猫の女王様とその仲間
明日のバトルに向けて、作戦会議をすることになった3匹。
「では、作戦会議を始めます」
ぴぴがきりっと仕切る。
「では、意見がある猫は挙手をしてください」
「はい」
「はい、ハピ君」
「お姫様達はどのくらい強くなったの?」
「う~ん、今日は帰ってくるときに丁度出会っただけだから、よくわかんない」
「だね~、どのくらい強くなったのかは、明日のお楽しみだよ」
「そっか」
「でも、なんかいろいろ言ってたけどグルメツアーで強くなるはずはあんまりないので、あんまり期待できないかも」
お姫様と将軍は自信満々に言っていたが、どうしてもグルメツアーで強くなれるとは思えないぴぴであった。
「はい」
「はい、ハピ君」
「我輩あんまり猫岳行かないんだけど、お互い手の内はわかってるんだよね? 向こうの得意技ってなにになるの?」
「猫先生が水、女王様が雷、お姫様が雷風、将軍が筋肉だね~」
猫先生の水は、猫にとってはある意味脅威の属性である。なにせ猫は基本濡れるのを嫌うため、水が嫌いなのだ。猫先生は猫にしてはめずらしく、お風呂も平気な猫であった。ちなみにぴぴとぷうも水が大嫌いであるが、ハピは逆にお風呂が好きだ。とはいえ、猫先生の水技はお風呂の水量とは一線を画するためくらいたくはないのだが。
女王様とお姫様が得意な雷は、恐らく長毛種ゆえに静電気がたまりやすいからだろう。猫将軍の筋肉はそのままである。自己強化系の技が大得意で、自慢のマッスルがムキムキでキレキレなのだ。
「その中でも猫先生とお姫様が遠距離攻撃が得意で、将軍は接近戦、女王様はオールラウンダーだったはず」
「いつもわたし達と戦うときは、遠距離攻撃で削ってこようとするね~」
「そっか、こっちはぴぴが火の接近戦型で、ぷうが土のオールラウンダーだよね」
「「うん」」
「じゃあ、普通に考えたら、ぴぴが近接戦闘を仕掛けに行って、ぷうが遠距離技でフォローみたいなかんじ? 我輩はどうしたらいい?」
「とりあえず、私とぷうをハピの猫グッズで全能力2倍にあげてもらっていい?」
「うん、そのくらいなら余裕だけど、2倍でいいの?」
「2倍もあれば十分だよ。私が突っ込んでいって、それで終わりだと思う」
「ええ~、ぴぴばっかりずるい、わたしも戦いたい~」
「じゃあ、2回戦目を向こうに挑もう、そのときは私手出ししないから」
「むう、それならいいかな~」
「え、作戦ってそれだけで勝てるの? 猫先生たちって、普通にぴぴたちのライバルじゃないっけ?」
「そうだけど、だって2倍だよ。全部の能力で2倍の差があれば、1対4だって余裕だよ」
「そうだよ~」
「そうなんだ。まあ、それでいいならいいかな」
「うん、明日は大船に乗ったつもりでのんびりしてて」
「わかった」
こうしてぴぴ達は、作戦も決まり、明日のバトルに期待を膨らませつつ3匹は眠りにつくのだった。しかし、ずいぶんと雑な作戦だが、いいのだろうか。
ところかわってここは猫の女王様の居城。通称ホワイトキャッスル号。お城とはいっても、作ったのがハピであるため、外見はハピ達のぴぴぷちゃ号とほとんど一緒だ。違いは色が女王様ファミリーと一緒の白になっていることと、頭上に女王様と同じデザインの王冠がくっついていることくらいだ。
「「ただいまもどりました」」
「おかえりなさい」
お姫様と将軍があいさつを言うと返事をする1匹の白猫がいた。猫の女王様だ。女王様の外見はお姫様そっくりだ。頭に王冠を載せているので区別がつくが、王冠がなければ見分けるのは難しいレベルだ。
「明日の対戦の件、ぴぴたちから無事了承の返事をいただいてきました」
「ありがとう。では、おじい様も交えて、作戦会議をしないとですね」
「では、俺が呼んできます」
「お願いしますね」
そして、4匹が揃うと作戦会議を始める。
「では、明日の対戦の作戦会議を始めます」
女王様が気合の入った声で言う。
「はい」
「おう」
「うむ」
「では、大前提として、今回は絶対に負けられません。私達の旅は諸国漫遊の旅であって、グルメツアーではなかったことを証明しなければならないからです。そこで、油断無く戦うために、敵の戦力の洗い出しをしましょう」
