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第1話

「死にたい」


ふと、そう思った。


今のボクには、何の希望もない。生ける屍だ。

生きていることに何の意味があるというのだ。


鏡に映る自分に問いかける。

お前は何のために生きているのだ?

誰がお前を必要としているのだ?


鏡の中のボクは、ただ呆然とボクを見つめていた。


もはやボクには生きる資格はない。

どこか遠くで、誰にも気づかれないところで、ボクは人生に幕を引こう。


3月30日午後4時、ボクは実家を静かに出ていった。




**********




12月27日、夕方。

ボクはコンビニのレジに立っていた。

「83円のお返しです。ありがとうございましたぁー」

そういってお客様を見送る。


ボクはコンビニの店長をしていた。といっても自分で経営しているわけではない。このお店は会社の直営なのだ。

業界ビッグスリーといわれるコンビニのチェーン本部に入社して3年。いくつかの直営店を社員として渡り歩き、3店目のこのお店でようやく店長に昇格した。しかし、今年の年末商戦はかなり厳しかった。このままだと、今月はどうやら赤字だ。

新しい年まであと4日・・・。

どこかのアラブのお金持ちが店ごと全部買ってくれるなんてことになってくれないかなぁと妄想もしたが、所詮は妄想だった。


「さて、明日の発注でもするか・・・」

そう独り言をつぶやきながら事務所に戻る。



・・・



「店長!」


異変に気づいたのは、パートの末永だった。


「店長! 店長!!」

何度もボクを呼ぶが、反応がない。


末永は店へと駆け出して、副店長の斎木を引っ張り込んだ。

「・・・長! 副店長! 急いで!! 大変です!!」

「ったく・・・ 末永さん、何なの? 」

「店長が・・・机の前で倒れているんです!!」


斎木はうつ伏せになったボクの体を反転させた。力を失った口からは、泡が吹き出ていた。

斎木は頬を勢いよく何度も叩く。

「店長! 大丈夫ですか? 店長! しっかりしてください!」

しかし、返事はなかった。


「店長! 店長!! 返事してください!!」

どれほど叩かれただろうか。

しばらくして、ボクは斎木の声がかすかに聞こえるのに気がついた。

・・・意識を取り戻した瞬間だった。

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