タオル奪還計画
「じゃまずはどうするよ」
なぜかタイガがリーダーみたいになっている。
「はい! 返してくださいって言う!」
手を挙げて答えてみる。
「はいオッケー! じゃ終わり。さよなら」
「嘘だってば! タイガ見捨てないで〜」
「夏休みを有効活用して、取り戻せたらいいね」
トウマが呑気に言ってくる。
俺たちはバリバリの帰宅部なので夏休み中は何もすることがなく暇だ。一ヶ月もあれば何でも出来そうな気すらする。
「え、ていうか、あいつが使って汗まみれになってるタオルとかいる……?」
トウマがいい所に気づく。
「……いらん。誰が好んで男のしかも汗臭いタオルなんかいるんだよ。」
当然のように返答。
「じゃあ取り戻さなくても……」
トウマが恐る恐る言ってくる。
「……でも嫌だ。あのタオル使われるの」
一気に二人の顔が柔らかくなった。
「そうだよな〜そうだよ嫌だよな〜」
頭をぐしゃぐしゃしてくるタイガ。
「ショックだもんな、うんうん」
トウマも背中をさすってくれる。
と、いうわけで本格的に作戦を考えることになった。
「まず、敵の行動範囲を知ることだな」
やはりリーダーをやる気なのだろう、タイガが口を開く。
「夏休みってみんな何してるんだろうな〜」
素朴な疑問。
「部活か塾かな……?」
「あ、俺明日から1週間くらい夏期講習行くわ。言うの忘れてた」
まさかのタイガの裏切り。
「えーー行かなくていいって!俺たちより成績いいのに〜!」
「さすがタイガ抜け目ないな……」
トウマは感心しきっている。
「だからとりあえずお前ら二人でやっといてよ、この作戦。俺が戻って来たときには終わってていいから」
いいように逃げられた気がする。
まあいいか、トウマがいれば。
――――――
次の日からタイガはいないが、トウマがいつものように俺の家に来てくれた。
勉強は飽きたのでテレビのオンラインゲームで遊ぶ。
「てかさ〜今時プリントはないよな〜」
ふと宿題のことを思い出した。
「え? 宿題の話?」
トウマがテレビに目をやったまま答える。
「うん。今時一人一台パソコン配ってんだからそれでよくね?」
「あ〜高島がな〜プリントの鬼だからな〜」
「くそ!死んだ!」
ゲームのコントローラーを軽く投げる。
「そうだ!学校に行こう!」
いいことを思いついた。
「え?何しに?」
「敵を知るために、サッカー部見に行こ!
ほら、作戦なんかしないとさ〜」
「まあ暇だし別にいいけど〜」
俺たちはぬるっと作戦を始めることにした。
―――――
「あっつ!!!」
外に出るともわっとした熱気に出迎えられる。
「もう帰りたい……」
一歩出るだけで家が恋しくなってきた。
「ちゃっと行ってちゃっと帰って来よ〜」
トウマに腕を引っ張られ、言い出さなきゃ良かったと心底思った。
うだるような暑さのせいか、夏休みというのに子供の姿がない。
自販機でジュースを買って歩みを進める。
「お前んち親いなくていいよな〜」
トウマがジュースを飲みながら言ってきた。
「なんで?」
「昼間自由じゃん。何しても怒られないだろ?」
「まあな〜朝起きた時は二人とも仕事行ってるしな。姉ちゃんはいつ出て行って帰って来てるのかわからんけど」
姉は大学生で昼から学校へ行ったり、朝から帰って来たり自由にしている。
大学生になったら楽しそうだなとその姿を見て思ったことは言うまでもない。
「妹もいたよな?」
トウマはよく覚えている。
「いるいる。小学1年生。それよりお前の妹可愛いよな」
トウマの双子の妹のことを思い出した。
「そう? あんま思ったことないや」
トウマも女顔だから自分と似ている顔を見ても何も思わないのだろうか。
俺は自分の妹可愛いと思うけど。10個も下なので小さい時から世話をしてきた。
「お!やってるね」
学校に着くと叫び声や笛の音が飛び交っていた。
サッカー部が試合をしているようだ。
同じ年齢なのにこの充実さの違い……
ちょっとみじめに思えるが、まあトウマもいるのであまり気にしないことにする。
俺たちもなかなか汗びっしょりだが、彼らの汗と比べたら質が全然違う気がする。
「青春してるね〜」
もうほんと別世界。
羨ましい気持ちもあるが、絶対やりたくない。
しばらく見ていたが、なんだか虚しくなってきた。
「帰ろっか」
「うん」
「明日さ、部活終わり頃に来て田中の後をつけない?」
「お! それいいね! その後宮崎さんに会うかもね」
こうしてタイガのいない1日目が終了し2日目の予定が決まった。




