、明確にダメージを受けたと呼べるものはほとんどなかった。落とし穴からの総攻撃も、ちょっと怪我しちゃったかなっていうくらいのものだったのに、この小さい羽の生き物は、自分の目を容易く貫いてきた。ボス牛は危機感を感じると共に、激昂した。
だが、アオイとてこの期を逃すようなマネはしない。顔の半分を凍らされ、まだ動揺のおさまらないボス牛を、連続攻撃で一気に仕留めにかかる。
「氷の左手~!」
アオイは巨大な氷の左手を作り出し、氷の槍が刺さって視力が無くなり、視界になった側から思いっきり顔面フックを繰り出す。さらに。
「氷の右手~!」
今度は巨大な氷の右手を作り出し、右フックをいれる。
「おらおらおらおらおらあ!」
ラッシュ、ラッシュ、ラッシュだ!
「これで、どうだあああああ!」
そしてぼこぼこに殴りまくった後、左手でボス牛の右側の角を掴み、右手を抜き手の形にして、思いっきりボス牛の左目に突き刺した。
「ぶもおおおお!」
だがボス牛は両目を潰されたのをものともせずに反撃に出てくる。左右の角にいままではとは比べ物にならない出力の雷が集まってくる。そして、全方位に無差別に放電した。
ばりりりりりりりい!!
すさまじい出力の雷が周囲を襲う。周囲の草木は燃え、球電のような雷由来と思われる自然現象がそこかしこに現れる。アオイはこの攻撃をなんとかバリアでしのいだが、鞭のようにしなる雷に撃たれ、思いっきり弾き飛ばされていた。
ハンター達はもうぴぴとぷうによって救助済みだ。いまはぷうの猫救急車にのってみんなで戦場離脱中だ。ちなみに猫救急車といっているが、猫トラックとの違いは後ろ半分が荷台か、人を乗せるようかどうかだけだ。
「くう~、痛って~。だが、両目見えなきゃ、こっちのもんだってな。思いっきり食らわせてやるぜ、コンプレッションアイスランス!」
目が見えなくても、耳や鼻、魔力感知系の魔法を使うなど、いくらでも外部の情報を調べる方法はある。だが、ほとんどの動物系モンスターは目を非常に重視するのだ。特に、攻撃するときには目をよく使う傾向にある。鼻や耳でも外敵の接近に気づくことは出来ても、目ほど正確な位置情報がわかるわけではないのだ。とはいえ、この世界のモンスターは時間さえかければどんな怪我でも復活してくる怖さがあった。あとはボス牛の目が治る前に、アオイが倒せるかという勝負だ。
アオイは吹き飛ばされたのをこれ幸いと、上空から勢いをつけて氷の矢を持って急降下する。さきほどの一撃はボス牛の雷の球を相殺して威力が落ちていただろうが、今度のは正真正銘フルパーワーコンプレッション魔法だ。狙うは氷の右手で貫いたボス牛の左目。
ヒュイ~ン
どんどん加速していくアオイだったが、突如ボス牛の角から、白い光が立ち込める。そして、その光はボス牛を包み込んだ。その光がなんなのか、アオイはすぐに分かった。そう、回復魔法の光だ。回復魔法自体はそうめずらしい魔法ではない。妖精族ならほぼ全員使えるし、アオイも使える。だが、ハイレベルな回復魔法は別だ。ハイレベルな回復魔法の使い手は、アオイもそんなに多く知らない。だが、ボス牛の使った回復魔法は、よくみるナノハナのそれと同様だった。つまり、ハイレベルな回復魔法だった。
それによりボス牛は視力を完全に取り戻した。だが、すでにアオイは十分加速を得ている。このまま当初の予定通り全力で氷の槍をボス牛の左目に投擲する。ボス牛は咄嗟に目を閉じるものの、アオイの氷の槍は深深と突き刺さり、さらに、ボス牛の顔面の左半分を凍らせた。だが、前回同様致命傷には程遠いようだ。ボス牛は左目がつぶれたのもお構いないに、激昂して反撃に出る。
「ぶもおおおおお!」
ボス牛の角に、強烈な電気がまとわりつく、そして、その2本の立派な角の間に、電気の力が大量に集まってくる。急降下攻撃を終え、急上昇していたアオイだったが、その圧倒的な魔力量にやばいと気づいた。2本の角の間に溜まった圧倒的な魔力は、その圧縮からもれた余波だけでも、先ほどアオイが吹き飛ばされた放電技なみの威力があった。
バチチチチチチ!
