五話4
「行かなくていいの?」
「別に俺がいなくても楽しそうじゃん、木だらけとか特に」
パラソルの下、俺と香里二人仲良く(?)並んで座っている。
相変わらず香里は不機嫌、膝を抱えて海を眺めている。
あの女子三重奏はこっちをいじるのに飽きたらしく海を満喫している。
「藤谷、なんで皆を誘ったの?」
初めて海から視線を外してこっちを見ている。その目は責める感じではなく、疑問、ただ疑問が浮かんでる。
「いや、まだ夏は始まったばかりだし、二人きりで海なんて何していいか俺にはわからんから」
「あら、なら二人きりの約束はまだなくなってないし、守る気はあると?」
「ああ、だから今日は楽しんでもらえないか?」
「楽しむというのは強制されるものではないわ」
そう言うと香里はスッと立ち上がりパーカーに手をかけた。
そして座る藤谷に手を差し出す。
「さぁ、行きましょう? 楽しませてね」
「あ、ああ。お前凄いの着てたんだな」
黒、布地が少ないソレは陽光に反射して輝いていた。白、そしてソレに包まれる肌は透けるように白い。
「あら、そうかしら、これぐらい普通じゃない?」
「女子の基準はわからんのだが」
一緒に並んで海を目指す、思った他砂も熱くない、裸足で歩けるほどだ。
「でも、貴方はまず一番に言わなきゃいけないことがあると思うわ」
誰かの真似して態とらしく右手の人指し指立てる香里。
言うまでなく感想を言えということだろう。ここで失敗して、折角岩戸から出てきてくれたのにまた閉ざされては敵わん。
さっきから恥ずかしいから注視しないようにしているが、一言で言えば綺麗だ。そして…………やはりその………嫌でも注視してしまうところがある。衣服というシールドから更に解き放たれたソレは、正直言って攻撃力高すぎる。
いつだって香里のソレは自己主張が激しいが、まさか布一枚になっただけで…………
「さいってー」
俺の心を読んでか読まずか半目でそんな突っ込みをいれ、小走りで皆の元へと走って行ってしまった。
皆香里に気付いたようで手を振っていた。そのなかで木だらけは口元を辺りを押さえて倒れた。
まぁ、揺れてんだろうなぁ、香里のアレが。
少し悟りを開いた藤谷はそれを追走した。