06.古いワンピース。
「ひろっ……」
部屋の広さに思わず呟いた。
部屋の中に入ると、クイーンだかキングサイズだかの大きなベッドが壁際に、手前には飴色の綺麗な装飾のイスとテーブルがあった。部屋の奥には大きな窓があり、左手にはバスルームがあるようだ。天井には小ぶりながらも豪華なシャンデリア……それが余裕で治まる部屋のサイズだ。
「バスルームはこちらで御座います」
呆然と突っ立っていると、使用人の女性が背後から声をかけてきた。
「すみません……」
小声で謝り少し頭を下げて、着いて行く。
バスルームも豪華だった。
多分、大理石とかなんだろうなーこの石。
白い石に扉はガラス張りのバスルーム。
何だか今が現実なのかわからなくなってきた。
「お着替えはこちらをご使用ください」
「はい……」
使用人の女性は去って行った。
さ、念入りに身体洗いますか。一応、礼儀として。
置いてあったシャンプーやボディーソープはとてもいい香りがした。洗っていて心地よい気分になる。
さっきまで死のうと思ってたのが信じられないくらいだ。香りの効果ってすごいんだな。
待たせるのは悪いのでバスタブには浸からず、シャワーだけでガラスの扉を開いて出た。
用意された洋服を見て、私は少しぎょっとする。
下着まで用意されていた。それも高級そうな、刺繍が前面に施された淡いピンク色。
はっきり言って趣味ではないが、西園寺璃央の趣味はこういうのなのだろうか……まぁ、私がつけていた上下別々の一枚二千円以下のブラジャーと三つで五百円のショーツでは確かにやる気も出ないか。
というか、サイズが合わないのではないか……まぁ、すぐに外すから何でもいいのか。
溜息を吐きながらブラジャーを身に着ける。
え、うそ。サイズピッタリ。しかも今まで感じたことのないフィット感。何で?
ちょっと怖くなる。
ショーツも履くと、これもピッタリだった。
恐怖を感じながらも、次に置かれた洋服に手をつける。
広げるとそれは少し古いワンピースだった。
私には似合いそうもない、エレガントでシンプルな花柄の上質なワンピース……。
何でこんなワンピース着ろと……?
少し考えたが考えても答えは出ないので、袖を通す。
あーあ、ほらダボダボだよ。
マキシ丈ワンピースになっちゃったし、袖も長いし……何なの……。
まぁ、何か思い入れのあるワンピースなのかな。
濡れた上質なバスタオルを軽く畳んで置き、私はバスルームを出た。