一話8
やっと放課後。
反省文もちゃんと仕上げ、しっかり上林には謝り、藤谷は解放された。
いつもより帰りが遅くなってしまった。歩くペースを少し上げてスーパーへ向かう。
校門で見知った顔に出会した。寂しそうに背中を校門に預けて下を向いている。
心配もかけたみたいだし、多分俺の事を待ってるんだろうから声をかけてやることにする。
「香里さんや、何方をお待ちですか?」
「貴方よ」
即答ですか。
「なんで怒ってる表情なんだ?」
「どこかの誰かさんが思ったよりもアホで馬鹿で驚いてるのよ」
まぁ多分俺の事を言ってるんだろうが、全然驚いてる顔じゃない。
「私の事なんていいじゃない。昨日今日押し付けられるように友達になった人間なんて、なんで………そんな人間の為に……」
泣いていた。感情がぶつけられる。一直線に香里美々の感情がぶつけられる。
だから、俺はこれを受け止めて答えを返してやらなきゃいけない。
「本当に計ったようにちょうどいい所に来たな木だらけよ」
俺達が居るのは校門、帰りの学生が通るのは必然なわけで、それでも恐ろしいくらいタイミングよく上林達、俺のクラスの面々が歩いてきた。
「フジフジ………」
先頭を歩いていた木だらけはばつが悪そうに視線をそらした。まださっきの一件が尾を引いてるようだ。
「また謝るが、さっきは悪かったよ上林。でもさ、よく知らないで香里の事を悪く言うのはよくない。まぁ、さっきのお詫びも含め俺が奢るから飯でも食っていかないか? もちろん皆で」
上林含め六人くらいならなんとかなるだろう。もちろん金銭面で。
上林以外の周りの人間が少し盛り上がる。上林もそれに対して小さく笑って返した。
「そうだな………俺も悪かったよフジフジ。今日は俺とフジフジが出すから遊んで帰ろう。香里さんも是非に………ってなんで泣いてんの?」
「まさか、藤宮君が泣かしたの!?」
とグループの女子、
「う、ううん、藤宮君じゃなくて私が勝手に……………」
と涙を拭いながら香里、
「フジフジは鈍感だからねぇ。の割に綺麗どころにモテんだよね」
そう上林が言うと皆笑いだした。
今日は手痛い出費だったが、香里の事を考えると安いもんだろう。
ただきっかけが必要だったんだあいつには。