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スタートライン

「この歌は自分の短い音楽人生で1番心を込めた曲です。」


カーテンの隙間から入る街頭の光に照らされてる狭い1Kの部屋。

部屋の片隅にあるギターは長いこと触っていなかったのか少し埃を被っていた。

「……昔ならパッと歌詞も思いついたのにな」

画面に映る書きかけの歌詞を横目にギターを手に取り弦を弾いた、その音は昔とは変わっていなかった。ただ孤独な部屋に独り言とギターの音色は消えていった。

「こんな歌詞じゃ違うな…」

コップに入ったコーヒーを飲み、書き連ねてあった歌詞を全て消した。

次に出演するライブイベントは2週間後、それまでに「ミュージシャン」としての青葉 詩音を作り上げないといけない。

今までに作った曲では無く、新しい何かを披露したかった。

そんな想いで青年は1人未完成の言葉を書いては消し、音に乗せては歌っていた。

「お前らは高校生だからな〜こっからは自分たちの今後を考えてしっかり選べよー」

そう言い先生は進路希望調査のプリントを回し始めた。


高校3年の春、必ず来る人生のこの先を決める進路調査。


詩音(しおん)〜!お前進路どーする!?」


「進路かぁ、何も決まってねーなー」


5月の教室、新しいクラスにも馴染めてきた頃、やけに馴れ馴れしい男が話しかけてきた。


「やっぱそーだよな!でも大学生活憧れね?!女子大生と合コン…なんつって!」


「お前毎回女の事しか考えてねーじゃん。」


この女のことしか考えていないバカは友達の山田春人(やまだはると)、高校3年間同じクラスで何かと自分と趣味が合う、そして同じ軽音部でベース担当だ。


「まぁとりあえずつぼみ先生に呼ばれてるし部室行こーぜ!」


そう言われ2人校舎の廊下を進み先生の待つ部室に着いた。


「おはーっす!」


元気よく春人が扉を開けた。


青葉(あおば)くんと山田くんか、おはよう。今日も元気だね」


扉の向こうには軽音部顧問の櫻井(さくらい)つぼみ先生がいた


「そういえば2人とも進路調査のプリント配られたんでしょ?どうするか決めたの?」


「げっ!つぼみ先生までそれ言うの!?もーいいよ!」


「俺ら特にまだこれやりたいとかが決まってないんすよね、でも春人は合コンしたいから大学行くらしーっすよ」


「ふふっ、山田くんらしいね」


なんて進路についての話で盛り上がっていた。

ただやっぱり話している内にこの軽音部との別れが近い事を実感してしまう。そんなことを考えていると部室の扉が開いた。


「お疲れ様です〜」


澄んでいるが若干気の抜けた声が部室に響いた。

同じ軽音部3年ドラム担当の瀬戸結(せとゆい)の姿がそこにはあった。


「おつ〜お前が1番遅いとか珍しいな」


「だよね〜ちょっと進路の事で担任と話し合ってたからさ〜」


「えっ!?お前もう進路決めてんの!?」


「まーねー多分2人はまだ決まってないんだろうけど」


図星だ。でも実際にやりたい事がないのは事実だ、このまま進学しても学びたいことは無いし、かと言ってこのまま働くのも正直自分に合ってる気はしない。そんなことを考えているとパンッ!と手を叩く音が聞こえた。音をする方に視線をやった


「はいはい!一旦この話はここまで!進路は多少ゆっくり考えれるからね〜て事で本題に入ろうか!今日3人を呼び出した理由について話していきましょう!」


待ってました!と言わんばかりに目を輝かせる春人に何を話されるのか戸惑っている様子の結を横目に自分も一応椅子に座って姿勢を正した。つぼみ先生の事だから突拍子も無いことを言い出すんだろう、そう勝手に思っていた。そして辺りを1度見回して先生は口を開いた。


「今日みんなを呼んだのは、引退ライブについてなんだけどね、今までカバーバンドしかして来なかったじゃない?全然カバーバンドのままでもいいんだけど、折角だし最後自分達で作詞作曲してみない?」


先生の口からは想像以上の言葉が出てきた。自分も含めて2人も少し理解するのに時間がかかったようだ。

難しく考えなくても分かる。自分たちが今までやってきたのは元々存在した音楽をただ真似て演奏して歌っていただけだ、でも作詞作曲は違う。無から、ゼロから今まで歌っていた曲を作ることだ、それがどれだけ難しい事か少なくとも高校生の自分たち3人にも分かる事だ。


