冒頭8
あの後出された課題を不本意ではあるが、香里に手伝ってもらい、夜も遅くなったので香里を送る事にした。
あいつの力を借りたのは不本意、送るのは友達だから、それと課題の恩だ。そこんところ勘違いしないように。
「本当に貴方はツンデレね。こうやって腕を組んで送ってくれるなんて」
「うるさい、腕は組んでないし、流石に夜の一人歩きはさせたくない。なんかあったら寝覚めが悪い」
「はいはい、ツンデレツンデレ」
一発ぶん殴っていいだろうか?もちろんグーで。
そろそろ梅雨で夏も近いせいか少し暑い。そんなことを思ってると香里が呟いた。
「でも、夢みたい。こうやって貴方と一緒に並んで歩けるなんて」
「そりゃ安い夢だね。俺はまだ疑ってるぞ、これから高価な壺とか売られるんじゃないかと」
「あら、浄水器しか取り扱ってないわ。残念」
「やっぱり目的はそっちかよ!?」
「嘘よ。そうね、私が貴方に恋した理由をちゃんと言ってなかったわね」
「聞いてない、なんか勝手に俺を評価してそれで恋したとか理解不能な事は言ってた」
俺がそう言うと香里は辺りをキョロキョロと見回す。
「少し、寄ってかない?」
そう言って指差した先は小さな公園だった。
「こう言うのってよく本なんかにあるシチュよね? どっちかが飲み物買ってきて………」
公園の中のベンチに二人で腰掛けている。香里は楽しそうに手を合わせ合掌のような仕草をしながら笑っている。
よく思い出すとたまにそういう仕草をしていた。「あら」と合掌の仕草は癖かな、なんだか妙な所ばかり見てしまうな、香里美々。
「分かったから、さっさと本題」
「せっかち、少しは会話楽しませなさいよ。友達なんでしょ?」
「友達だから言いたい事を遠慮なく言ってる」
俺がそう言うと香里は「にまぁ」と本当に音が出たんじゃないかと言うぐらい気味悪く笑った。
「………なんだよ?」
次の香里の発言がいつまで経ってもこないし、気味悪く笑い続けてるので、たまらず聞いてみる。
「別に、な~ん~で~も~」
「ムカつく、一回で良いから頬をつねっていいか?」
「さっさと話を始めましょうかね」
「無視すんなよ!」
「うっさいわね」
だから、気分を害してんのは俺だ。そう言うとまた回り道してしまうので、俺はここで大人になる。
「さて、いい加減話せよ」
「そうね、聞いてほしいわ。香里美々の初恋の話」