「はっ、俺が説明します。ぴぴの得意属性は火。戦闘スタイルは火と身体強化技を使った高速接近戦型です。特に十八番の火の爪は高威力にも関わらず技の出が早く、本来の爪よりはるかに伸び、中距離まで届く射程があることなど、近距離は隙がありません。ただし、長距離攻撃手段に乏しく、遠距離戦を苦手としています。もっとも、極めて移動速度が速いため、相当上手に戦わないと、一瞬で距離をつめられます。次にぷうの得意属性は土。戦闘スタイルは岩を飛ばしたりする遠距離攻撃を好みますが、近距離でも不意をついたかみつきが上手というオールラウンダータイプです。ぴぴのような十八番と言える技はなく、どんな状況下でも柔軟に対応する頭のよさも持っています。最後に、ハピはめったに猫岳に来ないことから情報が多くないのですが、ハピの猫グッズは命の属性の力で出来ているらしく、猫グッズを使用すると猫を強化する能力があります。そのため、ぴぴが前衛を勤め、ぷうが遠距離攻撃、ハピが補助役という分担になるかと思います」
「個々の能力としては、こちらと互角ですよね?」
「はっ、ぴぴ、ぷう、女王様、先生、俺の5匹に関しては、猫の国で過ごしている時間も極めて長く、それと同時に猫岳での修行も長いため、それぞれの得手不得手はあるとしても、CP最大量など個々の総合的な強さという点では、互角かと思います。ですが、ぴぴもぷうも俺達より長期間猫の国で過ごしていることもあり、技の切れや使い方といった部分では、ほんのわずかですが向こうが上手と予想されます。実際今回のメンバーの中には、過去にぴぴ、ぷうと1対1で勝てたことのある猫はおりません」
「わたくしとハピに関する分析はどうなっているのですか?」
「はっ、姫様は争いごとを避けていたこともあり、CP最大値は互角程度あるかと思いますが、戦闘CP技の使い方など、明らかに劣っていると考えられます。そしてハピは、猫グッズ製作にすべてのCPを割いたらしいので、直接的な戦闘能力は低いかと思います。しかし、猫グッズによる強化で、どこまでぴぴとぷうが強くなるのかはわかりません」
「つまり、ハピはほとんど戦力外と考えても問題なく、普通に戦えれば4対2で私達が勝てるが、ハピの猫グッズによる強化度合いによっては負けることもある、ということですね」
「はっ」
「じゃが、問題はそのハピの強化魔法のつよさじゃのう」
「おじい様はハピの強化魔法の強さをご存知なのですか?」
「うむ、よく知っておるぞ。なにせあやつの猫グッズすべてにその効果があるからのう。例えばわしらも使っているご飯皿じゃが、そのご飯皿のご飯ですら、多様な効果があることがわかっておる。例えば肉を食せば、肉体の強化効果がかかるし、炭水化物を食せば思考加速の効果がかかったりするのじゃよ」
「では、わたくし達も普段からその恩恵にあずかっているということですか?」
「そのとうりじゃ」
「確か、この城には猫グッズは一通り揃っていたはずなので、わたくし達もそれを使えば、同じように強化できるということですね」
「それがそうはいかんのじゃ。確かに猫グッズの中でも出来のいいものがこの城にはある。じゃが、ハピがハピのCPを使って使用したときと、そうでないときとでは効果の差が大きいのじゃ。その上、相性の問題なのか、同じ条件で使用した場合でも、ぴぴとぷうは上昇率が高いことが分かっておるのじゃ」
「つまり、ハピの強化魔法を妨害できれば、勝率はあがるということですね」
「それが難しいのじゃよ、戦闘中にかける通常の強化技とは違い、猫グッズは効果時間が長い。ご飯でも数時間。ブラッシングによる防御力上昇効果などは1日続くことがわかっていてのう。朝猫岳に行く前に家で掛けることすら可能なのじゃ」
「では、ハピの強化技は不確定要素ですが対策不可能という方向で、4対2の数的有利を生かして戦う作戦を立てましょう」
「うむ」
「はい」
「おう」
「なにか案のあるものはいますか?」
・・・・・・しばしの沈黙が訪れる。みんな真剣に考えているようだ。
「はっ!」
猫将軍が手を上げる。
「猫将軍お願いします」
女王様に指されて猫将軍が作戦を発表する。
「まず、耐久戦はこちらが圧倒的に有利です。補給の際に1人欠けるのは、向こうは致命的でしょうから。そこでまずはこちらの有利な遠距離攻撃で、ちまちま攻撃し耐久戦を匂わせます。そうすれば、ぷうに負担がかかるのを嫌ったぴぴが、必ず突っ込んでくるはずです。そこを、必殺の間合いまで引き付け、先生、女王様、姫様の遠距離攻撃で確実に仕留めます。その間、ぷうの遠距離攻撃による支援攻撃がある可能性がありますが、それは俺が体を張って防ぎます。その後は4対1なら、こちらが消耗していても、押し切れるかと思います。いかがでしょうか?」
