三話2
無言のまま会長の後について、到着したのは学校、しかも生徒会室だった。
四つの業務机設置されており、少し離れて窓際にもう一つ業務机がある。離れてるのは会長ので、後は他の役員のだろう。
「悪いね、茶も出せなくて」
そう言って会長は窓際の机に鞄を置いて、備え付けの椅子に座った。
「適当に座ってよ」
そう言われて美々は四つの机の備え付けの椅子を取って、会長と対面するように椅子を設置し、それに座る。
「何の用事ですか? こんな回りくどい呼び方をして、それ相応の理由はあるんですよね?」
意識してるわけではないが、会長と話そうとするとどうにも攻撃的になってしまう。
お互い様かと思ってたが、向こうは無垢に笑って応対してくる。
「うん、本当に態々ごめんね。でも、改めて聞くよ? 藤谷君の事、本気で好きかい?」
会長は笑って人指し指を立てた。
「はい、もちろんです」
美々はそれに即答する。
会長はその答えを受け取って、少し黙った。
沈黙が流れる。外からは体育祭の準備の為だろう威勢のいい声が響いてくる。
会長は目を瞑って、空を仰ぎ始めた。
「会長? 貴方はどうなんですか?」
返事は返ってこない。少し間があいてから、会長はゆっくり目を開けこっちを見る。
「わかんない」
「えっ?」
美々は会長の言葉を疑った。そして、レンズの向こうの瞳が陰るのを見逃せなかった。
「ねぇ、香里さん、藤谷君と一度だけで良いからデートしてもいいかな?」
「別にそれは私の許可なんかいらないんじゃないですか。大事なのは藤谷の…………」
「うん、わかってる、わかってるよ。でもね、私は藤谷君を誘えるか………わからないんだ」
つまり、美々が協力して藤谷を誘って欲しいんだろう。会長は何かを迷ってるし、ワカラナクなってる。きっと『分からない』『解らない』『判らない』んだ。
だって今『ボク』じゃなくて、『私』だったから。
「誘えますよ。それに藤谷は来てくれます、私達が好きになったのはそんな人でしょう?」
ちょっと穏やかな気持ちだった。会長の考えや迷いが美々には少しワカル気がしたからだ。
「香里さん、ごめんね、私こんがらがっちゃって、意味わかんないよね? でも、少しだけ、少しだけ待って欲しいんだ」
レンズの向こうの瞳は遂に涙を流してしまう。
会長は鏡、立ち位置がちょっと違うだけ、私があいやって泣いていた可能性もあった。少し優位に立ってるからワカルだけ、相手は恋敵と分かっていても無視は出来なかった。