七話4
所は大型のショッピングモール、内部は女性物の服を中心に、他にもアクセサリー類等々販売していて、映画館まで中にある始末。
藤谷は上京したての田舎者の様に辺りをキョロキョロと見回し、感嘆の溜め息をついた。
ここまで駅までの徒歩を入れて一時間弱、活気のある雰囲気に呑まれて疲れもどこへやら。まだその辺子供なんだな自分も、と藤谷はおかしな悟りに辿り着いた。
アルファベットのVの形をしたショッピングモールは、西が衣料関係、東が食料関係、合わさった中心に映画館や家電等が販売されている。
案内を眺めて、更に感嘆の溜め息を吐き出す。
「藤谷、迷子にならないようについてきてね」
平日とはいえ、かなりの人で賑わいを見せていた。中には夏休みを利用して来たと思われる、学生らしき人間もいる。
「ああ、子供じゃあるまいし。それに俺がいなくたって、目的はアイの日用品なんだから最悪アイにお前がついてて………くれれば…………」
香里と先輩とアイは並んで歩いていた。うん、その背中をついて行ってたんだよ、背中を見てたんだ。気付いたら、似たような服を追い掛けて、知らない人に長々と語って…………言われた直後に………迷子になって………
マズイ、何がマズイって恥ずかしいのと、香里に何を言われるかわからない。
不幸中の幸いは自分で言った通り、俺がいなくても問題ない事だ。不幸中の幸いと思ってないと、香里の罵倒の言葉に耐えられそうにない。
「お兄さんさっきからキョロキョロして迷子?」
背後からそんな声が聞こえる。辺りにキョロキョロしてる男性はいない、恐らく自分に声を掛けてきているのだろう。
「ねぇってば! 無視すんなよ」
振り返る。
中学生位の少女がいる。髪を二本に分けて、いつぞやに香里もやっていたツインテールというやつ、とピンクのワンピースが目立つ少女、切長の目がこちらを値踏みするように見つめてくる。
「ふぅん、素材は悪くないけど服のセンスダメダメね」
普通に値踏みされていた。
「んで、君何? 急に声掛けてきて」
逆ナン、なんて言葉を最後に付け加えようとしたが、そんなわけないじゃん、みたいな反論が返ってきて、論破されそうなのでやめておく。女性との口論に今まで勝った例がない。
「ん? 迷子のお兄さんが可哀想だから声かけたの。私ちょうど今暇だから付き合ったあげる」
そう言って少女は頬を吊り上げた。