リア充を爆破しよう!
「リア充を爆破しよう!」
高校1年生16歳アキトの一言から全ては始まった。
「は?」
夏休み1日目。俺の家に宿題をしに来ていた友人のトウマが目を見開いた。
「はいはい頑張って」
タイガは相手にもせず宿題を続けている。
「聞いてくれ!俺は本気だ!」
「だとしたら相当ヤバいよこいつ」
トウマがタイガに助けを求める。
「もういいよ、そのうち世界征服するって言い出すからほっとこ」
やはりタイガは聞き入ってもくれない。
これだから成績がいい奴は。
「いやいや理由ぐらい聞いてくれよ〜!!」
机をグラグラ揺らして宿題の邪魔をする。
コップの麦茶がこぼれそうになってしまい、内心焦った。
「おい、宿題プリントに一滴でもお茶こぼしたらお前のプリント全部ビリビリに破くからな!高島に殺されろ!」
タイガが鬼の形相で睨んできた。
眼鏡から目玉が飛び出すんじゃないかってくらい睨んでる。
高島とは俺等の男性担任である。
40代半ばで強面の上に長身、痩せ身であったのが唯一の救いだ。これでガタイが良かったら怒られる度に震え上がってチビッてしまう。
この時代柄、殴られたりの虐待はない。
だが大声で怒鳴られることは良くある。非常に良くあることだ。
「高島はプリントの鬼だからな……一枚もしてこないどころか破ったとなるともう……」
トウマは想像して怯えた顔をする。
二人には悪いが無視して話を始めることにした。
「いいか?リア充は世界の敵だ。
だってリア充が好きな奴なんてリア充本人以外にいないだろ」
「出た出た、陰キャのひがみ。なんか言ってやれよ、トウマ」
「敵ってのはね……、羨ましくはあるけど」
トウマはサラサラの前髪を触りながら答えた。
「俺たちで敵を倒すなら、俺たちは正義のヒーローということになる」
「え? なんのアニメ見た? 影響受けすぎじゃね?」
少し心配してくれるトウマ。
「もう中二病爆発しまくりやな。俺ら高校生になったんだからもうそういうのさ……」
「だから!!敵を倒そう!リア充を爆破しよう!」
「なんでそうなる」
「リア充がお前になんかしたのかよ……」
「したんだよッ!!!」
つい興奮して机をドンッと叩いてしまった。
麦茶が数滴こぼれタイガのプリントへ……
目にも止まらぬ速さで胸ぐらを掴まれた。
トウマが即座に火消しに入る。
「まあまあタイガ!ちょっとはアキトの話聞いてやろう!
ほら!プリントもこうやって日なたに置いておけばすぐ渇くって……」
と言いながら窓際に濡れたプリントを持って行ってくれる。
タイガの顔は怒りを込めたままこちらに向けられているが、舌打ちをしながら手を離してくれた。
やっと話し出すことが出来たので、事の経緯をお二人に聞いていただく。
昨日、夏休み前の最後の登校日の出来事だ。
俺が一人で帰っていると、俺たちと同じ1組のサッカー部の田中と、2組の宮崎さんが一緒に手を繋いで帰っていたのだ。
「え、2組の宮崎ってお前が時々話しかけられるって言ってた……?」
さすがトウマ君。俺の話をよく覚えてくれている。
「そうだ。彼氏もいないって言ってた」
「だから何? ヤキモチ妬いて爆破したくなったってこと?」
タイガが呆れ顔を見せる。
「それだけじゃない!田中が俺のタオル持ってた……」
「え!何それキモ!」
優しいトウマ君が俺に初めてキモいと言った瞬間だった。
「俺のタオルというか、こないだ宮崎さんにあげたやつなんだけど……たぶん宮崎さんが田中に……」
しどろもどろになってしまう。
「え!タオルとかやったん!?キモ!彼女でもないのに!?」
タイガから本日2度目のキモを浴びせられる。
「宮崎さんが好きな猫のキャラクターがいるんだけど、家にゲーセンで取ったタオルあるって言ったら欲しいって言われて仕方なく……」
「仕方なく……? 喜んでの間違いだろ」
タイガはいつも痛い所をつく。
「それをたぶん田中にやったんだと思う」
とりあえずタイガの言葉は無視した。
「で、二人を見かけたから後ついて行って……」
「え!ストーカーじゃん」
「こわ!」
まあイラッとしたが続ける。
「プリクラの機械に入ってって……カーテンの隙間からチラッて見えたら……」
ちょっと深呼吸をする。
「キスしてた!!!」
「!!」
「!!」
「ってするだろ高校生なんだからそれくらい」
タイガさん冷静なんだから……
「だから決めた!リア充爆破する!!」




