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負け犬はワルツを上手く踊れない  作者: たつみ暁
第2話:お約束のライバルに出会いました
6/46

2-1

 氏名 矢田蓮子

 年齢 二十八歳

 家族構成 一人暮らし ただし実家に、父、母、兄夫婦と甥

 資格 学生時代に取った、英検2級、漢検2級、秘書検定2級、初級シスアド

 自動車免許 有り ただしペーパー

 趣味 映画観賞、カラオケ、お風呂で恋愛小説読みふける


 特技


 戦巫女


「……戦巫女は特技か?」


 一人ツッコミして、慣れない羽根ペンで、これまた慣れない羊皮紙に書いた文字をガリガリとかき消した。

「お前の字は、読めないな」

 突然その紙が目の前から消える。アタシは半目になって、紙を奪った手の主を振り返った。

「ちょっとぉ、乙女の部屋に入る時はノックぐらいしなさいよ」

「ちゃんとした。お前が気付かなかったからそのまま入って来ただけだ。大体誰が乙女だ、年齢を考えろレンコン女」

 青い髪に金色の目をした顔のいい男――しかし性格はイジワルで最悪――それでも、このフォルティア国の王子なんだから世の中わからない――フェルナンドは、ニコリともせずに言い放つ。

「それに何よ字が読めないって。アタシはボールペン字講座を習ってたのよ」

「違う。そういう意味ではない」

 フェルナンドはアタシの書いた紙をためつすがめつ。

「お前の母国語なのだろう? 読めないんだ。お前の話す言葉はきちんと、この国の公用語、ヴィルム語で聞こえるのに。これも戦巫女の力のひとつなのか?」

 そういえば最初から言葉が通じたもんだから、周りが日本語を話してるのかどうかなんて、サッパリ考えてなかったわ。便利なものだ。

「んっふっふ、恐れ入った? キレイなヴィルム語に聞こえるでしょ」

「いや、アスケイス地方の訛りが入っているな」

 ……こいつは。人をほめるという事を知らんのか。

 むくれていると、フェルナンドは「まあこれはもういい」と、人が頑張って書いた自己紹介書を、グシャグシャーっと丸めやがった!

 何すんのよ! が喉まで出かかったとこで。

「父上が待ちくたびれた。さっさと来い」

 その言葉でアタシは、自分が何でこんなもの書いていたのかを、ハタリと思い出す。

 そうだった……。


 マンホールに落ちて、フォルティアに召喚され、一週間。


『伝説の戦巫女』として戦ったのは、初日の「パーティにドラゴン様一匹ご乱入事件」だけで、それ以後は戦巫女の力を求められる事も無く、城の中でのんべんぐらりと過ごしていただけだ。

 そのせいだとか言い訳しないけど。フェルナンドやリーティアが言い出さなかったからだとか人のせいにしたかないけど。


 ……この国の一番エラい人、つまり王様と王妃様、フェルナンド達のご両親に、挨拶するの忘れてたよ……。


 その王様がアタシの自己紹介書を見たいと言ったそうだから、謁見の前にカキカキしてたわけだけど。

「ほんとに大丈夫? アタシ、国の主に一週間も挨拶しないで、ものすごい失礼な女と思われてない?」

「ああ、その辺は気にしなくていい」

 アタシの心配をよそに、フェルナンドはけろりと答える。

「父上と母上はリベラルな方だ。細かい事はこだわらない」

 そして、眉間にシワ寄せて繰り返した。


「むしろリベラルすぎて困るくらいだ」

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