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「んふ~ふ~ふふ~ん、ふ~んふ~ふふ~ん~♪」
ミソ・スープと母の愛を歌った曲を口ずさみながら作るのは、大根のミソ汁と、肉ジャガ。
今日は、いつもお世話になってるお礼に、王様達にアタシの故郷の料理を味わってもらおうと、厨房に立ったのだ。
この世界に、ミソとショウユなんていかにも日本的な代物、無いかと思ったけど、
「戦巫女様の世界で云うダイズかどうかはわかりませんが、豆から作った調味料ならあります」
と、料理長さんがそれに近いものを用意してくれた。
優秀。
ちなみにアタシは生まれも育ちも東日本なので、肉ジャガには豚肉だ。
これに真っ白いご飯を添えて、王族が食事をする広間の食卓に並べた。
「ん~、んまい! 最高!」
「蓮子ちゃんたら、こんなにお料理が上手なのねぇ」
「本当においしいです。すごいですわ、蓮子様!」
ホントに基本的なモノなので、フォル王様にフィー王妃様、リーティアが口々に称賛してくれるのが照れくさい。
「初めて食す料理ですが、これはなかなか……」
「蓮子先輩の作るミソ汁は、うちの母さんの味に似ています」
こう評してくれたのは、たまたまフォルティアに来ていて、フォル王様が『一緒に食ってけ!』と(半ば無理矢理)同席させた、ステア国のセルマ王女と、戦巫女・大塚翔平君。
中学二年バスケ部補欠という、成長期真っ最中のまだ少し小さめな身長にそぐわない、デカい金色の大剣を背負った彼が現れた時には、戦巫女なのに男かよ!とびっくりしたが、どうやら男の子が戦巫女に選ばれるのはそうそう珍現象でもないらしい。特に、ステアでは。
皆の好評を博してすっかり上機嫌になりつつあったアタシだが、まだ一人感想を述べてない奴がいることに気づく。
「ちょっと、一言くらい言うことあるんじゃないの?」
「……ああ」
先日の火事で、長かった髪をバッサリ切り落として、別人かってくらい外見が変わってしまったフェルナンドは、しかし中身変わらず、眉ひとつ動かさずに言い放ちやがった。
「作り手と同じく華やかさは無い味だな」
こ、こいつは。
「文句があるなら食べなくてよろしい!」
「誰も不味いとは言っていないだろう!」
肉ジャガの皿を取り上げると、フォークが追いかけてくる。
「これ、フェルナンド殿、はしたないですよ」
「もう、兄様達ったら」
フィー王妃様やリーティアが笑い、王様達もそれにつられる。
ばぁん!!
と、その笑いをかき消す大きさの音で広間の扉が勢いよく開かれたのは、その時だった。




