21.狂気の中で伝えた言葉。
「この部屋だよ」
連れてこられたのは、前よりは狭いが十分な広さの部屋だった。
ベッド、バスルーム、トイレ、チェストに高級そうなテーブルとイス、すべてきちんと備えられていた。
ただ気になったのは、カーテンがきっちりとしまっていて、部屋のシャンデリアの灯りがついていたこと。
「少しの間この部屋で過ごしてね! また戻れるから」
「はい……」
綺麗な笑顔を私に向ける璃央に、戸惑いながらも返事をした。
「あ、そうそう。カーテンは絶対に開けないでね。開けたら……もう地下室で暮らしてもらうしかなくなるから」
璃央の言葉に息を呑んだ。
璃央を見ると笑っていたが瞳からは光が消えていた。
「はい……絶対に開けません……」
「絶対に開けないでね。まぁ、開けてもあの庭師はもういないけど」
「え……もしかして解雇したんですか!?」
私が叫ぶように言うと、璃央の顔から笑顔が消えた。
「そうだよ……何? そんなにあの庭師に会いたいの? 好きだったの?」
璃央がまた無表情の狂気に満ちた瞳を私に向ける。
「いえ……そういうわけじゃ……」
しまったと思いながら、ジリジリと迫ってくる璃央に私は視線をそらしながら後退りする。
背中が壁についた。
「そんなに僕よりあの男がいいの? 茜は僕の物だよね? 僕よりあの男を……」
「り、璃央!」
私の顔の横の壁に手をついて顔を近づけて捲し立てる璃央の名を呼んだ。
「違います! ただ、解雇されると……仕事がなくなって、お金に困るから……私のせいで解雇されて……申し訳ないなって……」
お金のない辛さは人一倍知っている。
「……そうだよ……全部茜がいけないんだ……全部全部全部! 庭師がクビになったのも! せっかく幸せだったのに茜が他の男を見たから幸せが壊れちゃったのも! 僕の中にわけのわからない気持ちがあふれて苦しいのも! 全部全部! 茜のせい!!」
鼻が触れるくらい近くに顔を近づけ、璃央は怒ったように叫んだ。
「何で茜は……僕だけを見てくれないの……君も僕を捨てるの……?」
璃央が私の肩に顔をのせて、小さくつぶやいた。
璃央の言葉に……私はすべて理解し、確信した。
「璃央……私、璃央が好きです……」
そして璃央の背中に腕を回し、抱きしめながらその言葉を伝えた。




