一話7
「俺はどうすれば良かったんでしょうか」
「ん~、誰にも聞いていないようで聞いてほしいって感じの質問だね。とりあえず、椅子に座ろうか、ボクも座りたいし」
生徒指導室の中には長い大きな机一つと椅子が、生徒用と教師用の二つ、後は黒板があるだけの小さな部屋。
「いいんですか? 正座してなくて?」
「ん? うん、いくらなんでも正座なんて古いよ。それにそれをやらせ過ぎても学校側には問題になっちゃうしね」
優しく微笑んだ会長は人指し指を立てた。
「はい、じゃあ」
二人で机を挟んで対面するように座った。外からは体育の声だろうか、掛け声が聞こえてくる。周りの教室からも教師の声しか聞こえてこない。そんな中会長はゆっくりと口を開いた。
「藤宮、君はどうしたい? その女の子にどうなってほしい?」
一つだって年上は年上か、諭すように、なだめるように、笑顔で相談に乗ってくれる。思わず寄りかかってしまいたくなるが、それでは俺の力で香里の事を解決出来ない気がする。
「俺は、子供っぽいかもしれませんが、皆が楽しくワイワイ笑って暮らしてほしいんです。それが何より幸せだって、俺はそれを家族から学んだから」
「君が言うと説得力あるね。うん、ボクもね、君のその持論を参考に生徒会長なんて大層な事をやらせてもらってる。君を尊敬してるんだよ」
反論しようとしたが、会長は真剣な目で人指し指を立てていた。本心から言ってくれているらしい。頭の中がグチャグチャだった、何も上手いことが考え付かない。
友達に何もしてやれない。やっぱり、俺を救ってくれた父親のようなヒーローには俺はなれないのだろうか。
「君は難しく考えすぎだよ。君とその女の子は友達になったんだろう? なら、君が知っているその子の良いところを周りに教えてやればいい。後は簡単さ」
会長の笑顔を見てると本当にそうなんじゃないかと思えてくるから不思議だ。包容力、会長の包容力に甘えきってしまいそうになっている俺をなんとか振り切り、思考を張り巡らせる。
まだ付き合いが浅くて香里の事はよく分からないけど、何かきっかけがあれば、きっと皆と仲良くやれるはずだ。確証はないが、自信はある。
「何か浮かんだかな? ボクも君には笑っていてほしいからね。応援するよ」
「会長ありがとうございます! 上手くいったらお礼しますから」
会長の手を取り、優しく握った。やっぱり女性だ、とても華奢だった。