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六話5

ようやく夏の雨の日が終わろうとしていた。


湯船に身を預け、今日の疲れを湯に溶かすように癒す。ボーッと天井を見ている時に事件は発生した。


「とうやー!」


「とうやー!」


お約束。


風呂場の扉を開けて飛込んでくるアイ、そしてもう一人その真似をしている誰かさん。


「なぜお前は止めないで一緒に入って来ている!」


「とうやー」


「ちょっと似てるのが腹立つ!」


「ちゃんとアイにもタオル巻いたんだからいいじゃない!」


ふん、と態とらしくそっぽを向く香里さん、アイはその間に湯船に入ろうと手を掛けている。


「だから気分害してるのはこっちなんだよ! ってアイ、ちょっと待て、俺は出てくから!」


「やー、とうやも一緒だよ」


「お前実は俺達と同い年だったんだろ! ちゃんとその辺踏まえてだね………って入るな、タオルを取ろうとするな。香里、お前何体洗う準備してんだよ!」


「あら、湯船につかる前に体を洗うのは常識でしょ」


「真顔でお前が常識を語るなぁー!!」


藤谷の安らぎの時間は、カオスの空間へと変貌した。












その二分後、藤宮藤谷は自室にて肩で息をしていた。全力で脱出し、上半身裸でへたりこんでいた。


とりあえず着替を済ませ、ベッドに落ちる。







「………あれ」


どうやらそのまま眠ってしまったようだ。うつ伏せの状態から両手をついて起き上がろうとすると何か柔らかい物に触れた。


「………………」


思考停止。


再試行。


失敗。


強制復帰。


「うわぁぁぁぁっ!!」


更に何かにつまづいて、ベッドから落ちる。


「にゅ………とうやうるさいよ」


「ええ、大人なんだから静かに寝れないの?」


アイは目元を擦りながら、香里は起こされて不機嫌な顔で二人は起き上がる。


「香里! なんでお前はアイを止めずにそれに乗っかって行動するんだ!」


半目でこっちを睨みつけ、香里は少しの間静止する。間を空けて平坦な口調で口を開いた。


「アイが『○○を行動したい』と言った場合、私がそれをしたくなければ反対するけど、藤谷とお風呂及び睡眠はしたかったから賛成しました」


ああ、駄目だ、これは何言っても駄目だ。


「俺はどこで寝ろと?」


「ここ」


香里がベッドを指差す。


「君達は?」


「ここ」


再度ベッドを指差す。


「アイ寂しい、だからとうやと寝たい」


枕にしがみついて今にも泣き出しそうなアイの表情は正直卑怯だ。


考えてみれば、ここまで一人で旅して来て、俺を頼ってるんだから邪険にはできない。まだこの少女には謎の部分は多く残ってるが。


「しかし、君も子供じゃないんだから、そのへ…………んわきまえ………今日だけだぞ」


「「わーい」」


二人で声を合わせて喜びやがって、今日はクーラー強めにかけよ。


藤宮藤谷、女の涙にとてつもなく弱い男である。

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