二話4
「おはよう藤谷」
カーテンを開かれ、入ってくる燦々とした朝の日光を浴びる。目がまだちゃんと開かないが、きっと目の前にいるだろう香里美々は満面の笑みで見下ろしてるだろう。
「朝御飯出来てるから、後、着替はここに置いておくからね」
藤谷はそこでようやく半身起こす。階段を降りていく音だけが聞こえてくる。頭が少しずつ働き始め、頭を数回掻くころにはしっかり起動する。
「…………もうなんか奥さんと言うよりお母さん…………」
ガタッ!
扉が勢いよく開かれる。そこから髪を一本にまとめて、ポニーテールというやつか、制服姿の香里美々とエンカウントした。
「誰? 誰がいい奥さんだって?」
態とらしく、本当に態とらしくキョロキョロと辺りを見回し、ニコニコと言うかもう既にニヤニヤと笑っている人になっていた。
普通に、自然に笑えば可愛いのだが。
と言うのは調子に乗るので絶対に言わず。
「えぇい、都合のいい部分だけ聞くな。それと……………日曜位ゆっくり寝させてくださいっ!!」
そのままベッドにリターンした。
香里美々の押し掛けが始まってから、それは日曜も続き、毎回毎日何故か制服なのはもう突っ込む気にもなれない。
「朝御飯冷める~、朝からお味噌汁作る献身的な女子高生なんていないよ~、一家に一人どう?」
「可愛く言うな! それとついでに言ってる事が長い!」
突っ込んでしまった以上脳が完璧に覚醒してしまった。これもやつの遊び半分策略半分なんだろうな、ってタチワルイ…………
観念して朝御飯の席についた。あじのひらきに宣言通り味噌汁、具もしっかりしてがる。それと藤谷の好きな甘い卵焼き、ちょっと前にこれが好きだと言ったら毎回出てくるようになった。
しかも藤谷が口に入れる瞬間を観察していて、少しずつ好みにあってきている。むしろ、好みの水準を高くしてくれたぐらい良くできている。まぁ、面と向かっては言わないが。
「休日くらい俺を忘れて遊んでこいよ。誘われるだろ倉科とか篠山とかに」
「ええ、誘われるわね。でも、手のかかる彼氏がと言うと『ああ、なら仕方ない』と返ってくるわ」
「…………もういいよ」
黙って箸を進める事にした。でも本当に、毎朝手の込んだ物を作る。少し位はやっぱり感謝しないとな。
「そう思うなら、お出掛けしましょう」
「もう俺には心の中というのはないんだな」