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十一話2

それにしても感慨深いというかなんというか……………


風呂場の浴槽の中にて藤宮藤谷は思い、考えた。香里と付き合いだして少し経った。少し思い出に浸ってみる。


ちゃんと話すようになったきっかけは、無理矢理な告白、理解不能な行動、考えたら嫌な思考の螺旋に陥りそうになるのでふんわりやんわりやわらかく良いところだけを思い出す。


そういやいつから好きになったんだろう?


難しい疑問である。人を好きになる瞬間は大きく分けて二つあると藤谷は考える。


ゆっくりと思いを育み好きになっていく形と、大きなきっかけをもって好きになるという形、藤谷はもちろん前者…………と言いたいが出会いがアレだし実は後者?いや、理屈じゃないんだ、人を好きになるのは………無論、ただこの台詞を言ってみたかっただけである。忘れてください。


香里の婚約の件、ご都合的にいきすぎだと私、藤宮太陽藤谷は考える。考えてばっかだな俺は、しかも風呂場で。


整理すると、親父とあの二人、香里と透の父親ーズが友達で何か会社の合併だか資金援助がなんだかの話の為に二人を婚約させた。だが、それを嫌と言われたので、まいっか、で問題解決………軽っ!


その勢いで美々をよろしくと父親に言われたらしい(俺の親父が)その内やっぱり会いに行くべきだろう。


一番引っ掛かってたのは親父の急な帰国、あれは香里曰く『私は賭けをしたの、布石をいくつか置いて、結果藤谷と結ばれた私の大勝利! ぶい!』らしい。


一つがホテルでの俺との一日、更に香里曰く『出来るだけドラマチックにしてみました。藤谷が思い立つように』だそうです。もう一つが親父への電話だ。何を言ったのかは知らんが帰国して来たんだからそれなりの事は言ったのだろう。


それで行動を起こした俺の負け、完敗だ。でも、俺は結果恋人が出来たわけだし勝ちと言えば勝ち、大勝利、ぶい。


夏場なのに随分長風呂してしまった。まぁ夏も終りだが、いい加減出るか……………キーワード『夏場』『夏の終り』『いい加減』


「しぃぃぃまっっっっっとぅわぁぁぁぁぁっっ!!!」

慌てて風呂から上がる。タオルでバーッと体を素早く速く、ラディカルにグッドにスピードで拭き。


パンツを穿いたところで唐突に目の前の扉が開かれた。


「あれ?」


「あれ? じゃない! さっさと出ていきなさい。後は服着るだけだから少し待ってくれ」


藤宮アイ、藤谷の家族にして、白い、純白の頭ふんわりほんわかぽわぽわの少女、しかも超能力者、実はこれも親父曰く後数年で消えるらしい。子供の夢だとか、夢が力になって、夢が………うんぬんかんぬんなんとかかんとからしい。つまり理解不能な彼女ツー、言ってみたかっただけです。


「違うよとうや。今のあれ? は、あれ服着てる一緒に入ろうと思ったのにのあれ? だよ?」


なんでこんな簡単な問題も解らないの?馬鹿?そんな感じで首傾げてる家族にチョップしてやろうと思ったが藤谷はそこで動けなくなった。


最初は扉から顔だけを覗かせていたアイだが、扉が開きその全貌が明らかになっていく。真っ白だった。


「ふ、ふふふふふぅ」


「と、とうや? てれびでみた危ない人みたいになってる」


「危ないのはお前だぁぁぁぁっ!! 服を着ろ服を!!」


「ばっかだなぁ、これからお風呂に入るのにお洋服着てちゃいけないんだよ」


さっきと全く同じ感じを出しながら笑う、いや、全部おかしい、全て、総じて、なにもかも!


「まぁいいや、一人ではいろ」


そう言って近付いてくる白、白、強烈な白の力。自分には恋人どころか妻になる予定の人がいると念仏のように心の中で唱え、釘付けになった目を気合いで閉じる。


「ふにゃっ!」


その謎の一言と共に胸に衝撃、目を瞑っていたため、踏ん張りはきかず、藤谷は倒れる。なんとか背中を床にぶつけた位で何にも当たってなかったが、覚悟してない痛みはやっぱり痛い。


「ごめんなさい。とうやのパジャマに引っ掛かっちゃった」


えへへ、と笑うアイ、なんとか平静を保とうと香里の笑顔ばかりを思い出す藤谷、藤谷はこの時予測していた。超能力はないが未来が見えたと言っても過言ではないほど未来が予測できた。


扉付近を見る。やっぱり香里、いい加減香里と呼ぶと機嫌を損ないそうなので美々が立っていた。


「や、やぁ…………」


「あら、藤谷君、私今からすっごく怒ると思うけど後悔してね是非に!」


最近女の子の言葉使いだったから久々に聞く香里の………訂正、美々の冷たい口癖、


「いや、これは、これは違う…………」


そして、痛いくらい冷たい笑顔、


「執行!」


今日で俺は終わった。

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