十分にチャージされたその一撃は、雷の球としてではなく、雷のビームとしてアオイに襲い掛かった。アオイもすでに十分上空に離れ、距離は取れていたが、ビームのスピードはすさまじく速い。射線から逃れようにも、ボス牛は顔を動かして追尾してくる。そして、アオイの姿がビームの中に消えるのだった。
少し時はさかのぼり、アオイががんばって戦っている最中、ぴぴとぷうの救助活動も順調に進んでいた。
「さて、ぷう、どっち周りで救助する?」
「じゃあ、わたしは左回りにしようかな」
「うん、わかった。この3人どうしよっか?」
「ちょっと待ってね、えい!」
ぷうは土魔法を発動させると、猫救急車が現れた。今回ハンターは全部で18人いるため、全部で21乗りという、かなり大きなサイズになってしまった。
「この中に入れとこう」
「うん、そうだね」
「2人は私が運んでおきますので、他の仲間のこと、よろしくお願いします」
「「うん」」
こうしてぴぴとぷうは走りだした。あっという間にアオイを抜いて走っていく。
「そういえばぴぴ、救助したハンター達はどうやって確保する?」
「収納魔法に入れようと思う」
「生き物が入る収納魔法って、空間系の牢獄魔法?」
「そんなの使ったこと無いから、普通の収納魔法だよ」
「ふだんぴぴが使ってる収納魔法って、空気とかも無ければ、時間も止めちゃってるやつだよね」
「うん」
「普通は相手が受け入れない限り、そう簡単に入れれるものじゃないはずだけど、ぴぴなら強引に入れれちゃいそうだから言うね。生き物入れたらやばくないかな?」
「確かに・・・・・・」
「だから、この猫救急車をたくさん持って行って。中に人が入ったら、自動でさっきのところまで走るようになってるから」
「うん、わかった!」
ここから先はぴぴとぷうは別行動だ。ぷうは左回りで、ぴぴは右回りで怪我をしたハンターの救助に向かう。もちろんぴぴはぷうの猫救急車を大量に収納魔法に入れてだ。ちなみにぴぴが受け取った猫救急車は1人用だ。21人用じゃあ大きすぎる。
ぴぴとぷうは順調にハンターを回収していく、魔法使いを中心に何人か意識のあるハンター達もいたが、説明している暇はない。怪我をしてろくに動けないのをいいことに、さくっと拘束してどんどん猫救急車に突っ込んでいく。
そして、怪我人の回収がそろそろ終わる頃、アオイがボス牛の元に到着した。この時すでに、ボス牛の正面に立ち、時間を稼ぐといっている熊パーティーのリーダー熊と、そのリーダー熊に逃げろと言われている、その子分っぽい熊以外は回収し終えていた。右と左で半分づつ救助する予定だったため、ボス牛の正面は左担当のぷうだった。本来ならこの2人もさくっと回収すればアオイの到着前に救助完了だったのだが、なんかいい雰囲気だったので、割り込めずにいた。
「ぶもおおおお」
「お前は早く怪我人連れて逃げろ、時間は俺が稼ぐ」
「ですが、リーダー、あいつは俺らのことなんて見てないです。一緒に行きましょう!」
「だめだ! あの目はもう違う、俺達を敵としてみている。2人で逃げるのは無理だ」
「ですが!」
「くどい! お前は出来るだけ怪我人抱えてさっさといけ。俺が死んだら、お前がリーダーなんだぞ、弟分たちの面倒をみるのは、お前しかいねえんだよ。わかったか!」
「てめえの相手は俺だって、言ってんだろうが!」
「リーダー!!」
「あとは、頼んだぜ・・・・・・」
(あ、この雷攻撃は流石に熊が死んじゃうかな)
