冒頭7
「いやもう読めてたよ、読めてたけどさ。あえて突っ込みを入れなかったんだよ分かる? 俺の痛いくらいな純情分かる?」
「貴方が一体何の話をしてるのかなわからない。あのキャラ疲れるわね、あまりやりたくないものだわ」
「なんでやっぱり部屋までついてくるんだ!? それと大してキャラ変わってねぇよ!」
ムッとした顔した香里は俺の横を通り過ぎてベッドに横たわって布団を被った。
「いやいやいやいや、意味わかんない。気分害したのは俺で、若い健全な男子の部屋のベッドでいきなり寝だす君の頭がわからない!」
「うっさい、別に襲っても問題ないわ、合意だし」
布団の中から返答してくる常識不足さん。
泣きそうに、いやむしろもう涙は頬を流れてるかもしれないが、机に備え付けの椅子に座って鞄から今日渡された課題を取り出す。
一応少し位はやっておいた方がいいだろう、小テストが近いし。
もそりと布団から、自称恋人が這い出てくる、補足としてはあくまで自称、これからも自称だ。
「あら、感心ね。無理矢理押し付けられた課題を律儀のその日の夜に始めるなんて」
そう言って俺の後ろまで移動してきた。そういや、頭いいんだよなこいつ、やることなすこと滅茶苦茶過ぎて忘れてたよそんな設定。
「お前、やっぱり頭いいんだよな。IQ凄いらしいし」
椅子を反転させ、香里と向かいあうような形にする。
「はて、IQなんて測った事ないわよ。それはデマでしょう、後、頭が良いと言ってもただ記憶力に自信があるだけ、そりゃ教科書丸暗記すればテストの問題なんて間違えない」
「後半は十分すげぇよ!」
「あら、見直した? それとも惚れ直した?」
「素直に記憶力は凄いと思うが、惚れてもないものを惚れ直す事はない」
そう言うと香里は口を尖らせ、こっちへ体を近付けてきた。
女性特有の優しい匂いがあまりに近くに寄ってきたので、少したじろいでしまったが、何とか気合いで持ち直す。
「なんだよ?」
なんか悔しいが声が少し上擦ってしまうが、何とか香里を睨みつけ強がってみる。
「ここ、間違えてる。教科書見ながら間違うなんて器用な事するわね。それとこの程度で挙動がおかしくなるなんて、女性経験なしは大変ね」
「う、うるさいな。お前はあんのかよ?」
「ないわ、男性は貴方にしか生涯興味ないもの」
………そう言って微笑んだ姿はちょっと可愛いと思ってしまった。