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「何か聞きたそうだな」
謁見の間を出て、しばらく黙って並んで歩いてたら、フェルナンドが足を止めて唐突に言った。
……う、見抜かれてる。
ウソついても仕方ないから、疑問に思っていた事をズバリ聞いた。
「あのさ、何でお母さん、よそよそしいの? 『フェルナンド殿』なんてすっごい他人行儀じゃない」
「フィーネ母上は俺の本当の母ではない」
ためらいもせずにフェルナンドは即答。
「俺と兄上の母親は、俺を産んですぐに亡くなった。十年近く経ってから父上はフィーネ母上を新たな妃に迎えられたが、あのように穏やかなお人柄だし、何より、俺達兄弟にも優しく接してくださった。俺はあの方を母だと思っている。呼び方など問題ではない」
……あら。
突っ込んじゃいけない家庭の事情だったかな。
でもこれで、何でフェルナンドとリーティアがあんまり似てないか、よくわかったわ。王妃様、二十六歳の息子がいるにしては若すぎ、と思ったしね。
「……で?」
フェルナンドが半目で見下ろしてくる。
「まだ聞き足りないという顔をしているぞ」
ううっ。
こいつ、何でこんなにスルドイの。
「い、いやね、ご先祖様から名前がファフィフフェフォなのに、何でリーティアだけ違うのかな~っと思って」
「知りたいか?」
フェルナンドのビミョ~な表情が気になりながらも、コクコクと首を縦に振る。
「……ネタ切れだ」
フェルナンドはそれだけ言って、スタスタと歩き出す。
それが答えなのだとアタシが理解するのに、軽く七秒は必要だった。
「あっ、お兄様、蓮子様!」
廊下の向こうから、ネタ切れ、もといリーティアがアタシ達を見つけて、タカタカーっと駆け寄って来た。
「蓮子様、いかがでした、お父様とお母様は?」
「あ、うん。いい人達で良かったよ」
「本当ですか!?」
リーティアは胸の前で手を合わせ、そりゃあホッとした様子で。
「娘のわたくしから見ても少し変わった方達ですから、戦巫女様に何か失礼な事が無いか心配でしたの」
うわ。
実の娘に容赦ない言われよう。
は、は、は。と、乾いた笑いを口から垂れ流しにしていると。
「あぁら。フェルナンド様に、リーティアじゃありませんこと?」
鼻にかけるような、イヤミったらしい声が聞こえてきた。