表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は魔王!  作者: bebop
26/27

枯れ枝男

赤色のスカーフから感知した魔力を辿り、森の中にひっそりと建っている屋敷に着いた。




もう何年も住人が暮らしていないであろう様子で、あちこちの窓は割れ、庭木が荒れ、より一層うっそうとした雰囲気を出している。




「アス、何人かの生体反応があるな。」




ほう、流石勇者だな。この微量で弱々しい反応が分かるとは。




「3人…くらいか、生きている反応があるな。乗り込むか?」




そう言って傾いていたドアノブに手を掛けようとしたら、そっと手を握られた。




「ここではレディーファーストなしだ。アスは俺の背中に。」




「はっ、魔王に対して言う言葉ではないな。私の後ろからついてくるがいい。」




面倒事はさっさと片付けるがよし。


がこっとドアを開け、中に入る。




昔は絢爛豪華であったろうロビーに、無数の足跡があり奥へ続いている。




「比較的新しいな。奥へ行くぞ。」




足跡を辿っていけば、地下への階段に着いた。




「ときに確認なんだが…。この屋敷はもう使われてはいないよな?誰も住んではいないよな?」




「そのようだな。なにかするつもりか?アス。」




「いや、壊した際の弁償などは、まぁ、その、問題にはならんよな?」




「壊すのか?」




「時と場合によっては…だ。空き家は犯罪を促進するだろ?この間の奴隷市場のような事もあるからな。」




子供や女性が犯罪に巻き込まれるのを見るのはイヤだ。ならその温床となる場所を無くせばいい。




地下への階段を降りていくと、格子のある部屋が並んでいた。




「地下牢か。貴族の屋敷らしいな。」そう呟くと、




「誰!?誰か居るの!?」




扉が壊れた牢の中に座り込んでいた、若い女性が叫んだ。




チラッと私の顔を勇者が見て、その女性に近づく。




「誰かに捕まって、この部屋に閉じ込められたのか?怪我は?」




「街を歩いていたら急に拐われ、気がついたらここに…。怖くて怖くて…」




しくしくと泣き出す女。




「あなたの他に誰か居るのか?」




「分かりません…。他に声が聞こえないので、私一人かもしれません。早くここから助けて下さい!」




はらはらと涙を流し、儚げな女性。




「自分で出ろ。」




「!?ひどいっ!そんな言い方!一人で出られなくて、困っていたんです!助けて下さい!」




冷たく言い放った私を睨み、勇者にすがろうとする。




「もうそういうのいいから、さっさと出てこい。」




勘違いしないで頂きたいが、決して私は同性に厳しい訳でも、無慈悲な訳でもない。




「ひどいです!助けに来てくれたのではないのですか!?怖くて足が動かないんです!」




「ほぅ。」




言うなり私は女目掛けて火球の魔法を放つ。




「!」




私が放った魔法は、女には当たらずボロい羊皮紙に吸収された。その女が咄嗟に出した羊皮紙に。




「ふん、吸収の陣が書いてあるのか。小賢しいな。」




「……貴様は魔王か。なんでブレイブと行動を共にしているんだ。」




ゆらゆらと女の周りが揺らぎ、黒い靄が覆うと、中から黒いローブを着た枯れ枝のような顔の男が現れた。




「残念だがバレバレだ。あんまり頭がよくないだろうお前。」




「きっ!貴様っ!私に対してなんてことを!まぁいい。余裕ぶっていられるのももう終わりだ。くっくっくっ…さあ ご自慢の魔法を打ってみろ!」




そういうと先程の羊皮紙を高々と掲げる。




「アス、すまないが程ほどにしてやってくれ。根はいい奴なんだ。」




勇者が私を見て、すまなさそうに言った。




ということは、この枯れ枝男は勇者の仲間の一人か?




「ではご要望通りに、火力を上げてみるか。」




メキメキメキと私の頭に深紅の角が伸びてくる。




気分が高揚してくる。体温が上昇する。




「あぁ、綺麗だな。アス。」




うっとりと見てるんじゃない勇者。




こういう時はむしろ私を止めないといけないんじゃないのか?いいのか?




「わ、私はもう昔のランバードではない!あの方の力を頂いて、魔術の最高峰を…」




どおぉぉぉぉん!




轟音と共に、少し火力を上げた火球が羊皮紙を突き破り、枯れ枝顔男に命中した。




「がっ…途中で…最後まで…言ってな…い…」




白目を剥きその場に倒れる枯れ枝。




「まったく、お前の禍々しい剣といい、こいつの似合わない趣味の悪い指輪といい…。人間国はいつから禁忌魔導具が気楽に手に入るようになったんだ?」




「俺の剣は国王に貰った。」




そっと勇者の剣に触ると、ブワッと黒い霧が涌き出て、霧散した。




「お前だから普通に扱えたんだな。普通なら取り憑かれてるぞ。」




「ま、害がなかったから使っていただけだ。案外手にしっくりくる。」




「お前の性格が暗黒寄りだからじゃないのか?やれやれだ。こいつはここに置いておいていいだろう。妹を探すぞ。」




「アス…一つ頼みがあるんだが…。」




「何だ?この枯れ枝をどうかするのか?担ぐのはイヤだぞ。」




「アスのその綺麗な角に触らせてくれ。」




「はっ!はあ!?バカじゃないかお前!触らせる訳ないだろうっ!ダメだ!ダメだっ!!そのうっとりした目を止めろ!こら!にじりよってくるな!」




「大丈夫だ、すぐ済む。ほんの少しさわるだけ、大丈夫痛くない。な?」




な?じゃないっ!!




私は奥の通路目掛けて走り出した。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