表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
負け犬はワルツを上手く踊れない  作者: たつみ暁
第1話:マンホールに落ちたら異世界でした
1/46

1-1

「お前、つまんないんだよ」


 二十九歳の誕生日直前。

 その一言で、アタシの恋は終わった。


 クリスマスを前に、街は色とりどりのイルミネーションがきらめき、店先には、クリスマス用品が賑やかに並ぶ。

 そんなきらびやかな情景とは裏腹に、アタシの心はドン底まで暗かった。

 五つ年上の彼は、バイト先の店長。

 一緒に仕事をするうちに、何度か呑みに行くようになって、ふと気がついたら、恋人同士のようなカンケイになっていた。

 ところが、それから半年も経たないうち。


 新しく入ってきた大学一年の女の子に、彼のハートはあっと言う間に傾いた。


 キャピキャピの若い子の方がカワイク見えるのは、わかるわよ。

 だからって「つまんない」は無いじゃない!

 年末の誕生日を盛大に祝ってもらいたくて、超大手テーマパークのツーデーチケット、二人分、用意したのに。

 年齢に焦りを感じていたなんて認めたくないけど、少し、少しだけよ、結婚まで意識していたのに!


 手にした携帯を見る。失恋報告をした友人からのメールは一言、そっけなく、


「ちゃんとつかまえておかなかったアンタが悪い」。


 ……友情に疑問を覚えた。


 もうバイトにも行けないな。新しい仕事を探さなきゃ。

 とぼとぼ歩きながら、乙女に似合わぬデカい溜息ひとつ、ついた時だった。


『……こ……巫女よ……』


 どこからともなく聞こえてきた声。

 空耳かと思い、うつむいていた顔を上げる。

 商店街を過ぎて住宅街に入ったところ。夜九時を回った道には、人通りも無い。


 もしかして……ストーカー?


 一人青ざめたとき、さっきよりも明瞭に声は聞こえた。


『どうかこの呼び声にお応えください、戦巫女よ!』


 何事!? と一歩後ずさった瞬間、足元に地面は無かった。

 何故か蓋が開いていたマンホールに、アタシは飲み込まれた。


「負け犬寸前、失恋して下水に投身自殺?」


 すさまじくかっこ悪い、スポーツ新聞記事のようなタイトルが脳裏を駆け巡る。

 暗闇の中を、落ちて、落ちて……。


 だけどいつまで経っても、頭を強く打ちつけるだろうコンクリートの床はやって来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