「めぐみ先生…それガチで言ってる?」


「そうですよ!今までカバーバンドしかして来て無かったのに…」


全くその通りだ、流石にいくらなんでも作詞作曲は難しいだろう。


「「めちゃくちゃ楽しそう!!!」」


春人と結が口を揃えて言った。

その時の自分の顔は恐らく今までの人生で1番の間抜け面だったと思う。


「やっぱり2人もそう思う!?」


ようやくこのおかしい状況を処理しきれた、そして謎に乗り気な2人とナイスアイデアでしょと言わんばかりのドヤ顔をする先生の間に割り込み叫んだ。


「いやいや!1回冷静に考えてみよ!俺ら曲なんか作ったことないじゃん!!そんな楽しそうって理由でサクッと出来るようなものじゃなくない!?」


自分は子供の頃から楽器に触る機会があって音楽にも沢山触れてきたからまだしも、結は中学の頃、春人に関しては高校に入ってからの音楽経験だ、絶対にできるわけが無い、それに加えて進路も考えなければいけない時期だ。


「でも俺らカバーバンドっても結構アレンジ入れてるじゃん、意外と作曲もサクッと出来んじゃね?」


「確かに、それに作詞も私たち3人それぞれで1回作ってみて1番いい人の使えば良くない?!」


まるでそこには自分が存在していないかのように話がどんどん進められていく。どう考えてもリスキーすぎる。なんて色々なことが頭をよぎる。


「じゃあ、山田くんと瀬戸さんは賛成って事でいいかしら?」


また1つ、さらに1つと話が進んでいく。

少しは自分の話も聞いて欲しい。


「それで、青葉くん、アナタはどうしたい?」


「どうしたいって聞かれても…時期が時期ですし…それに引退ライブって文化祭ですよね?それまでに間に合う保証なんて…」


そもそもここで賛成になったとして、引退ライブまでに間に合わなかったら?毎年軽音部の出し物は人気だ、そこまで自分たちに期待があるとは思わないが、発表できなかったらどうするんだ。


「青葉くん…迷ってるのね?分かったわ。アナタだけじゃない、残りの2人もよーく聞いてね?」


そもそも自分はただ音楽が好きなだけだ。ただギターを弾くのが好きなだけだ。急にそんなこと言われても。


「これは私の信条であってアナタ達を今後助けるかもしれない言葉だからね。」


でも、この2人と音楽できるのなんてこれが最後なのかもしれない。それでもこんなリスクを取る事はしたくない。



「やらない後悔より、やる後悔。そっちの方が悔いは少ないと思うんだ」



悔しいな、難しい事ってのは分かってる。出来るかどうかも分からない、ましてや黒歴史になるかもしれない。

それでも正直最初から心のどこかにはあったんだ。

だから声に出して叫んだ。


「作詞作曲…やってやりましょうよ…俺らの学生生活最後のライブ今までで1番ぶっ飛んだものにしてやりましょう!!」


その言葉を聞いた瞬間つぼみ先生は少しニヤッとした。この先生にはきっとお見通しだったんだな。


「全員賛成という事で最後のライブ、アナタ達の曲でこの学校沸かせてみせましょう!それに安心して、私もできる限り作詞作曲のサポートをするわ、もちろん進路についてもね」


「ッしゃぁ!!やったるぞ!!」


「気合い入れてきますか〜!」


それぞれ決意は決まったようだ。


「2人とも、こん中で1番音楽が好きな俺がやるって決めたんだ、手抜くなよ!」


そして軽音部3年3人の忙しい毎日が始まった。

初めまして酒谷 縁と申します。

この度は最後まで読んでいただき心より感謝申し上げます。

さて、いかがでしたでしょうか?高校3年の青葉 詩音を主人公としたこのは作品まだまだ序章、音楽で言うのであればイントロですが、彼らがこれからどのような曲を作るのか、引退ライブは成功するのか、まだまだ書きたいことは沢山ありますが今回は自分自身初めての作品ということもあり少し短くさせて頂きました。また初めてこのような創作物をしたので至らないところが沢山あるかもしれません。ですが後書きまで読んでいるということは作品を最後まで読み切りたいと言う優しさがあってのことでしょう。

今後もこの「その歌は誰が為に」は続いていくのでもし今回のスタートラインで面白いと思った方がいればぜひ次の話も読んでみてください。

それでは今後とも「その歌は誰が為に」をよろしくお願いします。

以上酒谷 縁でした。また次回のお話でお会いしましょう

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