六話2
その日は雨だった。
この格好つけた言葉が指す今日は、決してただ香里に悲しい現実を見せられた日だという事ではなく、重大な変化が訪れたからだ。
そう、こんな格好つけた言葉使って誤魔化さなきゃやってらんない出来事、って滅茶苦茶他意だらけじゃん。
始まりは一本の電話、相手は藤宮宗二、そう、職業冒険家の藤宮藤谷の父親だ。
お昼が過ぎた頃、香里と作ったカレーを食べて食器を洗ってる時に電話がきた。食器を香里に任せ電話に向かった。
「はい、藤宮です」
「もしもし! 藤谷か!?」
言わなくても声と台詞で誰かは簡単に判別出来る。さっきから後ろで鳴り響く銃声と、誰かの悲鳴が気になって仕方ないが。だが、気にしてはいけない、相手はなんたって藤宮宗二なのだから。
「それ以外に誰が出るんだよ?」
「お前の未来の奥さんがたまに出るじゃないか」
実を言わなくても、半居候状態の香里さんは家事はおろか、電話にだって出てくれます。凄く助かってるんですが、父親からの電話を勝手に会話して、勝手に切るのはやめて頂きたかったりする。
その時の自称は『未来の奥さん』『貴方の未来の娘』『むしろもう娘』とか謎の自称を言ってから会話するらしい、なぜかその香里美々本人が自慢気に語ってた。藤谷はそれに対してもう何も言わない事にした。
「それで? 今回はどうしたの?」
脱線したら長くなりそうなので、本題を出して貰うことにした。
「ああ、父さんな、まだ帰れそうにないんだ。んで、一人女の子拾ったから、そっちに向かわせた。今日の午後一時位に着くらしいから駅に迎えに行ってくれ」
「はい?」
拾った?拾ったってなんだ?女の子?猫とか犬とかじゃないんだよな。
「孤児らしくてな、なんだか可哀想だからつい、な」
「……………」
つい?ついってなに?ついで孤児拾うか?………………そういや、俺も似たような境遇だった。
藤谷だってこの男に拾われた。だからと言ってもう一人拾って良い理由にはならない。
「白い服着た可愛い子だから、後よろしく」
なにか爆発音共に電話はそこで切れた。
既に藤谷の頭は父親の安否という下らない事はシャットアウトされ、白い服着た謎の少女の事ばかり。
「時間は………一時半じゃん」
確信した事は二つ。
一つは自分の父親は日本に居らず、時差というものをちゃんと理解してない。
もう一つは、大遅刻だということ。