とぷうが介入しようかと迷っていると、アオイが間に合ったようだった。アオイが得意のコンプレッション魔法でボス牛に襲い掛かるのを確認すると、リーダー熊と弟分熊を回収してささっと撤収するのだった。
「「ただいま~」」
「え?」
「「?」」
「あの、今出て行ったばかりですよね?」
「もうみんな助けてきたよ。もうちょっとすると、猫救急車に乗ってくるよ。怪我は回復魔法で治したけど、意識が戻らないのはわたし達だとどうしようもないかも」
ぴぴとぷうは無事にハンターを全員回収してきた。怪我はすべて治したものの、意識が戻っているかはちょっと別問題だった。その辺は回復魔法をただぶっぱするだけのぴぴやぷうにはよく分からない。王都に帰って、ちゃんとした医者の診断を受けたほうがいいだろう。
「いえ、助けていただいただけでも十分です。ありがとうございます」
「じゃあ、アオイのバトルを見学しながらまったりしてよっか」
猫救急車も次々に合流してきた。合流したメンバーは全員最初の猫救急車に乗せかえる。
まだ意識を失っているハンターも多かったが、起きているハンター達は、仲間との生還を喜んだり、ぴぴとぷうに礼を言ってきたりと、ちょっと賑やかになっていた。ただ、いまだにアオイが戦っていることもあり、みんなそちらに集中した。
「すごいです。あの右目に刺さった氷の槍もすごいですが、この氷の腕によるもすごいです。とても同じ☆6ランクのハンターとは思えないです」
最初に救助した妖精族の女の子が、アオイの戦いを見て驚いていた。
「ああ、ありゃあすさまじいな、俺が普通に全力で攻撃するより、あの氷の腕のほうが確実に強いだろう」
リーダー熊も会話に参加してくる。そして、アオイの氷の腕による怒涛のラッシュの最後の一撃、抜き手による攻撃がボス牛の左目に炸裂すると、一際大きい歓声があがった。
「本当にすごいです。このまま1人で討伐できるんじゃないでしょうか」
「ああ、両目を奪われちゃあ、あの牛も終わりだろう。あとは時間の問題だろうな」
「そうかしら? 私にはそう簡単にいくとは思えへんわ。現に、そこの猫はんたちの表情は、すぐれへんようやで」
今度はきつねさんが会話に参加してきた。このきつねさん、なかなかわかっている様な気がする。いや、あんな無茶な作戦に参加してる時点で、そうでもないかもしれない。
「そうなのですか?」
妖精の女の子が、ぴぴとぷうに聞いてくる。
「うん、たぶんアオイじゃ仕留めきれないよ」
「え、それじゃあ、助けに行かないと」
「それは大丈夫だよ。アオイは逃げれる範囲でしか戦わないって言ってたしね」
「そうですか、ならいいのですが」
するとアオイがボス牛の放電攻撃で上空に弾き飛ばされた。
「ああっ!」
「よく見ろよ嬢ちゃん、上にいるぜ」
「本当です。すごいですね。あれをガードできるなんて」
「あらわざと上空に飛ばされることによって、威力を緩和してるのやろうな」
そして、アオイが急降下からの氷の槍による攻撃を仕掛ける。
「行ったぜ。すげえなあの右手の槍。この距離で俺ですらわかる。ありゃやべえ威力だ」
「ええ、すごいです。本当にすごいです」
「まいてまうわね、うちも狐として魔法の威力にはプライドを持っとったつもりだけど、格がちゃうわね」
するとボス牛が白く光りだす。
「あの、これってまさか」
「うそだろ」
「うそやろう?」
「うん、回復魔法だね。アオイがボス牛に勝てない理由って、これだよね」
「うん、アオイの火力じゃ、回復魔法を使わせず勝つのは難しいし、魔力切れまで勝負したら、いくら妖精族とはいえ、アオイのほうが先に魔力が切れるかな」
