二話7
「デートとまで豪語してたのに、良いのかこんな場所で」
「あら、所帯染みたデートはお嫌い? 最終的には夕飯の材料買って家でご飯、という計画なんだけど」
電車に揺られ、思い出の服を出して、そんな前振りをした結果が駅前の百貨店、しかも生活雑貨、日用品を取り扱っている店だ。
「いや、お前が良いなら良いんだが」
カエルの顔をしたミトンを手にはめてにらめっこしてみる。意味もなくむなしくなった。
次は牛のミトン、どこかで見て、どこかへ消えてしまった芸人の様になった。更にむなしくなった。
「なに遊んでんのよ。貴方の家の食器を新調しようとしてるんだから」
見下す様に香里さんはこちらを見ている。ミトンを返して香里の後に付いて行った。
「食器って、お前の茶碗とかか?」
「うん、いい加減お客様用も味気無いから。後、私が何枚か欲しいの、使いたい大きさの皿なかったりするから」
皿になんて藤宮家はてんで無頓着だったりする。『だったり』なんて使わなくても無頓着だ。職業冒険家なんてアバウトな職業の男が大黒柱の家だ、最悪大きな葉っぱを代用しかねない状況で育ってきた藤谷ももちろんその辺は全く気にしない。流石に葉っぱは使いたくないが。
でも、あれを反面教師にもしてるからそこまで酷い常識は持ち合わせていない……筈である。
人指し指を唇に当てながら香里は皿を物色している。手が空いた藤谷は適当に歩いて、気付けば茶碗のコーナー着いた。食器コーナーにいる時点で大した距離ではないのだが、目に入ってしまった。
半目でボーッと眺めてみる。
「選んでくれるの?」
「ぬわっ!」
後ろから急に声をかけられて、慌てて棚にぶつかりそうになった。もしもを想像したらゾッとして、冷や汗が吹き出る。
「別に茶碗なんてなんでもないいだろ。お客様用だって茶碗は茶碗だし」
「む、選んで、決定」
命令文。そう言われると反抗したくなるのが人間である。ましてや、今日の外出も本意では無いわけだし。
「………女教師……ちな……放課後………授業…」
「よし、君に似合う茶碗を選ぼうじゃないか。うん、この猫がプリントされたのなんでどうかな!? すごくキュートでプリティでバイオレンスじゃないか」
香里美々の言葉のバイオレンスを受けたので、反抗なんて出来ない藤宮藤谷であった。まさか、このネタ事ある事に使われるのだろうか。