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「いやあ、そうなのか! 我々の代の戦巫女がこんなに麗しいお嬢さんだとは! あまりの可愛らしさに、僕の目はくらんでしまったよ」
……えーと?
今、この人何語喋った?
いや、翻訳機能で日本語に変換されてるんだけどね?
アタシがあっけにとられて立ち尽くしている間に、フォレスト王子は、アタシの手の中にあった皿から肉ジャガをひょいと素手でつまんで口に運ぶ。
そして誰かが、お行儀悪い! とたしなめる間も無く、パアアッと笑顔になって、アタシの手を握りしめた。
「いやあ、うまい! 本当にうまい! 君なら本当に素敵ないい奥さんになれるよ! 何なら僕のお嫁さんになってくれないかな!?」
その瞬間。
アタシの全身が、ぞわっと総毛立つような感覚に襲われた。
フォレスト王子のいきなりの告白にトリハダ立ったんじゃなくて。
洗ってない手が気持ち悪かったんじゃなくて。
それは、恐怖にも近い感覚だった。
「もう、お兄様。誰彼かまわず口説かれるのはおやめください。しかも蓮子様は、尊い戦巫女様なのですよ」
「ええ~?」
リーティアの言葉に、フォレスト王子が手を離して子供のように口をとがらせる。
途端、さっきの妙な気配はあっという間に霧散した。
「なんだいリーティア。昔は、『お兄様にも早くいい人が見つかると良いですね』って応援してくれたのに……もうお兄ちゃんの味方はしてくれないのかい?」
「わたくしは蓮子様の味方です」
リーティアがバッサリと斬り捨てる。
フォレスト王子はしばらくいじけて、テーブルにのの字を書いていたけれど。
「あれっ、じゃあもしかして…」
アタシとフェルナンドを交互に見て、思い至った、とばかりに手を打つ。
「蓮子ちゃんは、フェルと良い仲なのかな? それじゃあ僕はお邪魔虫だよね~」
「「ありえない!!」」
ほとんど脊髄反射で、アタシとフェルナンドはお互いを指差して同時に叫んでいた。
そう、ありえないよ。
こんな性悪男を好きになるなんて。
そんなこと。




