八話4
嘘だろ、夏真っ盛りだぞ?いくらなんでも空きすぎだろ。
普通のりぞーとすぱだったら、泳ぐどころかつかるだけと聞いたぞ。
現在、りぞーとすぱの室内プールにいる。流石は高級ホテル内部のりぞーとすぱ、周りにいる人も何だか雰囲気が違う。藤谷は自分が酷く場違いな気がしてならなかった。
というか遅いなぁ………………本当に女性の着替というものは………
「お待たせ」
………………世界は停止した。
「…………何固まってるのよ。そういう時は感想でしょ」
香里は水着だった。簡素に説明するとそれで済むのだが………
「い、いや、そのマジで似合って………る」
何言ってんだ俺、まだしっかりと見てもいないのに、なんか反応で言ってしまった。
というか凝視できない。チラチラ見てしまう。変態じゃないんだから。
「ちゃんと見てよ。結構勇気いるのよこの格好」
香里は頬を染めながら、気恥ずかしそうにしてるが、四文字で表すともじもじ、もじもじしてる。それで香里美々のどこかがとても強調されている。
「いや、本当に似合ってる。だからと言ってあんまり凝視するのは失礼かなぁ………って」
「その褒めてくれるのは嬉しいけど、貴方のためにこの格好してるんだからちゃんと見てほしいな」
なんだキャラ変わってるぞ香里さん、つか可愛いなチクショウ。
よく解らない甘ったるい空気に包まれている事に気付くまでこのやりとりは続けられた。
「わ、笑わないでよ!」
「い、いや、笑って……ぶふないよ」
二人でプールで泳ぐ事にしたのだが、香里が耳まで真っ赤にして文句を言ってるがなんでかと言うと、
「私が泳げないのそんなにおかしい!?」
そういう訳だ。
それなのに少し深めのプールに入る事を提案した香里は、藤谷の肩に掴まったまま小さくなっていた。
「そろそろ足がつかないんじゃないか?」
「う~」
ヤバイ、すっげぇ楽しい、泣きそうになってる香里すげぇいい。
長方形のプールだが、中心に行けば行くほど深くなるプールだ。藤谷は香里が怖がってるのを見るのが逆に怖いくらい面白かった。
「もうだめ……」
「こ、こら! 暴れるな危ない」
足がつかなくなったのだろう、暴れ出して掴むどころかしがみついてきた。
「…………」
香里は藤谷の首に腕を回し、後ろから抱き締めるような形になる。
気まずくはなく、何だか暖かい空気になる。不思議だった。