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104.真実はゲームより奇なり

「クラディス……?」

 フィリップの眉が、わずかに動いた。

「フィリップ様は何か知っているんですか?」

 エレオノーラが尋ねると、フィリップはゆっくりと口を開いた。

「"Crowned Destinies"のことですか?『王家に咲く愛』っていうサブタイトルの」

「え!?フィリップ様、わかるの!?」

 カミーユの目が見開かれた。

「実家で妹がはまっていたゲームの名前です。どんなゲームかは知らないけれど」

(そうなんだ。ゲームの名前なのね……?っていうことは!?)

「フィリップ様も、転生者!?」

「カミーユ様も転生者なの!?」

 エレオノーラとカミーユが同時に叫んだ。

 混乱したカミーユは、蜂蜜色の目をくるくるさせながら聞いた。

「ちょっと待って。あなたたち二人とも転生者っていうこと?」

 部屋に、驚きの空気が満ちた。


 そこで、三人はそれぞれの前世についての情報交換をした。

 フィリップの前世、エレオノーラの前世、そしてカミーユの前世。それぞれが、同時代の日本だったことがわかった。


「……それにしても、夫婦そろって転生して、しかもこの世界でも結婚するだなんて……。すごい運命ね」

 カミーユは、お茶を一口飲んだ。

「カミーユ様は、前世でも今世でもお金に苦労するだなんて……。大変でしたね」

 エレオノーラが同情するように言った。

「本当よ」

 カミーユはカップを置いた。カチャ、と音がする。

「だから、絶対に貧乏は嫌だと思ったの。絶対に贅沢してやるんだって思って、ハーマンとの結婚を考えたのに、そこにいらっしゃる王弟様からは倹約するように言われちゃうし」

 カミーユは不満そうに言った。


 ふと、記憶の底に沈んでいた一言を、エレオノーラは思い出した。

「そういえば、カミーユ様は何回か私のことを『悪役令嬢』って呼んでいましたよね。あれって、どういうことですか?」

「あなたはハーマンルートのときに、主人公に嫌がらせをするライバルって扱いだったわ」

 カミーユは視線を落とした。

「ゲームの中ではすごく意地悪だったのよ。だから、こっちもそのつもりでいたんだけど……。ごめんなさいね。中身が転生者だなんて知らないし、そもそもゲームキャラとしてのイメージでしか接していなかったから」

 カミーユはそう言いながら、小さく息を吐いた。


「クラディスはね、主人公である私が、家の財政難から政略結婚を迫られて、悪役令嬢の妨害を退けながらいろんな結婚候補と交流していく乙女ゲームなの」

 カミーユは説明を続けた。

「フィリップ様も攻略対象で、痩せていてかっこよかったけれど、フィリップ様は私のこと無視するし、他の攻略対象は全部条件に合わなかったのよね」

「無視したつもりはなかったのですが」

 フィリップが苦笑し、エレオノーラがくすくすと笑う。


「でも、ゲームではみんなスタイル抜群だったのに、現実はどうしてあんな体型になってしまったのかしら」

 カミーユは首をかしげた。

「ハーマンも、ヒューゴも、そして以前のエレオノーラ様も。他のルートでの悪役令嬢のフランソワ様もそうね。レイモンド様だって、ゴリマッチョなんかじゃなかったのよ」

 それに対し、フィリップは低く答えた。

「それは……アンドリアンの策略のせいですね」

「正しく体を使えないと、太りやすいのです」

 エレオノーラが補足する。


「アンドリアン……」

 カミーユは顎に人差し指を当てて考えた。

「どうして、アンドリアンはゲームと違う動きをしたのかしら。そんなに目立つ動きをするキャラじゃなかったのに」

「……ここにこれだけ転生者が集まっているくらいだから、他にもこの世界に影響する何かがあったのかもしれませんね」

 フィリップがつぶやいた。


「兄上には、カミーユ様が転生者だということは?」

「さすがに、それは……。言っても信じてもらえるかどうかもわからないし」

 カミーユがうつむくと、フィリップは腕を組んで考え込んだ。

「私も伝えていませんからね……。さて、どうしたものか。もしかすると、また今後、アンドリアンみたいにこの世界に影響する何かが起こらないとも限らないですよね」

 三人の表情が硬くなった。やっと解決して手に入れた平和な日常が、また脅かされるとしたら……。


 エレオノーラがふとスタンダル帝国製の精巧な時計を見ると、もう夕食の時間が近づいていた。

「また明日にしませんか?今、何かの脅威があるわけではないし、急いで考えなくてはいけないことでもないですよね」

 その言葉に、フィリップが肩の力を抜いた。

「たしかに、その通りだ。また根をつめて働きすぎると、エレオノーラに叱られてしまうからね」

 仲のいい二人の様子に、カミーユが苦笑する。

「それじゃあ、明日の午前中に、また集まりましょう。そして、具体的な陛下のダイエットについても話を詰めたいわ。お願いできるわよね?」

 エレオノーラが笑顔でうなずいた。

「えぇ。明日、資料をお持ちしますね」


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