「うむ、わしはいい作戦だと思う」
「そうね、私も賛成です」
「はい、わたくしも賛成します」
「では、後は使う技など詳細を詰めましょう」
こうして、女王様たちも準備万端整えて寝るのであった。
そして今日は約束のバトルの日だ。両チームとも朝ごはんをしっかり食べ、ハピの猫グッズでブラッシングしたりと準備万端整えて猫岳に向かう。
「「「「「おはよう~」」」」」
「猫先生と女王様は久しぶりだね」
「お久しぶりです。昨日は娘と将軍がお夕飯をごちそうになったようで、申し訳なかったわね。それと、本日は対戦の申し込みをお受けしていただいて、ありがとうございます。みんながあなた達と戦いたいっていうもので」
「っほっほっほ、なにを言っとるんじゃ。お主が一番戦いたがっていたではないかの」
「お父様は黙ってて下さい」
猫先生と女王様は相変わらずのようである。
「女王様、先生、そろそろ準備をしませんか?」
「そうね、設定は毛皮が一定以上のダメージを受けると失格でいいかしら?」
「「うん」」
待ちきれないとばかりに猫将軍がバトルを促す。女王様もぴぴもぷうも同じ気持ちだったようだ。怪我をしないはずの猫の国でバトルが成立する理由は猫岳の特殊機能だ。猫岳で修行をするにあたり、お互い一切ダメージを受けない無敵じゃバトルが成立しない。そのため、猫岳ではお互いの同意があれば、多少の怪我を許容できるように出来た。
猫岳の広場にて2チームが向かい合う。昨日の話の通り、猫先生、女王様、お姫様、猫将軍の女王様チーム対、ぴぴ、ぷう、ハピの仲良しトリオチームだ。4対3じゃないのかって、そんなのは気にしない。別に正々堂々試合をしようというのではないのだ。あくまでも猫岳での修行という名のお遊びだ。数に差があるなんて実戦では当たり前のことだし、遊びとしても集まった人数で楽しくやるのが一番大事だ。細かいことは気にしないのである。
そして、そんな3対4の戦いの火蓋が切られるのだった。
ぴぴチームの初動はぴぴによる突撃だ。ぷうもハピも動く気配すらない。ぴぴ達の作戦通り、ぴぴ単独による突撃だ。ぴぴの見立てでも、ぷうの見立てでもこれで終わりらしい。
「どこかで突っ込んでくるとは思ったけど、開幕からとはね。迎撃するわよ。将軍、ぷうからの攻撃がきたら予定通りお願いね」
「はっ!」
対する女王様チームは、女王様が左、将軍が右に並び、女王様の左後方にお姫様が、将軍の右後方に猫先生が立つ台形の陣形で迎え撃つ。
想定どおりぴぴが突撃してきたため、女王様チームは作戦通り必殺の距離まで引き付けて、遠距離攻撃で迎撃する。
「お母様、いきますよ」
「ええ」
お姫様が巨大なサンダーボールを発生させ、そこに女王様が追加で電気を流し、どんどんサンダーボールを大きくしていく。同時に猫先生もそれに負けず劣らずの巨大なウォーターボールを発生させた。遠距離攻撃が大得意の猫先生は、同じ遠距離攻撃が得意でも修行不足のお姫様と、オールラウンダーの女王様の2匹がかりのサンダーボールに負けないウォーターボールを1匹で作り出していた。そして、ぴぴが必殺の射程に入ったところで、発射する。
「いきます。ハイパーサンダーボール!」
「ぬうんっ」
お姫様のハイパーサンダーボールは、地面をえぐりながら高速でぴぴ目掛けて一直線に進んでいく。そして、同時に発射された猫先生のウォーターボールも同じように進んでいった。地面を削りながら進む左右に並んだ2つの巨大なCP技。この大きさ、回避は不可能だろう。最大火力の大技で一気にぴぴを仕留める。女王様達の作戦通りだ。
「おお~、すごい水球と雷球だね」
「ん~、確かに威力も高いし速度も速いけど、ぴぴなら避けるのも壊すのも余裕かな」
(っほっほっほ、CP技の合成は難しいのに、よくやりおるわい。成長したのう)
(初手はいいかんじね。少し力を使いすぎたけど、あとはぷうだけだから、許容範囲ないね)
(流石おじい様ですわ。本来属性的に速度で勝るわたくしの、ハイパーサンダーボールと同じ速度でウォーターボールを打ち出せるなんて。あう、すこし力を込めすぎたかしら、くらっとしますわ)
(ぷうは動く気配なしか、どういうことだ?)
