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31.ヴェルデン領での子育て

領民のオリーブというおかみさんの話です。領地改革後のヴェルデン領がどんなふうに変わったか、彼女の話にお付き合いください。

 あたしゃオリーブってものよ。この辺りで旦那と9つになる息子のアランと一緒に、ちっちゃな店で商売やってるのさ。


 でもね、次男のグランを妊娠してからは本当に不安で。だって、アランが産まれてからのしばらくは、もう毎日が本当に忙しかったの。朝から晩まで赤ちゃんの世話にかかりっきりで、店のこともなんにもできなくて。「このままじゃ商売あがったりだわ」って頭抱えてたのよ。


 ところがどっこい!王都からいらっしゃったエレオノーラ様が、まるで救いの女神様みたいに現れて、新しい子育ての制度を作ってくださったの。保育所まで建ててくださって、もう本当に「神様仏様エレオノーラ様」って感じなのさ。


 その保育所がね、これまた素晴らしいの。グランみたいな赤ちゃん専門の「つぼみ組」と、よちよち歩きの子用の「わかば組」と、アランみたいな子ども向けの「そら組」と、3つに分かれてるの。年齢に合わせてちゃんと面倒見てくれるから、安心して預けられるのよ。


 朝はまずグランを「つぼみ組」に連れて行って、それから店に戻って仕事開始。アランなんてね、店番の手伝いが終わったら毎日喜んで「そら組」に通ってるの。

 最初は「えー、めんどくさいよー。友達と遊んでる方がいいもん」なんて言ってゴネてたのよ。ところが今じゃあ、朝起きると「今日は保育所で何して遊ぶかなー」って、目をキラキラさせて楽しみにしてるの。子どもって本当に順応性があるわね。


 施設ではね、グランみたいな赤ちゃんの正しい育て方も丁寧に教えてくれるし、他にも子どもの成長に合わせたいろんなプログラムがあって。まるで魔法みたいに、子どもたちがどんどん賢くなっていくの。


 うちのアランなんか、積み木遊びにすっかりハマっちゃって。家に帰ってくると「お母さん見て見て!今日はこんなすっごいお城作ったんだよ!」って、身振り手振りで説明するのよ。その興奮した様子がもう可愛くて。


 他にも、読み書き計算を教えてもらったり、トランプやパズルやボードゲームの時間があったり。そうそう!体を動かす時間もあるのよ。ボール遊びとかだけじゃなくて、こま回しや竹馬、ぽっくりとかいう面白そうな遊びもやってて、友達もいっぱいできたみたい。

 特に面白いのが「ビジョントレーニング」っていうやつ。迷路や隠し絵探し、数字を順番につないでいくプリントなんかがあるんだけど、アランはそれが大好きで。家に帰ってきてからも「お母さん、迷路やろう!」ってせがんでくるの。


 迷路をやってる時のアランの集中ぶりったら!「絶対に壁にぶつからないように、真ん中を通ってゴールするんだ」って、真剣な顔してやっているのよ。そんな姿見てると、「あぁ、この子もしっかり成長してるんだなぁ」って嬉しくなっちゃう。


 そうそう、エレオノーラ様がおっしゃるには、アランたちが赤ちゃんの頃使ってた「エンジェル・ステイタス」とかの育児グッズは、実は体に良くなかったんだって。だからあの頃、アランがよちよちと変な歩き方してたのね。「なんでこの子、こんなふらつくのかしら」って心配してたのよ。


 でも施設で色んな遊びをしてるうちに、自然と正しい体の使い方を覚えたみたいで。最近は手先も器用になってきて、店の商品を落とすことがめっきり減ったの。前は「あ、またやっちゃった」って毎日のように商品を床に落としてたのに。


 それとね、「子育て手当」っていう制度もすごいの。子どもが3つになるまでは、家で子育てする親にお金を出してくれるの。


 アランのときには、お手伝いさんも見つけられなくて本当に大変だったけど、グランが産まれてからの3か月は子育て手当があったおかげでなんとかなってね。今は保育所に預けることもできるし、本当に天と地の差よ。「あの頃の苦労は一体何だったの?」って思うのさ。


 あとね、これからのヴェルデン領では、子育ての大切さをみんなで考えようってことになって。レイモンド様が領民集会で「領民みんなで協力して、子どもたちを育てていきましょう」って力強く呼びかけてくださったの。あの時のレイモンド様の話、胸に響いたわぁ。


 教会でもね、神父様が「子育ての大変さを理解し、地域で支え合うことの大切さ」について説教してくださるようになったの。18になった子はみんな子育ての講習を受けなきゃいけないことになって、これからもずっと、領全体で子育てのことを考えていけそうなのよ。


 この前、アランが目を輝かせて言ってたんだ。

「今日は新しいお友達のトムと一緒に、羽キャッチゲームっていうのをやったんだよ。先生が上から羽を降らせてくれて、それを親指と人差し指だけでキャッチするんだ!トムほどたくさん取ることできなかったけど、すっごく面白かったよ」

 その可愛い顔を見て、私たち家族がヴェルデン領に住んでいて良かったなって思ったのさ。子どもが楽しそうに毎日を過ごしてるのを見ると、母親としてこれほど嬉しいことはないね。


 これからもあたしも地域の子育て活動に参加して、エレオノーラ様や他のお母さんたちと一緒に頑張っていきたいと思ってるの。みんなで力を合わせて、子どもたちが健やかに育つ環境を作っていきたいのよ。


 長々と話しちゃってごめんねぇ。でもね、エレオノーラ様の作ってくださった新しい制度が本当に素晴らしくて、誰かに話したくて話したくて仕方なかったのさ。


 こうやって聞いてくれて、本当にありがとう。おかげですっきりしたわ!


次回は、エレオノーラが改革を始めてから1年後のヴェルデン領です。ヴェルデン領の変化だけでなく、エレオノーラの変化にも注目してください。

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