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14.生きてて、よかったかも。
朝食を食べ終わり、ごちそうさまでした。と、背後の使用人さんに伝えると、朝食は片付けられ、使用人さんも部屋を出て行った。
「…………」
私は何もすることがないので、ベッドに座り、大きな一枚ガラスの窓から見える広大な庭を見ていた。
(広い庭……維持費で私の生活費何か月分だろう……)
そんなことを考えつつも、薄暗く狭いあのアパートに比べれば、ここは天国だな。と、思った。
太陽の光が燦燦とそそぎ、あたたかく、気持ちが穏やかで幸せな気持ちになる。
視界に広がるのは綺麗な木々や花々の庭。
部屋の空調も快適な温度湿度に保たれ、ふかふかの清潔なベッドに座っている。
美味しいご飯もたくさん出る。
お風呂は大理石。
(しあわせって……こういうことを言うのかな……)
今、置かれている状況に、私はしみじみそう思った。
(働かなくてもいいしね)
ここで静かに庭を眺めて、璃央の相手をしていればいい。
今までの人生を考えれば、これはどんなに幸せなことだろう。
「生きてて……よかったかも……」
私は生まれて初めてそう思い、思わず呟いてしまった。