アオイが氷の槍でボス牛の左目をつぶすも、回復魔法により右目の視力は戻ってしまう。そして、強烈なビームがアオイを襲った。
「いやああああ!」
「うそだろ・・・・・・」
「うそやろう。攻撃力は弱いんやなかったん?」
妖精族の女の子だけじゃない、助けたハンターが全員、呆然とアオイがビームに飲み込まれた空を見つめていた。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん、そうだね。猫救急車、しゅっぱ~つ!」
ぷうは猫救急車を発進させる。この手の草食モンスターは、敵がいなくなったとわかれば必要以上に暴れないし、距離を取れば深追いはしてこない。ましてやこの草原は牛モンスターにとっては楽園である。そうそう出て行こうとすることも無い。モンスターの時代であるいまなら、数が増えすぎることにより、この草原から出て行こうとする個体もいたかもしれないが、間引きは上手くいっているということなので、その心配もないだろう。
「いや、まって、なんで?」
「おい、この馬車を止めろ!」
「あんた達、仲間がやられたのよ? なんとも思わへんの!?」
突然ハンター達が抗議してくる。特に妖精の女の子なんてすでに泣きながら悲壮な表情を浮かべている。だが、ぴぴとぷうにはわけがわからない。そして、その抗議の直後。
「あっぶね~、死ぬかと思ったぜ!」
「「おかえり~」」
無事にアオイが、猫救急車の窓から帰ってきた。
「え、どうして?」
「え、だってお前、あのすげえ攻撃食らって、え?」
「あんた、なんでいきてるん?」
「ん? ああ、あの光線みたいな技か? ありゃあ焦ったぜ。死ぬかと思った。あっはっは!」
どうやらハンター達は、命の恩人のアオイが死んだと思ったようであった。
「ねえ、アオイ、リベンジマッチする?」
「いや、止めとくわ。あれに勝てるようになるのは、しばらく修行してからじゃないと無理だな。現状じゃあ、回復魔法の発動前に仕留めることも無理そうだし、回復魔法を封じる方法も無い。普通にやったら確実にこっちが先にガス欠になる。おまけに怒らせたときのあの技、ありゃあ辛いぜ。幸い距離があったから、十分な強度のシールドが間に合ったが、ミスって至近距離で食らったら、ちょっとやばそうだったぜ」
「じゃあ、私が倒してきちゃうね」
「ダメ、今回はわたしの番」
「うん、わかった」
「ああ、どっちでもいいから頼むぜ。ギルドの依頼モンスターを俺の腕試しのためだけに、放置するわけにもいかねえからな」
今回はぷうの番、そういうことでぷうは王都に向けて走行中の猫救急車の窓から、頭を出して。
「な~」
と、軽く鳴いた。
「終わったよ~」
「うん」
「おう」
これにてボス牛退治は終了だ。21人乗りの巨大猫救急車は、王都へ向けて本格的に加速する。
「あれ、ボス牛が、いないです?」
「ん? ほんとだ」
「どないなこと?」
「「「「「???」」」」」
どうやら何が起こったのか、ハンター達は理解できなかったようである。別にぷうは変わったことをしたわけではない。ただ、窓から土弾をボス牛の額目掛けて発射して殺し、即座に収納魔法で回収しただけだ。技術的に難しい部分があるとすれば、遠くのものを収納魔法に仕舞うことくらいだろうか。とはいえ、遠距離攻撃が得意なぷうには、ごく普通の行為であった。
こうしてぴぴとぷうとアオイの3人は、無事に高級牛肉をゲットすることに成功したのだった。




