二話2
「藤宮君、また香里さんのお弁当なの? 関白な旦那さんを持つと大変だね」
そんな不穏な事を仰りやがったのはいつものメンバーの一人、名を倉科遥子と言う。
「みーみんはフジちゃんのそんな所も好きなんだよね?」
意味の分からないあだ名を言いながら溜め息混じりに言ったのは、篠山蓮この娘がつけるニックネームは特異で『聞く分には面白いが、つけられるとちょっと』ってな感じの評価を受けている。
あくまで補足だが、みーみんと言うのは美々からきているらしい。俺は言われるまで何を言ってんのか解らなかった。
「あら、藤谷は家だと優しいわ。料理は一人ではやらせてくれないしね。朝は弱いからお弁当と朝御飯だけは私に頼りっきりだけど」
女子二人が「うわぁ」と漏らしているなか、上林は通称木だらけは頷きながら俺の肩を二度パンパンと叩いた。
「なんだよ? 良いだろ別に友達なんだから」
「藤宮君、いい加減友達じゃ通らないよ。これ以上やったら君は只の悪い人だ」
恐ろしくなるくらい真面目な顔で倉科に注意された。篠山は両手を広げてやれやれと首を振っている。最近は俺の価値観全否定だ。
食後の体育はあまり推奨出来ないと思う。食べた後に運動するのは体にもよくない。だからと言って昼寝の授業を作れなんてどこかの漫画のような事は言わないが。
しかも午後の残り時間は、学年での体育祭予行練習となっていた。今は女子の百メートル走、予行と言ってもこの辺はちゃんと走るらしい。この後には男子の二百メートル走が控えてる位だからな。
不意にバンバンと音が出るくらい肩を叩かれた。
「いた、痛いぞ木だらけ、なんだよ?」
「お、おままま、あれ、あれを見ろ!」
そう言って上林が指差した先は…………
「何って香里が走ってるだけじゃないか………」
なんだってんだよそれが。
「お前の目は節穴きゃー!!」
肩を思いきり掴まれて、裏声を張り上げられてしまった。
「おみゃーにはあの乳が、あの乳が見えないのか!?」
そう言われてからもう一度香里を見てみる。
香里が一歩踏む事に連動する半球体、ジャージを脱いで体操服になっている香里のそれは…………俺は気恥ずかしくなって目を背けた。
「凄いものを持っていると思ってたが、まさかあれほどとは………」
そう言って拳を握り締めている上林、となぜかその他多数、涙まで流してる奴もいる