七話6
「つーかアンタ馬鹿でしょ!?」
指を指されて力強く宣言された。と、思ったら肩で息をしだした。
「なんだよ急に」
「はぁ? 何が急よ。迷子の子供がいれば迷子センターに、道がわかんない人がいたら教えてあげようとして結局わからなくれあたしに聞いて、老人が荷物持ってたら車まで運んで」
「しょうがないだろ。迷子は放っておけないし、道がわかんないなら教えてあげたいし、老人が荷物持ってたら持ってあげるだろ普通に」
子供に関して昨今物騒だ。こうやって周りの人間が気を付けて、弱い者を守らなきゃいけない。
「なんでそんなに見付けられんの? こんなに人だらけなのに………センサーでもついてんの?」
「なんだかんだ文句言っても、手伝ってくれる椎子が優しいやつだってわかったからいいよ」
「なっ、あたしはよくない…………」
ぶつくさ言いながらも迷子センターを教えてくれたり、道を教えてくれたり、荷物運びを手伝ってくれた。なんだか微笑ましくて自然と頬が緩む。
その本人である椎子は頬を赤で染めて、そっぽ向いて恥ずかしがってるが。
「とうやー!」
「この声は」
人の喧騒の中でも藤谷の耳に響く、楽器のような綺麗な声が聞こえる。そんな声を持つ知り合いは一人しかいない。
藤谷は声のする方向へ振り向いた。
腹部に衝撃、きゅうしょにあたった。藤谷は大ダメージを受けた、藤谷は駄目になった。
膝をついて腹部を押さえる。痛いというか気持悪い。
恐らく走ってきて、勢いを殺さずに頭突きを放った少女は申し訳なさそうな顔をして藤谷の顔を覗きこんでいる。
「…………アイ、人間には、な。弱点が豊富にあるんだ、だから気を付けてな………」
「う、うん。ごめんなさい」
「んじゃ、あたしは行くわよ。目的は達成出来たし、じゃーねー」
ようやく苦しみが和らいできて、立ち直った頃、椎子は別れを告げて、人混みの中に消えていってしまった。
目的って、人助けだったのか。そんなわけないよな。
「そういやアイは服決まったのか?」
「うん、綺麗なの一杯だよ。だから、みみ達がお昼にしようって」
そう言われて携帯で時計を確認する。気付けば昼を少し過ぎていた。思ったより時間が経ってたらしい、体内時計はそれなりに自信あったのに。
「あら、迷子センターに行こうと思ってたら会えたわね」
嫌味な笑みを浮かべ香里さん降臨。