冒頭4
「意味わかんない。何ほぼ初対面の人間にそんなこと言うわけ? 馬鹿にしてんのか?」
「あら、ようやく感情的になったわね。貴方のそんな所も見たかったのよ。でもね、藤宮君、私は本当に貴方の事が好きよ」
意味わかんない。本気で理解不能、まだ逆なら分かる。この進学校で常に成績トップ、この場では本気で認めたくないが、可愛いか綺麗かと言ったら綺麗な美人で通るルックスの香里、それに憧れた俺が告白するならまだしも、何も取り柄なく、勉強も香里に取ってはそこらの石ころと変わらない俺を好き?
悪戯以外に思い当たらない。だが、俺にそんなことしてもメリットがない。金があるわけでもなし、顔が良いわけでもない(こう言うと悪くはないとフォローされる程度)俺を好きになる理由がない。
「まぁ、急で信じらんないでしょうけど本気、今まで貴方に憧れた………と言うのは語弊があるわね。貴方に興味が出て、調べて、見ていく内に側に居て欲しくなった………かな」
楽しそうに、嬉しそうにそんなことを香里は言った。
「俺は君の事知らない、興味ない。だから―」
「だから興味を持ってほしい。持たなければそれまで、それでいい。だから、お友達から始めましょ」
そこで素直に、嫌味なく笑った。その笑った香里を見て、胸が高鳴ってしまったのは腹立たしい事実だ。
「貴方は私の持ってないものを持っている。憧れ、語弊なんてないわね。私は貴方に憧れも抱いている。自分よりも弱いものに対して手を差しのべる優しさ、無気力無関心の癖して、老人や子供が困ってると助けてしまう貴方」
「それは、別に俺も『助けられた側』だから、力を貸したいだけだ。お人好しとよく言われる」
「えぇ、知ってるわ。家族の話くらいはね。でも、そんな所が好きなんだよ」
家族の事、知ってやがるのか。色々思うところはあるが、別段隠してることじゃないし、腹は立たない。
「んで、お人好しを見越して、お友達から?」
「えぇ、最初の告白で成功したらしたでよかったけどね」
「本当に意味わかんねぇ」
「意味はこれから示していくわ。これからよろしくね、藤谷君」
ゆっくり歩いてきて、握手を求めるように手を差し出された。
俺はきっとこの日はどうかしていた。その手を取って小さく握りかえしてしまった。
その時小さくて綺麗な手だな。なんて思う余裕があったのだから。