そして、二つの大技がぴぴに激突すると同時に大爆発が起きた。
「よっしゃ!」
「やりましたわ」
思わず猫将軍とお姫様が声を上げる。そして大抵こういうのはフラグである。
(爆発? なぜ爆発する。わしのウォーターボールもあやつらのサンダーボールも、爆発せずに押しつぶすような制御にしているはず。爆発したということは、わしらの制御がやぶられたということか、これはまずいのう)
「油断するでない、ぴぴは健在のはずじゃ!」
猫先生が注意喚起をするやいなや、爆風の中から、ぴぴが飛び出した。
「ふしゃ~」
「がおおおおっ!!」
即座に猫将軍が反撃する。襲い掛かるときの声がふしゃ~とかじゃなく、がおお! の時点で、猫将軍は本当に猫のくくりでいいのかと思うが、気にしてもしょうがない。そしてぴぴの十八番の火の爪が猫将軍を襲う。先ほどの猫先生とお姫様のCP技を切り裂いたであろう巨大な火の爪はやすやす猫将軍を吹っ飛ばした。
そんな中即座に反撃にできたのは唯一猫先生だった。なんとかウォーターショットを連射しぴぴに攻撃を加える。しかし、ここまで接近されてはもうぴぴには勝てない。あっさりと火の爪でぺしっとやられた。そして、大技のあとで少しふらつきぎみだったのこりの2匹も、ぺししっとやられたのであった。
「「「「・・・・・・」」」」
4対3で有利だと思っていたはずなのに、まさかのぴぴ1匹に瞬殺されたショックで愕然とする女王様チームであった。
「流石ぴぴだね、作戦通りとはいえ、本当に1対4なのに勝っちゃったよ」
「じゃあ、次はわたしの番になるのかな~、女王様達2回戦目引き受けてくれるかな」
結局、ぷうとハピは最後まで完全に観戦モードだった。
「もう一回やる?」
ぴぴが女王様達に聞く。いまのはたまたまだよ。とか、次は手加減してあげるから、とかいうやさしさからではない。次のぷうの番をやってほしいから言うだけだ。じゃないとぷうがきっと拗ねる。
「「「「やる!」」」」
それでも己のプライドのため、諸国漫遊がグルメツアーではなかったことを証明するため、女王様たちはもう一戦やることにした。
そして再び戦うために向かい合う。ただ、今回はぴぴチームからぴぴとハピは舞台にいない。観客席で他の猫達とのんびり観戦モードだ。そのため、どこからどうみても1対4の勝負になる。
(なめるなっていいたいけど、ぴぴとぷうの実力はほぼ同じ。余計なことを考えずに全力攻撃ができる分さっきより有利だけど、これでも勝てないかもしれない。でもやるしかないのよ)
女王様はそれでもがんばろうと決意するのであった。ちなみに女王様によるぷうの実力予想は良いのか悪いのか、女王様の予想通りである。よって、ぴぴに手も足も出なかった女王様達が、ぷうに勝てる見込みはまったくなかった。
そして、再び切られた戦いの火蓋。
女王様チームの作戦は初手から小細工なしの全力攻撃だ。女王様は本来のスタイル、雷をその身にまとい、高速移動しながら、遠距離攻撃のサンダースピアを連射して一気に接近する。猫将軍も同じく全力で突進する。ぷう遠距離攻撃のほうが得意だし、ぴぴほど速くないから後衛達をぷうの接近から守る必要もない。そして、遠距離攻撃組みの2匹も、接近中の2匹の援護のために攻撃する。戦闘開始位置が遠いために、大技をいきなり使ってもかわされるだろうから、小技と中技が中心だ。
そしてぷうの初手は、空に向かって鳴くことだった。それはそれは盛大に鳴いた。
