四話4
その夜、藤宮藤谷は勉学に励み、知識を積み、知力を上げ、夏休みをエンジョイしてバケーションしてプレイしてやる気満々だった。
つまり、机に向かって努力している。
「う~ん、ボクはそろそろ帰るね。あんまり遅くなると流石に怒られるし」
ショートカットの眼鏡の女性は部屋の壁に掛けてある時計を見てそう言った。
やっぱりコンタクトでいるのは外だけであって、基本は眼鏡らしい。眼鏡が似合ってるので何も言うことはないが。
「じゃあ送りますよ」
「だ~め、勉強してなさい。ボクは意外と強いから大丈夫だよ」
舞先生はそう言ってそそくさと部屋から出ていく。
部屋に一人取り残された藤谷は、しばらく時計の秒針の音を聞き、風呂にでも入って少しさっぱりしようと考え付き行動に移す。
「ちょっと風呂に入ってくるから」
一応隣の部屋に声をかけておく。後から誤って入ってこられないための確認である、いなければ先に入ってる可能性も考慮できるし。
「うん、了解」
扉越しに返事が返ってくる。食事が終わってから香里は部屋に引き込もって出てこない。
勉強でもしてるのだろうか、流石に天才少女といえどテスト前は勉強するだろうしな。
階段を降りて、風呂場に行き、洗面台と一緒になってる脱衣場でパパッと服を脱ぎ、洗濯機の中へそれを放り込んで、風呂場に入る。
「うー…………」
香里美々は思案していた。悩んでいた、考えていた、ドキドキしていた。
洗面所の扉の前、ドアノブに手を伸ばしたまま固まっている。
この一枚、さらに一枚向こうに藤谷がいる。いつもの様に冗談混じりで『折角だから背中を流してあげる』なんて言って入って…………入って…………どうすればいいんだろ?
舞にそそのかされてここまで来たが、藤谷とどんな結果に陥りたいんだ?
「藤谷に一杯意識させるんだったら………」
『脱げばいいよ』なんて眼鏡の年上ボーイッシュは言ってたが、いくらなんでもそれは恥ずかしすぎる。
これ以上考えても無駄と判断し、半回転して部屋に戻っていく。
「ラブラブ大作戦……………失敗の予感」
ボソッと呟いて、頭は藤谷の問題集をどんな感じにするか考えていた。