五話2
一生懸命パラソルとビニールシートを用意した。藤谷と上林、存在木だらけは服を脱いで下に着ていた海水パンツに換装する。
木だらけ、たしかな名前は上林は先程から全く落ち着かない、たまに奇声を発したり、小刻に震えている。
藤谷もあまり人の事は言えない。奇声を発したり、震えたりはしてないが、気にしないようにしてもやっぱり気になる。
最近意識してるせいか、頭にちらつくのは香里の姿、スタイルだけは抜群に郡を抜いてる…………兎も角、兎に角、キョドるぐらいあいつの………水着姿を楽しみにしてる自分がいる。
「お待たせ~」
篠山の無駄に明るい声に反応して男二人、一瞬でそっちに視線を向ける。
………………あれ?
いや、皆の水着はそれぞれ似合ってる。うん、すんごく似合ってる、教育番組のお姉さんも篠山も倉科も似合ってる。
でも、香里は…………
「…………何かしら?」
冷たい、反応が夏の暑さに反して冷たい、視線も突き刺さるように冷たい。
「その、え~と、香里さん? その上から羽織ってるブツはなんでしょうか?」
上林、意味木だらけが藤谷の意思を代弁する。
「…………見て分からない? パーカーよ」
会話はそこでバッサリと切られた。
香里は無言でビニールシートの上に座り、シートの上に置いてあった緑茶(今さっき藤谷が購入)を喉を鳴らして飲みだす。
多分文句は聞きいれてはくれないだろう。
「フジちゃん、みーみん、やっぱり二人きりがよかったみたいよ。だから、あんな事してるんだよ」
篠山がそっと近付いて耳打ちしてくる。
「藤宮君、でもまだ希望は捨てちゃ駄目だよ。あの下にちゃんと水着着てるみたいだから」
逆の耳に倉科が囁きかけてくる。
「あの下のスイカは一見の価値どころか、必見だよ、藤谷君」
舞先輩が後頭部辺りで更に重ねて囁いてくる。
悪魔達の囁きを受け、藤谷は心を悪魔に売ろうか、売るまいか思案する。もう契約書には藤宮藤まで書いてるが。
そこまで言われると見たい、藤宮藤谷だって年頃の男子だ。興味がないわけない、むしろ全然ある。
他の女の子達に魅力がないわけじゃない。この間の一件から香里を意識しすぎて、よくわからない方向に意識が走ってるから気になってしまうんだ。
と、言い訳にも似た答えを出すが、結果として香里美々の水着姿を見て、一緒に海を楽しみたい、ここに行き着く。
さぁ、任務開始だ。