「な~、な~、う~にゃ」
するとどこからともなく大量の大小さまざまな岩が空中に出現し、勢いよく女王様達目掛けて降り注いだ。大きさの違いだけじゃない、中には岩じゃなく鉱石のような金属系のものまで含まれていた。そして、女王様チームからの初手の攻撃は、アースウォールを発生させてすべて防ぐ。
女王様チームの初手をぷうはアースウォールで防いだが、ぷうの初手に女王様チームは苦戦した。4対1なので範囲攻撃をぷうが選択するのはある種当然の戦法だ。しかし、まさかこれほどの大規模攻撃を繰り出してくるとは思わなかった。ぷうに向かって先頭を走っていた女王様であったが、攻撃の密度が高すぎて女王様のスピードでも避けきれない。電気系の技は防御にあまり向かないため、回避しにくい攻撃は苦手なのだ。
(この規模の攻撃ならそう長くは続かないはずだけど、さっきのぴぴみたいに想定外の強さの可能性もある。ここは無理をしてでも接近戦にもちこむべきね)
そう考え、なんとか大きい岩は避け、中ぐらいの大きさの岩はサンダースピアで破壊して、小さい岩は無視する。多少ダメージを負ってでも、ぷう目掛けて前進するためだ。
「がおがおがお~!!」
その少し後方では、猫将軍が猫とは思えない雄たけびを上げながら、自慢の筋肉を生かして強引に突き進んでいた。中小の大きさの岩は無視、大きい岩だけ猫パンチで破壊するという少々強引な方法で突き進む。
そんな中、猫将軍以外にも1匹、降り注ぐ岩の中を悠々と走り、女王様と猫将軍に接近する影があった。ぷうだ。そして、隙を見て女王様の耳にカプリと、ぷうの牙が文字通り牙をむいた。
「みぎゃあああああ!」
いきなり耳をかまれて悲鳴をあげる女王様。どうやらかまれるまで気づかなかったようである。ぷうは遠距離攻撃が得意だが、不意打ちも得意なのだ。しかも、ぷうは雷嫌いである。雷をまとっていた女王様に噛み付くために、全身を土の鎧のようなもので強化していた。そして特に口の中は全力の土技で強化していた。その状態でがぶっといかれた。これは痛い。そしてこの一撃で女王様はリタイアだ。唯一の救いは、ぷうの岩石降らしのおかげで、悲鳴を観客に聞かれなかったことくらいであろうか。そして同じ手段で猫将軍もかぷっと倒された。この土の鎧、土ぼこりが舞うこの戦場では、大変いいカモフラージュ効果があるようである。
「こっちにくるのじゃ!」
「はい、おじい様」
「大きい岩を迎撃するのは骨が折れる。大きい岩は避けつつ、中小の岩を迎撃するのじゃ」
「わかりましたわ」
猫先生とお姫様は2匹並んで岩石降らしを防いでいた。
「おじい様、このままでは防戦一方ですわ、なにか手はありませんか?」
「この大規模な攻撃じゃ、そう長くは続かないはずじゃ。CPも相当使っておるはず、耐えしのげばチャンスはあるぞよ」
「わかりましたわ」
(前衛達が突撃することで、高威力の小規模範囲攻撃を撃たれないようにしたのはよかったが、まさかこんな大規模範囲攻撃にでるとはのう。しかも、なにやら岩以外にもテレパスを阻害するなにかがまじっているのか、前衛達とテレパスがつながらん。流石にこの規模の攻撃、長時間は続かないはずじゃが、なにか見落としがあるようで、嫌な予感がするのう)
そして、ぷうはてっくてっくと猫先生とお姫様に忍び寄り、かぷっかぷっと噛み付いた。こうして、ぷうの勝利が決まったのだった。